ツジ 

'96(28) 震えながら立つ中央線のホームで、あなたの足を止める言葉が、私…

ツジ 

'96(28) 震えながら立つ中央線のホームで、あなたの足を止める言葉が、私の中にあるように。                              (コメント返信遅くなってしまうことが多いのですが、必ず返しますのでご容赦ください)

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  • スキが100を超えたもの

    スキが100を超えたものだけ集めました。皆さんが読んでくれたこと、ほんとうに嬉しいです。(ほぼ100もいれちゃう)

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    自己紹介代わりの記事5つ。お気に入りのものです。

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生きてるうちに、好きと言え

夜中のコンビニ、スウェットですっぴん眼鏡も慣れたものだ。 びゅーびゅーと吹く風が、火照りを冷ますから、子犬のように身を寄せ合って歩く。 冬は君の手をポケットにお招きできるからいい、とバンプが歌っていたな、と思い出しながら、彼のポケットに手を突っ込む。 あたたかいおでんと一年ぶりに再会して、彼は「柚子胡椒をつけるとうまいんだよ、しってる?」と笑う。 安い缶チューハイに、暖かい部屋で食べると最高なアイスも買っちゃって、急ぎ足で部屋にもどる。 そんな、ありふれた、どこにでも転がっ

    • "愛する"というスキル

      「ひとにはね、見えないスキルがあるんだよ」 まるでそれは魔法のことば、妖精がささやくように彼女は言う。 「履歴書に書けるようなスキルがないとしても、あなたは魅力的でひとを惹きつける。あなたの愛は、見えないスキルだよ」 なんだかその言葉をポッケに入れれば、どこまでも歩いていける気がする。そんな宝物を今日もひとつ、もらった。 * わたしにはほとんど職歴がない。正確に言えば、正社員の経験はゼロ。あとは短期バイトがいくつかで、3ヶ月以上続いたことがない。いわゆるフリーターを

      • 冷房の効かない部屋の午後2時に

        夏の暑さがわたしの憂鬱に拍車をかける。冷房の効きが悪いこの部屋で、わたしはただ希死念慮と寝転がる。「逃げてちゃダメだよ」ひとは簡単にわたしの逃げ道を塞ぐ。それはきっとやさしさで。何度言い聞かせても、染みついた被害妄想はわたしを救わない。それでも隣にいてくれるのはこいつしかいないから、わたしは簡単に絶望する。 こないだ、部屋の中でシャボン玉をした。ふわふわ浮く透明なガラス玉は光を閉じ込めて、夢のように光る。いくつ作っても弾けて消えてしまうその儚さに囚われて、何度も何度もストロ

        • 死ぬな、生きろ、ただ愛せ

          「幸せになるのには、覚悟が必要だよ」酔った勢いで誇らしげに言うわたしが、二日酔いの頭にリフレイン。安いウイスキーを煽ったせいで、鼻の奥からまだ酒の匂いがする。頭を抱えながら水を飲み干し、自分に改めて問う。 「自分には、幸せになる覚悟あんのかよ」 小さくつぶやいたその声は、反響もせず孤独に吸い込まれてゆく。まだ若い、と言われる年をもうすぐ終える。28歳夏、わたしはまだ迷っている。 * わたしが今暮らすのは、古い大きなゲストハウス。恋人もひと月滞在することになり、なんだか

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          たくさんのスキをいただけたこと、 フォローを外さずにいてくださったフォロワーさんがいること。その事実にほんとうに、こころから救われました。ハグして愛してるって生きててくれてありがとうって、叫びたい気持ち。ほんとうにありがとう。これからもゆるゆる更新しながら、愛を届けられたらな。

          たくさんのスキをいただけたこと、 フォローを外さずにいてくださったフォロワーさんがいること。その事実にほんとうに、こころから救われました。ハグして愛してるって生きててくれてありがとうって、叫びたい気持ち。ほんとうにありがとう。これからもゆるゆる更新しながら、愛を届けられたらな。

