- 運営しているクリエイター
#メール
「あかりの燈るハロー」第一話
プロローグ ゴウン…ガロン…ギ…ギギ…ギ。
ゴウン…ガロン…ギ…ギギ…ギィィ……。
やがて、観覧車は完全にその動きをとめ、遊園地にともされたはなやかな電飾も消えると、あたりを静けさが包みこんでいく。
耳をすませば、かすかに聞こえる波の音だけ。
あたしは歌う。
♪ ハウマッチウッド・ウッドアチャック・イファウッドチャック・クッドチャックウッド
♪ ハウマッチウッド・ウッドアチャック
「あかりの燈るハロー」第二話
第一章バイバイ、お母さん。ハロー、ハンデ。
(1)
あたしには最近好きなものができた。
それはメール。といってもケータイのじゃなくてパソコンのメール。あたしが使っているパソコンはとても型式の古いノートパソコンで、起動するのにびっくりするくらい時間がかかる。それによく途中で突然動かなくなってしまうし、書いていたメールが全部なくなってしまうことだってある。
電気屋さんに並んでいる、薄くて格好
「あかりの燈るハロー」第四話
バイバイ、お母さん。ハロー、ハンデ。
(3)
始業チャイムと同時に、担任の安西先生が教室に入ってくる。
「おーい、みんな、席に着けー」
太く男らしい声の印象のまんま、安西先生は男くさい。しわくちゃのワイシャツに緩んだネクタイ、その上にえんじ色の上下ジャージという無骨な格好でまったく女子受けしない。でも男子にはすごく好かれていて、休み時間のたびに先生をサッカーやドッジボールに誘う生徒でクラスは
「あかりの燈るハロー」第六話
ハローワールドの住人
(2)
その夜、お父さんが夕食時にこんなことをいい出した。
「茜、最近学校はどう? 吉田くんとは仲良くしてる?」
「……」
普段は、あまり学校のことをきいてはこない。今日に限って、どうして大和のことを出してくるんだろう。相談課でなにかあったのかな、いや大和がおばさんになにか告げ口したのかも……。
――いろんな考えが頭を過ぎった。
「どうした? 茜、お腹、空いてないの
「あかりの燈るハロー」第七話
ハローワールドの住人
(3)
パソコンとふたりきりで頭を悩ませる。いろいろ気になることが多すぎる。
『はじめまして、あたしの名前は朱里です。
あなたとお友だちになりたくて、思い切ってメールを出しました。
もしよければ、あたしのお友だちになってください』
何度見ても、メールにはそれしか書いてない。
――お友だち……。
パソコンに突然入り込んできたこの「朱里」っていう人物がいっ
「あかりの燈るハロー」第十話
第四章最高の友だち
[夏休みまで一週間――]
あたしと朱里はすぐに仲良くなれた。
これはひとえに朱里のおかげ。とにかく朱里はなにかを聞き出すことがうまい。そしてどんどん話をさせる。聞き上手というのはこういうことをいうんだろうな。
たとえば好きな食べ物。朱里があたしに好きな食べ物はなに? と質問してくる。『オムレツ』と答えると次には、どんな固さのオムレツが好き? どこで食べたオムレツが一番
「あかりの燈るハロー」第十五話
第七章はーい! せんせー。
(1)
夏休みがすぐそこまで迫ってきてるって、セミの鳴き声が教えてくれそうな暑い日の朝、始業チャイムとともに教室に入ってきた安西先生の後ろに、男の子が立っていた。
「おーい、おまえたち座れー。まったく蝉にも負けないくらいうちのクラスは元気だな」
先生はあたしたちを鎮めると、黒板に大きな字で、「古賀篤仁」と書いた。
教室がざわつく。
「静かに! もうすぐ夏休みだけ
「あかりの燈るハロー」第二十四話
第十二章お父さんの恋人
(1)
がらんとする家の中に入る。お母さんの笑顔にただいまのキスをし、自分の部屋にあがる。今日はいろんなことが起こりすぎて、とても半日とは思えないほどみんなであれこれやっていた気分だ。
実際に先生にお説教を受けてたから半日じゃないけど……。小学校生活の中で、たった半日で二回も職員室に呼び出されたのも初だ。
お父さんが聞いたらなんていうかな?
部屋に入ってパソコン