又来誠也

初めて物書きに挑戦してみました。 お目汚しでしたらすみません。 そうでないようでしたら…

又来誠也

初めて物書きに挑戦してみました。 お目汚しでしたらすみません。 そうでないようでしたら、フォローして頂けますと泣いて喜びます。

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  • 長編ミステリーホラー 混沌の化神

    現実は小説より奇なり。 世の中というのは常に理不尽なことや想定外の連続の中にある。 綺麗な物がふと、何かのきっかけで相反する汚泥にまみれてしまうこともある。 主人公の亜矢子もそんな物語の渦中に巻き込まれることになった。 亜矢子の対する何かは、一体何者なのか。 "生きている人間の方が恐ろしい"、とはよく言ったものである。 果たしてそれは、本当にただただ純粋な悪なのだろうか。 ※ 長い物語になります。 基本的には毎日少しずつ更新致しますので、ぜひマガジンを登録して頂くなりフォローして頂くなり、毎日少しずつ読み進めて頂けたら幸いです。

最近の記事

(ミステリーホラー)混沌の化神 -15

「はい…」 今ではあまりみかけない、いかにも平屋といった具合の引き戸の少し奥のほうから声がした。 がららっ…と引き戸が開くと、齢70歳あたりだろうか、女性が少しにこやかな様子で出迎えてくれた。 「聞いてますよ。よかったね、須藤さんの娘さん。」 年齢相応ながらの柔らかい声色に二人は顔を見合わせ、すぐに亜矢子が続く。 「一昨日は危ないところを助けて頂き、本当にありがとうございます。これつまらないものですが…」 そういって亜矢子が母から託された手土産を差し出すと、女性は申し訳なさ

    • (ミステリーホラー)混沌の化神 -14

      今朝車で通った道を今度は青山家へ向かって歩く二人。 「あのさ、一昨日の例の須藤さんが倒れたっていう場所ってさ、たしかこれから向かう家の右にある森の道の途中だったよね?」 「うん、そうだよ。どうしたの?」 「それで、それってそのすぐ先に獣道があったりする?」 「そうそう!獣道ね、たしかに。昔よく森で遊ぶときに通った、あれはほぼ獣道だね。あーひょっとして今まで探索してたの??」 「うん…」 歩みを進めながらも、馬場はしばし考え込んだ。 やはり先ほど自分が見た現象が、一昨日の亜矢

      • (ミステリーホラー)混沌の化神 -13

        13:20 「そろそろ、いい頃合いか…。」 亜矢子の家から100m程先の曲がり角で座り込んでいた馬場は、整理のつかない頭のまま立ち上がると、彼女の家へ向かって歩き始めた。 ランチの後、亜矢子と別れてから今の時間まで特にすることもなく、馬場は集落の周辺をひたすら散歩していた。 時間があったためどうせなら隅から隅まで周れたらと思い歩き始めたのだが、みたところ方角まではわからないものの、亜矢子の家の裏手が森でありそこが集落の端と言えそうだった。 また、亜矢子の家の前で道は途切れて

        • (ミステリーホラー)混沌の化神 -12

          定食屋を後にした二人は、亜矢子の車で5分もかからず彼女の家に着いた。 いつもの定位置に車を停めようとバックしていると、家の裏手から表に向かってくる父親の姿が。 馬場は助手席の窓をくるくると開けると、こちらを見ながら近づいて来る推定、亜矢子の父親であろう人物に向かって会釈をする。 「こんにちは。」 「おお、こんにちは。」 今朝の話からおおよそ相手を察した父親は、若干の不機嫌さを隠せずにそっけなく挨拶を返すと、玄関から家の中へと入っていく。 おそらく件の男だろう。自分もそれなり

        (ミステリーホラー)混沌の化神 -15

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        • 長編ミステリーホラー 混沌の化神
          16本

