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長編ミステリーホラー 混沌の化神

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現実は小説より奇なり。 世の中というのは常に理不尽なことや想定外の連続の中にある。 綺麗な物がふと、何かのきっかけで相反する汚泥にまみれてしまうこともある。 主人公の亜矢子…
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(ミステリーホラー)混沌の化神 -15

(ミステリーホラー)混沌の化神 -15

「はい…」
今ではあまりみかけない、いかにも平屋といった具合の引き戸の少し奥のほうから声がした。
がららっ…と引き戸が開くと、齢70歳あたりだろうか、女性が少しにこやかな様子で出迎えてくれた。

「聞いてますよ。よかったね、須藤さんの娘さん。」
年齢相応ながらの柔らかい声色に二人は顔を見合わせ、すぐに亜矢子が続く。
「一昨日は危ないところを助けて頂き、本当にありがとうございます。これつまらないもの

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(ミステリーホラー)混沌の化神 -14

(ミステリーホラー)混沌の化神 -14

今朝車で通った道を今度は青山家へ向かって歩く二人。
「あのさ、一昨日の例の須藤さんが倒れたっていう場所ってさ、たしかこれから向かう家の右にある森の道の途中だったよね?」
「うん、そうだよ。どうしたの?」
「それで、それってそのすぐ先に獣道があったりする?」
「そうそう!獣道ね、たしかに。昔よく森で遊ぶときに通った、あれはほぼ獣道だね。あーひょっとして今まで探索してたの??」
「うん…」
歩みを進め

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(ミステリーホラー)混沌の化神 -13

(ミステリーホラー)混沌の化神 -13

13:20
「そろそろ、いい頃合いか…。」
亜矢子の家から100m程先の曲がり角で座り込んでいた馬場は、整理のつかない頭のまま立ち上がると、彼女の家へ向かって歩き始めた。

ランチの後、亜矢子と別れてから今の時間まで特にすることもなく、馬場は集落の周辺をひたすら散歩していた。
時間があったためどうせなら隅から隅まで周れたらと思い歩き始めたのだが、みたところ方角まではわからないものの、亜矢子の家の裏

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(ミステリーホラー)混沌の化神 -12

(ミステリーホラー)混沌の化神 -12

定食屋を後にした二人は、亜矢子の車で5分もかからず彼女の家に着いた。
いつもの定位置に車を停めようとバックしていると、家の裏手から表に向かってくる父親の姿が。

馬場は助手席の窓をくるくると開けると、こちらを見ながら近づいて来る推定、亜矢子の父親であろう人物に向かって会釈をする。
「こんにちは。」
「おお、こんにちは。」
今朝の話からおおよそ相手を察した父親は、若干の不機嫌さを隠せずにそっけなく挨

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(ミステリーホラー)混沌の化神 -11

(ミステリーホラー)混沌の化神 -11

10:30

じゃらじゃらと音を鳴らしながら近づいてくる、見慣れた赤の乗用車。
定食屋の砂利でできた駐車場に、馬場が亜矢子の車を駐車する。

「遅いんだけど。」
「待った?」
ミラーを開けながら馬場が悪気もなさそうに答える。
「30分。まずはお昼おごりと言いたいところだけど、わざわざ車運んでくれた恩があるから差し引きチャラね。」
「あはは、それでお願い。」
そう言いながら馬場が車から降りると、2人

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(ミステリーホラー)混沌の化神 -10

(ミステリーホラー)混沌の化神 -10

2000年12月30日 9:25

キッチンのテーブルで、何年ぶりかに両親と少し遅めの朝食を摂っている。

基本的には和食中心だった実家の朝食も、自分が帰らない間にすっかりと様変わりしたようだ。
トーストにコーヒー、簡単なサラダと目玉焼き、いちごのジャムとピーナッツバターもある。
母親とは、年末に帰郷して依頼一緒に食事を摂ることがあったが、両親揃ってとなると、それこそ在学中以来である。

「今日は

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(ミステリーホラー)混沌の化神 -9

(ミステリーホラー)混沌の化神 -9

「実はね…」
適度にビールをあおり酔い始めた亜矢子は、理性が効いている内にたわいもない仕事の話から、昨日の出来事に話を切り替え馬場に説明した。

「なるほど…そんな事が。何か持病があるわけでもなく、だと少し心配だね。何かその場所にトラウマでもあったとかは?」
「ううん、特にそんな覚えがなくてね。確かに昔、その道もその山の中もよく遊びに行ってたんだけど。悪い思い出なんか特になかったはずなんだよ。」

