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(ミステリーホラー)混沌の化神 -11

10:30

じゃらじゃらと音を鳴らしながら近づいてくる、見慣れた赤の乗用車。
定食屋の砂利でできた駐車場に、馬場が亜矢子の車を駐車する。

「遅いんだけど。」
「待った?」
ミラーを開けながら馬場が悪気もなさそうに答える。
「30分。まずはお昼おごりと言いたいところだけど、わざわざ車運んでくれた恩があるから差し引きチャラね。」
「あはは、それでお願い。」
そう言いながら馬場が車から降りると、2人は定食屋に入った。

ここは、亜矢子が幼少期より時には家族と、時には友人と通った定食屋だ。
「何食べても安定して美味しいから。」
そう言って店主に本日のランチを2人分注文した。

「でさ、さっそくなんだけど今日の例のお礼に伺う先、僕も付いていっていい?」
お冷のグラスを傾けながら馬場が提案したのは、昨夜の話にあった"青山のおじいさん"なる人物へのお礼への同行だった。
「なんで!?関係ないじゃん。」
めずらしく語気の強い亜矢子だが、無理もない。
馬場は関係ない上に、大の大人がお礼に伺うのにお付きがいるのはなんというか、大人なら誰しも受け入れ難い事だろう。

「実はさ、昨日ベッドでよく考えたんだけど、これだけ人の少ない集落だとやっぱり何か関係あると思うんだよね、例の男の子とそのおじいさん。集落って同じ名字が集中してるって、よく聞く話でしょ。」
「言ってることはわかるけど、それだけの理由で一体どんな話をするの?私のはただの夢の話だよ??」
運ばれてきた定食の小鉢をつつきつつ、亜矢子はやはりまだ不満気に答える。

「なんか…気になるんだよね…なんというか、何もなければ勘違いで済む話なんだし、別に2人で訪ねるのが悪いことではないでしょ?」
亜矢子は、酢豚を口に運びながら視線を上に泳がせ少し考えた。
「うーん、いいよ。わかった。でも本当に関係ないと思うけどね。なんでそんなに気にするのかがわからないけど。」
「謎が謎を呼ぶっていうか、本当だったらさ。」
馬場は本日の酢豚定食を平らげた後、他人事だからか、幾分かわくわくした様子で答えた。

2人は食後のコーヒーを飲みながら40分程、その件とは関係のない亜矢子の子供の頃の話をして過ごした。

「今13:00だから…そうだな、13:30くらいに伺ってみようか。歩いて近いんでしょ?」
「うん、ここからだと徒歩15分くらいかな。車は実家に戻すし、うろうろしながら歩いていたらちょうどいい時間に着くかも。」
「OK。じゃあ、それでいこう。」
2人は割り勘でお会計を済ませると、さっそく車で亜矢子の実家へと車で向かった。

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