        記事

          エアコン いらない機能について

          副業でエアコンクリーニングをしております。 最近は"自動お掃除機能付き"のエアコンをご使用のご家庭が多いですが、私個人としては全然必要ない、高いだけのエアコンに思えます。 自動お掃除機能とは、昔は手でさっと外して洗っていたフィルターを、エアコンを動かしていない時等にモップのようなものがフィルターをなぞることにより、フィルターのお掃除しなくてもいいですよ、という機能です。 クリーニングをしている身としてはっきり言えることは、そんな機能いりません、ということです。 1ヶ月や

          エアコン いらない機能について

          (ミステリーホラー)混沌の化神 -11

          10:30 じゃらじゃらと音を鳴らしながら近づいてくる、見慣れた赤の乗用車。 定食屋の砂利でできた駐車場に、馬場が亜矢子の車を駐車する。 「遅いんだけど。」 「待った?」 ミラーを開けながら馬場が悪気もなさそうに答える。 「30分。まずはお昼おごりと言いたいところだけど、わざわざ車運んでくれた恩があるから差し引きチャラね。」 「あはは、それでお願い。」 そう言いながら馬場が車から降りると、2人は定食屋に入った。 ここは、亜矢子が幼少期より時には家族と、時には友人と通った

          (ミステリーホラー)混沌の化神 -11

          高すぎるハイブランドと安すぎる名も無き物達

          何の変哲もない、余った安い生地で作った自分用のトートバッグである。 接着芯には、業務用の固くて厚めの物を使用している為、割としっかりとした作りとなっている。 しかしこのバッグを売りに出したとしても、激安バッグとしか扱われないだろう。 では、これを合皮で作成したらどうなるか。 これもまた、お安いバッグの仲間入りだろう。 ではこれをルイ・ヴィトンのナイロン生地で作成したらどうなるだろうか。 うん十万の売値となるだろう。 何故ハイブランドはそんなに高値で販売することができて

          高すぎるハイブランドと安すぎる名も無き物達

          (ミステリーホラー)混沌の化神 -10

          2000年12月30日 9:25 キッチンのテーブルで、何年ぶりかに両親と少し遅めの朝食を摂っている。 基本的には和食中心だった実家の朝食も、自分が帰らない間にすっかりと様変わりしたようだ。 トーストにコーヒー、簡単なサラダと目玉焼き、いちごのジャムとピーナッツバターもある。 母親とは、年末に帰郷して依頼一緒に食事を摂ることがあったが、両親揃ってとなると、それこそ在学中以来である。 「今日は、青山のじいさんにお礼に行くのか?」 トーストを齧りながら、切り出したのは父親だ

          (ミステリーホラー)混沌の化神 -10

          (ミステリーホラー)混沌の化神 -9

          「実はね…」 適度にビールをあおり酔い始めた亜矢子は、理性が効いている内にたわいもない仕事の話から、昨日の出来事に話を切り替え馬場に説明した。 「なるほど…そんな事が。何か持病があるわけでもなく、だと少し心配だね。何かその場所にトラウマでもあったとかは?」 「ううん、特にそんな覚えがなくてね。確かに昔、その道もその山の中もよく遊びに行ってたんだけど。悪い思い出なんか特になかったはずなんだよ。」 ビールから冷酒へと切り替えた馬場は、時折ちびちびとグラスを傾けながらも、真剣な表

          (ミステリーホラー)混沌の化神 -9

          (ミステリーホラー)混沌の化神 -8

          既に日が落ちかけた街、この周辺一帯のエリアの中ではそれなりの大きさであり、主要な交通機関も充実している〜市。 まだ聖夜の飾り付けはそのままに、色鮮やかなライト達が暗くなりかけた街を照らし始めている。 思えば今年のクリスマスも、灯りを目端に捉えながら独り住まいの住居に帰るだけであった。 例のように、世の女性達は独り過ごすクリスマスが嫌なようで、女子会なりの予定を作りあたかも暇ではないふりをして、そそくさと出かけていくのが通常なのかもしれない。 亜矢子にとっては人にどう思われ