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(ミステリーホラー)混沌の化神 -8

(ミステリーホラー)混沌の化神 -8

既に日が落ちかけた街、この周辺一帯のエリアの中ではそれなりの大きさであり、主要な交通機関も充実している〜市。
まだ聖夜の飾り付けはそのままに、色鮮やかなライト達が暗くなりかけた街を照らし始めている。

思えば今年のクリスマスも、灯りを目端に捉えながら独り住まいの住居に帰るだけであった。
例のように、世の女性達は独り過ごすクリスマスが嫌なようで、女子会なりの予定を作りあたかも暇ではないふりをして、そ

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(ミステリーホラー)混沌の化神 -7

(ミステリーホラー)混沌の化神 -7

少し遅めの昼食をとった。
身体を慮った母親が作ってくれたおかゆを食べ終え適度に満たされた気分ではあったものの、それでもまだ少し、夢の内容に引きずられていた。
母親からは"青山のおじいさん"、なる倒れた自分を運んでくれた人物にお礼をしてきなさい、とのお達しがあった。

携帯を見ると時刻は16時20分、身体としてはもう何の問題もない気がする。
確かにお礼に伺わなければという気持ちではあったものの、なん

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(ミステリーホラー)混沌の化神 -6

(ミステリーホラー)混沌の化神 -6

2000年12月29日 13:20

見慣れた木目のある天井。

目を覚ました亜矢子は自分の部屋で眠っていたことに気付いた。
頭上を探っても携帯がないところをみると、自分でベッドまでたどり着いたわけではないようだ。

身体中にじっとりと汗をかいている。

意識があった時の最後の記憶では、誰かの声が聞こえていた気がする。
声の主に助けられたのだろうか。

部屋中心のテーブルに目をやる。携帯があること

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(ミステリーホラー)混沌の化神 -5

(ミステリーホラー)混沌の化神 -5

2000年12月28日 16:20

お昼すぎに小雨が降ったことで少し冷え込みが増したような気がする。
まだ水滴をぱたぱた落とす木立の側の、かろうじて人がつけた轍を歩きながら、子供の頃の記憶を反芻していた。
少し濡れた土や、木々の匂いもそれを促す材料となっているのだろうか。

思えば、ここを歩いたのはずいぶんと小さい頃だけだったような気がする。
この道の先は、道としてはやがて完全な獣道に行き当たる

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(ミステリーホラー)混沌の化神 -4

(ミステリーホラー)混沌の化神 -4

2000年12月28日
なつかしい自分の部屋の匂いの中で目を覚ます。

久しぶりに見上げているはずの天井も、数秒目を当てると、自分の脳裏に焼き付いた特有の形の木目に自分の子供の時の感覚が呼び覚まされる。
頭の上を探ると、携帯の画面には11:03の表示。
少々寝すぎたことを理解すると、亜矢子はのそのそとベッドから滑り落ちるように這い出た。

半覚醒の頭で自分の部屋を出ると、そのままかすかに両親の活動

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(ミステリーホラー)混沌の化神 -3

(ミステリーホラー)混沌の化神 -3

2000年の年末、最後の出勤日を終えた亜矢子は愛知県から実家のある地元群馬までの道程。
季節柄辺りはすでに日は落ちかけ、薄暗くなりかけの空の下、高速道路を走っていた。

独りで行動することの多かった亜矢子は、幼少期から、周りの風景や雰囲気等と自分の気持ちやこれから起こること、今置かれている状況等を、何となく暗示のように感じながら重ねて思いにふけることがよくあった。
こういった心情の、ある種センチメ

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(ミステリーホラー)混沌の化神 -2

(ミステリーホラー)混沌の化神 -2

馬場は亜矢子との会話の後、会社近くの喫茶店に向かっていた。
普段よりも空や日差しが、こころなしか身体に優しい気がする。車通りの多い地方であって、空気さえも何故か美味しく感じる。
こういった時、人間の感覚というのは本当に精神に依存している部分が多いのだな、とは馬場は感じていた。
喫茶店に着くと、店員さんの聞き慣れた出迎えのセリフを横目に聞き流しながら、お決まりの奥まったテーブル席に着席すると、即座に

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