(ミステリーホラー)混沌の化神 -8
既に日が落ちかけた街、この周辺一帯のエリアの中ではそれなりの大きさであり、主要な交通機関も充実している〜市。
まだ聖夜の飾り付けはそのままに、色鮮やかなライト達が暗くなりかけた街を照らし始めている。
思えば今年のクリスマスも、灯りを目端に捉えながら独り住まいの住居に帰るだけであった。
例のように、世の女性達は独り過ごすクリスマスが嫌なようで、女子会なりの予定を作りあたかも暇ではないふりをして、そそくさと出かけていくのが通常なのかもしれない。
亜矢子にとっては人にどう思われるかはさして重要なことではなかった。そういった意味では独り好き、というのは生き方に自分なりの芯がないと貫けないものなのかもしれない。
そんな亜矢子でも、子供の頃に流れる定番のクリスマスソングや、それに伴うCM等を見ると心浮き立つものがある。クリスマスのネオンもやはりその類で、予想通り馬場よりも早く着いた亜矢子は、手頃なパーキングで車内からネオンの通りを眺め、おしかけ同僚からの着信を待っていた。
いかにもなチェーン居酒屋の半個室テーブル。
それぞれ別な意味で少し気まずそうな様子で、それぞれ向かい合って着席した二人。
ここまで来てしまうと明らかな好意が知られてしまった男と、それとわかりでも自分はそれに応えられそうもない、という女の微妙な立ち会いだ。
とりとめのないやり取りをしながら、ビールを飲み進めている二人だが、このままではいつもの職場の飲み会の様子と変わらない。
それは亜矢子が微妙な間合いで牽制をしているせいもあるだろうが、なにせ誘ったのは男の方なのだ。
この男、仕事は見た目を裏切らずそつなく器用にこなし、社内でも一目置かれている存在であるにもかかわらず、この場で今のところその器用な仕事力が発揮できてはいない。
女はこのままでいい、心身に負担のかかる話を特に今、したくはないと考えていた。
"心身に負担"、そう言えば亜矢子には今、人に聞いて欲しい話があった。
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