          (ミステリーホラー)混沌の化神 -8

          (ミステリーホラー)混沌の化神 -7

          少し遅めの昼食をとった。 身体を慮った母親が作ってくれたおかゆを食べ終え適度に満たされた気分ではあったものの、それでもまだ少し、夢の内容に引きずられていた。 母親からは"青山のおじいさん"、なる倒れた自分を運んでくれた人物にお礼をしてきなさい、とのお達しがあった。 携帯を見ると時刻は16時20分、身体としてはもう何の問題もない気がする。 確かにお礼に伺わなければという気持ちではあったものの、なんとなく今日ではない、そんな気がした。 今日はもう、家から出るのはやめて明日にで

          (ミステリーホラー)混沌の化神 -7

          (ミステリーホラー)混沌の化神 -6

          2000年12月29日 13:20 見慣れた木目のある天井。 目を覚ました亜矢子は自分の部屋で眠っていたことに気付いた。 頭上を探っても携帯がないところをみると、自分でベッドまでたどり着いたわけではないようだ。 身体中にじっとりと汗をかいている。 意識があった時の最後の記憶では、誰かの声が聞こえていた気がする。 声の主に助けられたのだろうか。 部屋中心のテーブルに目をやる。携帯があることを確認し手を伸ばすと、時間表示は既に翌日のお昼になっていた。 今亜矢子が気にな

          (ミステリーホラー)混沌の化神 -6

          (ミステリーホラー)混沌の化神 -5

          2000年12月28日 16:20 お昼すぎに小雨が降ったことで少し冷え込みが増したような気がする。 まだ水滴をぱたぱた落とす木立の側の、かろうじて人がつけた轍を歩きながら、子供の頃の記憶を反芻していた。 少し濡れた土や、木々の匂いもそれを促す材料となっているのだろうか。 思えば、ここを歩いたのはずいぶんと小さい頃だけだったような気がする。 この道の先は、道としてはやがて完全な獣道に行き当たるのだが、それは子供の好奇心や冒険心がなければそうそう赴こうとは思わない、本当に森

          (ミステリーホラー)混沌の化神 -5

          (ミステリーホラー)混沌の化神 -4

          2000年12月28日 なつかしい自分の部屋の匂いの中で目を覚ます。 久しぶりに見上げているはずの天井も、数秒目を当てると、自分の脳裏に焼き付いた特有の形の木目に自分の子供の時の感覚が呼び覚まされる。 頭の上を探ると、携帯の画面には11:03の表示。 少々寝すぎたことを理解すると、亜矢子はのそのそとベッドから滑り落ちるように這い出た。 半覚醒の頭で自分の部屋を出ると、そのままかすかに両親の活動音が聞こえる階下へと向かった。 「おはよ。コーヒー入れていい?」 問いかけたの

          (ミステリーホラー)混沌の化神 -4

          (ミステリーホラー)混沌の化神 -3

          2000年の年末、最後の出勤日を終えた亜矢子は愛知県から実家のある地元群馬までの道程。 季節柄辺りはすでに日は落ちかけ、薄暗くなりかけの空の下、高速道路を走っていた。 独りで行動することの多かった亜矢子は、幼少期から、周りの風景や雰囲気等と自分の気持ちやこれから起こること、今置かれている状況等を、何となく暗示のように感じながら重ねて思いにふけることがよくあった。 こういった心情の、ある種センチメンタルな気分に酔いしれることは、誰にも少なからずあることなのかもしれない。 大

          (ミステリーホラー)混沌の化神 -3

          (ミステリーホラー)混沌の化神 -2

          馬場は亜矢子との会話の後、会社近くの喫茶店に向かっていた。 普段よりも空や日差しが、こころなしか身体に優しい気がする。車通りの多い地方であって、空気さえも何故か美味しく感じる。 こういった時、人間の感覚というのは本当に精神に依存している部分が多いのだな、とは馬場は感じていた。 喫茶店に着くと、店員さんの聞き慣れた出迎えのセリフを横目に聞き流しながら、お決まりの奥まったテーブル席に着席すると、即座にラップトップを開いた。 「群馬、スペース、ホテル……待てよ、群馬の何処だよ…。」

          (ミステリーホラー)混沌の化神 -2