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(ミステリーホラー)混沌の化神 -4

2000年12月28日
なつかしい自分の部屋の匂いの中で目を覚ます。

久しぶりに見上げているはずの天井も、数秒目を当てると、自分の脳裏に焼き付いた特有の形の木目に自分の子供の時の感覚が呼び覚まされる。
頭の上を探ると、携帯の画面には11:03の表示。
少々寝すぎたことを理解すると、亜矢子はのそのそとベッドから滑り落ちるように這い出た。

半覚醒の頭で自分の部屋を出ると、そのままかすかに両親の活動音が聞こえる階下へと向かった。

「おはよ。コーヒー入れていい?」
問いかけたのはリビングのテレビの前のちゃぶ台に肘をかけている母親だ。
「おはよう、コーヒーメーカー台所にあるからそれ使って。お腹はいいの?なにか作る?」

「いいや。定食屋さんまだある?ほらあの、昔よく行ってた角にある。」
言いながら冷蔵庫の横のコーヒーメーカーに目をやると、さっそく水を注ぐ。

「ああ、あるある、あるよ。」
「お昼そこで食べたいから、久しぶりに。」
豆まで入れ終わるとスイッチを入れながら、あることに気付く。
「そういえば、昨日からお父さん見てないけど何してるの?」
「家の裏で金魚見てる、らんちゅう?って言うの?なんか最近好きみたいよ。」
「へー、意外。大人しくなったもんだね。飲んだくれのやんちゃだったのに。」

実は亜矢子は、昔は荒くれた父があまり好きではなかったのだが、それが大人しくなるとそれはそれで少し心配な気もした。
「いやいやいや、変わってないから。金魚の世話するのが好きになっただけで、帰ってきたの3時間前よ。」
なるほど、ああ、本当に変わってない。そう思うと少し安心したが、やはり何事も変わらないに越したことはないのだろうか。
自分自身も昔から何も変わっていない。
これは友人達にも言われることなので確かなのだろう。

友人談としては、こうだ。
「亜矢子は絶対優しい、というか根が完全にいい人なんだよ。だから独りが好きでそういう行動を取るけど、それが伝わっているから誰も亜矢子のことを悪く思わなくて。どこか頼りたくなるというか、一緒にいると安心するところあるんだよ。この人は絶対に悪には染まらないな、変わらないなっていう信頼?があるんだよね。」

そんなことを言われたのを思い出しながら、出来上がったコーヒーをマグカップに注ぐと、自分の部屋へと戻った。
お昼までは少し時間がある、なつかしの定食屋で何を食べようか考えていた。





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