(ミステリーホラー)混沌の化神 -3
2000年の年末、最後の出勤日を終えた亜矢子は愛知県から実家のある地元群馬までの道程。
季節柄辺りはすでに日は落ちかけ、薄暗くなりかけの空の下、高速道路を走っていた。
独りで行動することの多かった亜矢子は、幼少期から、周りの風景や雰囲気等と自分の気持ちやこれから起こること、今置かれている状況等を、何となく暗示のように感じながら重ねて思いにふけることがよくあった。
こういった心情の、ある種センチメンタルな気分に酔いしれることは、誰にも少なからずあることなのかもしれない。
大抵は気のせいであることが多いだろう。
実際にそこから自身の気分が変わり、それが目の前の出来事に影響して結果にでる、というようなある種のプラセボ効果はあるのかもしれない。
この時も亜矢子は、独りでなんとなく暗がりに向かっているような状況を自分の運命と重ね、なんとなく嫌なものが身体の中を走るのを感じていた。
今回ばかりはそれが現実となってしまうということを彼女はまだ知らない。
永く続く暗闇の先に光はあるのだろか。
ひょっとすると、あるのは精々視界の端々によぎる街頭の明かり程度の明かりなのかもしれない。
彼女は、無事23時前に実家に到着し、懐かしくも新しいシーツの匂いの中、その日はそのまま眠りについた。
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