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#エッセイ部門

しわいや

しわいや

題名は、私の一番好きな落語の演目。
ケチすぎる人の話。
「ケチと泥棒は金を払ってまで落語を聞かない。」ということで、落語にはケチと盗っ人の話が多いらしい。

でも私も吝嗇な女だと思う。
カレンダーには、お金を使わなかった日に印を付けている。
1円もお金を使わなかった日は何だか自分が誇らしい。ノーマネー記念日だ。
最高でも財布を開くのは週に2回までに留めたい。

基本電子マネーを使う。ポイントも貯ま

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"もし僕らの言葉がウイスキーであったなら"

"もし僕らの言葉がウイスキーであったなら"

「これはね、村上春樹が愛したお酒なんだ」そう言って、ウイスキーグラスに注いでくれるカティサーク。帆船に黄色のラベルが目印、ブレンデッドウイスキーと呼ばれるそれをひと口。胸が熱くなって、どきどきするのはお酒のせい?それとも、なんて想いながら見つめ合う瞬間。そんな夜を、愛していた。



昨日は越してきて初めて、夜の街へ出かけた。地元のお洒落な場所なんて行き尽くしたと思っていた高校時代。大人になって

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ピアスと父と…父のピアスの穴は、わたしが開けました。

ピアスと父と…父のピアスの穴は、わたしが開けました。

「一緒に、あけるぞ!」

そう言って、バツンとわたしの耳に穴を開けたのは、他ならぬ実の父でした。

もともとファンキーでアクティブな父。
自分が、明るい色に自宅で髪を染めたとき、
染粉が余ったからと
「なぁ、塗ってやるって!」
と言って、
今で言うインナーカラーにされたのは、
わたしが中3のときでした。
受験なんておかまいなし。
「余ってるのに勿体無いだろ?」
と笑顔で言い切り、受験を考慮して、ハ

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あいつはギフテッド

あいつはギフテッド

空を眺めるのが好きだった。

ぼーっと流れる雲と時々飛んでくる飛行機。私の住んでいた街は空港があったから、飛行機がよく見えた。轟音が響いて高く飛ぶさまは、わたしにとって自由の象徴に見えた。

「それANAの○○便、ボーイング○○○だよ」

中学校へ行く途中、空を見上げながら歩いていたわたしは、急に声をかけられて、転びそうになった。

「え?なに?」

「だからあれはANAの〜…」

入学以降、彼と

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サブカルクソ野郎がした、花束みたいな恋について。

サブカルクソ野郎がした、花束みたいな恋について。

「花束みたいな恋をした」の二人が履いている"ジャックパーセル"は、私にとっての"オニツカタイガー"だった。

「花束みたいな恋をした」は、坂本裕二脚本の、今をときめく麦役・菅田将暉と絹役・有村架純の恋愛映画だ。説明もいらないくらい流行したけれど、この映画には主人公二人だけが分かり合える固有名詞がたくさん出てくる。好きな映画監督、好きな作家、そしてお揃いのスニーカー。このスニーカーは、ジャックパーセ

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生きてるうちに、好きと言え

生きてるうちに、好きと言え

夜中のコンビニ、スウェットですっぴん眼鏡も慣れたものだ。
びゅーびゅーと吹く風が、火照りを冷ますから、子犬のように身を寄せ合って歩く。
冬は君の手をポケットにお招きできるからいい、とバンプが歌っていたな、と思い出しながら、彼のポケットに手を突っ込む。
あたたかいおでんと一年ぶりに再会して、彼は「柚子胡椒をつけるとうまいんだよ、しってる?」と笑う。
安い缶チューハイに、暖かい部屋で食べると最高なアイ

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初恋の待ち合わせはいつも踊り場で。【同和問題】

初恋の待ち合わせはいつも踊り場で。【同和問題】

私には、一度だけ告白をされた経験がある。
告白と言っても罪を告白する訳ではなく、いわゆる「ラブ」というやつだ。

小学生の頃引っ越してきた私は、転校生として小さな田舎町で過ごした。
娯楽といえば駄菓子屋でお菓子を買うくらいのレベル。

当然、みんなそれなりにグレた。
やることがないからだ。

同級生の一部は、普通に万引きしていたし、授業中はみんな机の下でゲームをしていた。
特にグレていたのが私のニ

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