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『緊急事態宣言が「緊急事態」を示さなくなった』その理由・・・!

政府は今日(5/14)、北海道・岡山県・広島県に対し5/16~5/31までの期間において「緊急事態宣言」が発出された!同時に群馬県・石川県・熊本県に5/16~6/13までの期間「まん延防止等重点措置」を適用することを決めた。

対象地域はいずれも感染が急拡大しており、都市部と比較し医療提供体制の資源が少ない地域でもあることから、感染を早く収束させることが必要である。

それにしても、先週に続いて、「2週連続の緊急事態宣言の発出」という事態。すでに政府分科会の「コロナステージ指標」ではステージ3or4に該当している都道府県も多いのに、ここでの発出となると、もはや『「緊急事態宣言」とは何ぞや?』『緊急事態宣言の体をなしていない』という、半ば呆れ気味の声があがってくるだろう(既にあがっているかもしれない)

今回は、読者のみなさまも思っているかもしれない上記の声に対して、「なぜ私たちがそう思うのか」その理由を探ってみたい!

※理由を述べる前に、筆者の意見として「緊急事態宣言」や「まん延~」そのものを否定してはいないということだけ先に表明しておく。感染拡大防止・収束のための対策としては必要であると考えているためというのが理由である。


【理由①】制度の使い方が間違っているため、行政と国民の間に認識のずれが生じている

そもそも「緊急事態宣言」「まん延防止等重点措置」を発出するタイミングについて、政府は今年の法改正にあたり、以下のとおり定めている。

(内閣官房特設サイトより引用)

まとめると、コロナステージ指標において、ステージ3になれば『まん延防止等重点措置』、ステージ4になれば『緊急事態宣言』を発出すると決めているのだ。

しかし、今回発出を決めた地域のステージ指標は、先週時点でいくつかにおいてすでにステージ3・4の数値に達していた。(下のPDF参照、厚生労働省より)

本来であれば、その時点もしくはその前の段階でいずれかの措置を講じなければならないはずなのに、何らかの「ファクターX(後述)」が働いて、発出が遅れてしまう状態となっている。

これでは、ステージ指標の基準を定めた意味がなくなり、措置の効果が最大限発揮できない可能性もある。コロナの現状を一番知っているのは私たちである!その声を聴かない&現状との感覚がずれているから、政策を講じるたびに批判が起きるのだ。


【理由②】基準の「曖昧さ」と国の「受身姿勢」による発出の遅れが制度の体を失ってしまう

上記の画像資料の中に、”まん延~”について『ステージⅢ相当であ
る他、感染拡大の状況を勘案して適用』
、緊急事態宣言について『指標を総合的に評価し、ステージⅣ相当で宣言』と記載されてある。

ここから読み取れるのは「勘案」や「総合的に」といったハッキリとした基準がない「あいまいな評価体制」が、措置を講じるタイミングが遅くなる原因の1つになっているということである。

これは、今の政治だけでなく企業の人事評価などでも言えることだが、はじめに具体的かつ明確な基準設定をせず、評価者の基準に委ねるような評価体制にしてしまうと、公平性に欠く評価になってしまい、組織全体としてのコンセンサスを取るまでに時間がかかってしまう。
幸いにも、今回の分科会では専門家の方々は『より強い「緊急事態宣言」を発出すべきだ』という意見で統一されていたが、それまでの政府および地方自治体は、異なる基準で発出を決めていたため、最終的な全体決定が遅れてしまった。

また、発出までの流れとして、「地方自治体⇒国へ発出の要請を行い、国⇒地方自治体へ発出を行う」という国の「受身姿勢」も問題なのではないかと考える。国家の方向性を決める国が、地方自治体からの要請を受けてから動き出すというのは、いくら現場(地方自治体)の方が実情に詳しいとはいえ、動きが遅すぎる。国家におけるトップの組織である政府が、先を読んでデータを分析し、それに合った方針を地方自治体に示していくという「能動的行動」を行えば、適切なタイミングでの政策決定に繋がると思われる。


【理由③】行政の見ている方向が「国民」ではなく「自身or利害関係者」にある

先ほど述べた「ファクターX」についてである。

「緊急事態宣言の期限を5/11までにしたのはIOC会長が17日に来日するから」
「北海道が札幌市への”まん延~”の要請を行ったのは、札幌市でのオリンピックテスト大会を終えた後」

いずれも政府や北海道は否定しているが、国民からすれば、行政においての都合に合わせているようにしか思えない。仮に本当に都合に合わせていないのだとすれば、

「緊急事態宣言の期限を5/11までにしたのは、IOC会長が17日に来日するから」
⇒「5/11までに解除できるだけの対策・シミュレーションが完璧である」

「北海道が札幌市への”まん延~”の要請を行ったのは、札幌市でのオリンピックテスト大会を終えた後」
⇒「現時点で”まん延~”レベルで抑えられるだけの感染状況であり、オリンピックとは関係ない」

という必要十分条件が成立するはずだ。しかし実際のところ、宣言は5/31まで延長され、北海道の感染状況は悪化の一途をたどる結果となり、これらの命題は証明されなかった。結局この「ファクターX」によって適切なタイミングでの発出&解除が行われないことになり、ダメージだけが残ってしまったのだ。

また各地方自治体が”まん延~”を国に要請するタイミングに注目すると、同日に複数の自治体から要請が行われ、まるで「近隣が要請しているからうちも要請するか」と言わんばかりの様相をも筆者には感じる。

<「まん延防止等重点措置」要請日一覧(一部抜粋)>
4/28:三重県・岐阜県(愛知県の隣県)
5/10:熊本県・長崎県(隣県)
5/12:岡山県・香川県(隣県)・群馬県

もちろん100%そうだと疑うつもりはないが、各自治体の感染状況&医療提供体制の状況は異なるのだから、わざわざ合わせる必要はないと思う。緊急事態宣言発出の手前で抑えるのが”まん延~”の目的なのだから、状況が深刻になりそうであれば、他人の空気を読まずして要請しても構わないと思う(むしろそうすべき)

本来国民の命を守るための対策として「緊急事態宣言」「まん延~」があるはずなのに、いつしかそれが自分もしくは利害関係者に対する「道具」として使われるようになったと筆者は感じる。

これでは本来発揮するはずの措置の効果が薄れ、いつまで経っても感染の収束には至らないだろう。


総論

以上の理由を踏まえ、総論を述べると、

先の見通せない世の中において、「先を見ない」姿勢で、「誤った方向」を向きながら、決定までに「時間のかかる」感染症対策を行っていることから、いつしか国民の間に『今の状況が「緊急事態」ではない』という「モラルハザード」が起きてしまっている。
これでは、今後「緊急事態宣言」「まん延~」の措置を講じたところで、想定しているほどの対策の効果は得られず、その間に国力がじり貧に向かっていく可能性が高い。

と結論付けさせていただく。

もちろん私たち国民側にも、感染終息に向かうための方法はたくさんある。しかし、国民全体をまとめる行政の方針が迷走すると、国そのものが迷走してしまうので、「最終的な責任は行政が取る」という、列記とした姿勢とリーダーシップが求められる!


今回筆者史上、最長の記事となったが、最後までご覧いただきありがとうございます!

1日も早くコロナが収束できるよう、私たちができる範囲のところは徹底的に行っていきましょう!

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