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超短篇小説1 "約束"

俺はとある野球強豪校の野球部員。
小学生の頃からずっと4番バッターでどんな投手でも打ち崩してきた。
この強豪校にもスカウトされて進学した、所謂野球エリートである。  


そんな俺だが小学生の時に一度も打つことの出来なかったやつが1人だけいる。
その投手は女だった。
何度対戦してもその女のストレートにバットを掠らせることすらできなかった。  

そんなある日、そんな宿敵である女が親の転勤で遠くへ引っ越すことになったのだ。  

俺は引越し前日にその女の家まで行き
「甲子園まで来い!そこでお前からホームランを打ってやる」と伝えた。  

すると彼女は涙を流しながら、
「絶対、甲子園で君にホームランを打たれることはないよ」と言う。

小学生の頃はその言葉の意味を間違えて捉えていたが、第二次成長期を迎えた頃にその言葉とその涙の意味がわかるようになった。  


そして現在、高校3年の夏
我が高校が甲子園に出場している。  

対戦相手の高校は名前も聞いたこともないような高校である。
対戦相手の投手は球自体は遅いがのらりくらりと相手を打ち取る技巧派投手であった。  

体格は女の様に小さく細い。
というよりは恐らく俺しか気付いていないがあれは女だ。  


試合前日に知らない番号から電話がかかってきた。
その相手は名すら名乗らず、
「約束通り、甲子園で君にホームランは打たれることはないからね」と一言。

そんな今日の試合は我が高校がその投手を打ち崩し7-3で勝利した。
ただ、俺はその投手からホームランはおろかバットにボールを当てる事すら出来なかった、、、、  



"約束通りホームランは打たせなかったな"

と思うランナーコーチの俺であった。

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