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お湯が沸くのを待ちながら

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お湯が沸くのを待つ間にも読める超絶短編小説集 思いつくまま書いた話をUPしていきます。 何かを待っている、ほんの隙間に読んでくれると嬉しみ。
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#短編

超短篇小説5 "将棋"

超短篇小説5 "将棋"

私は平凡な棋士より先読みをする能力に長けていると自負している。

何故なら、相手の打った手の内容だけで無く、相手の目線、息遣い、表情の全てを勘案してその先を読んでいる。

比喩でもなんでも無く千手先を読んで将棋を指すことができるのである。

相手が繰り出すであろう手を間違えて読んでしまったことなど一度もない。

そんな自分からしたら、将棋の頭脳戦なんてあってないようなものだ。

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超短篇小説4 "ダイイングメッセージ"

超短篇小説4 "ダイイングメッセージ"

とある男性の遺体の側には

ミレドシラファソラドレドレ.......
と続くカタカナが血で書かれていた。

定期的に文字の周りには丸が書かれている。

勿論、それが音階の事であるとはすぐに気づいた。
おそらく、これは何かの曲で丸が付いているところの歌詞が犯人を見付けるヒントになるのであろう。

そして、この譜面の曲はおそらく"the vowel"というバンドの"cause of d

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超短篇小説3 "すれ違い"

超短篇小説3 "すれ違い"

「もう別れる!!」
と目の前にいる女が言う。

「え?」と男は言い返した。

「いつもまぁくんは仕事ばかり優先してて、全然私のことを大事にしてくれてないじゃない!」

「この前のデートだって!
ずっと私楽しみにしてた演劇だったのに!
仕事でトラブルが起きたってドタキャンするし!!」

それを聞き、確かに最近仕事優先してしまっていることは悪いかもしれないと僕は思う。
しかしそれは家族

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超短篇小説2 "秘密"

超短篇小説2 "秘密"

俺はとある平凡な高校生。
勿論、年ごろなので好きな人もいる。

好きな人は大人しい地味な女の子だが密かに男人気のあり手が届きそうで届かないそんな女の子。

そんなある日の登校時、
俺の好きな女の子が河川敷の地面から出てきた。

俺の好きな人は"地底人"だった。

その日の放課後、彼女の親友の女から校舎裏へ呼び出された。
その親友の後ろには俺の好きな女の子もいる。

俺の好きな女の子は下を向き震

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超短篇小説1 "約束"

超短篇小説1 "約束"

俺はとある野球強豪校の野球部員。
小学生の頃からずっと4番バッターでどんな投手でも打ち崩してきた。
この強豪校にもスカウトされて進学した、所謂野球エリートである。

そんな俺だが小学生の時に一度も打つことの出来なかったやつが1人だけいる。
その投手は女だった。
何度対戦してもその女のストレートにバットを掠らせることすらできなかった。

そんなある日、そんな宿敵である女が親の転勤で遠くへ引っ

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