          ぼくらの夏、青い春

          いつだってどうしようもないぼくらは、ただ瞬間的な夏を生きている。人生は夏みたいだ。恋しくて、いざ来ると最悪で、終わってしまうのは悲しくて。振り返ればきらめく思い出たちが、心に焼き付いて離れない。痛みと隣り合わせの愛は、わたしをどうしようもなく狂わせる。そんな、夏。 * しばらく前から、ゲストハウスに滞在している。わたしが働く本屋さんのオーナーが経営する、大きな古民家だ。といっても、2〜3人しかおらず、なんだかシェアハウス感覚。虫だらけのこの家は、夏は暑く冬は寒い。けれど、

          ぼくらの夏、青い春

          いつも読んでくださってありがとうございます。愛と喜び、痛みを分け合ってる気持ちで、いつも愛おしい。ただ、申し訳ないことにフォロバが追いつけません。あなたを愛するためにフォローを外させてください。詳しくは画像を読んでくださるとうれしいです。生きててくれてありがとう。

          いつも読んでくださってありがとうございます。愛と喜び、痛みを分け合ってる気持ちで、いつも愛おしい。ただ、申し訳ないことにフォロバが追いつけません。あなたを愛するためにフォローを外させてください。詳しくは画像を読んでくださるとうれしいです。生きててくれてありがとう。

          "ぼくの好きな先生"

          あのひとは、いつもくしゃくしゃの顔で笑う。ぼさぼさの髪の毛に埃をいっぱい纏わせて、「今日はどしたん」と訛りの強い関西弁。白衣はクタクタになっていて、あちらこちらに汚れをつけている。 「先生、今日はね」からはじまる、二人の時間。広大なキャンパスという人の海で、ここだけはまるで陸の孤島。閉じ込められた空間で、わたしはただ泣きながら、怒りながら、今日のことを話しだす。口から流れる言葉を、まるで水を眺めるように穏やかに聞く先生。「それはアホやなあ」「それはえらいしんどかったなあ」ぽ

          "ぼくの好きな先生"

          世界一脆い、ダイアモンド

          「ねえ、大きくなったら何になりたい?」無邪気に問いかける姿は、いまだ少女のようで。そんな彼女にわたしは答える。「いつか、必ずエッセイストになるよ」誰にも言ってこなかった秘めた想いを、震えながら口に出した。彼女は静かに微笑んで、「やっぱりあなたは、どうしようもなく"あなた"だね」とつぶやく。 金木犀の香りが微かにする、大学のカフェテリア。テラスで交わした、二人にとってはじめての約束だった。 * 彼女は初めて会った時から、発光体のように光っていた。 わたしはその頃からド派

          世界一脆い、ダイアモンド

          孤独の話をしよう

          孤独の話をしよう。 目をつぶると、暗闇がわたしを支配する。穏やかな悲しみが全身を豊かに覆い尽くして、ただ溺れてゆく。目が慣れてくると、暗闇のなかで、微かに光る星屑がある。まぶたの裏でチカチカと。その光がとても希望だとは思えなくて、ただまぶしさだけが絶望を深くする。だれかの輝きが、わたしの影を色濃くするのだから。 毎日楽しい訳がないなんてこと、思春期の頃にはとっくに分かっていた。なのに、なぜわたしは今も生き続けているのだろう。この虚しさを永遠に抱えながら死んでゆくだけの"に

          孤独の話をしよう

          今夜踊ろう、そんなダンスミュージック

          木造のぎしぎし軋む階段を上がると、音楽が聞こえてくる。リズムは本たちのパラパラめくれる音に、瀬戸内海のさざなみ。そして、微かに鼓動を揺らすときめき。まるでわたしとあなたの、"明るい未来"の話をしているかのような、そんな音楽が。 * 本屋さんに勤めはじめて、もうすぐひと月。オーナーさんに「好きな音楽かけていいから」と言われて託されたサブスク。腕まくりしてかける音楽、店内を踊らせるダンスミュージック。毎日がDJ気分のわたし、店を開けた瞬間から大きな音で音楽をかけまくっている。

          今夜踊ろう、そんなダンスミュージック

          おはよう、せかい

          書店員の朝は、遅くはじまる。モーニングルーティンなど蹴っ飛ばして、ざっざっとメイクをして、とびっきり好きな服を着て。とりあえず鏡の前で決めポーズ、走り出すように海を目指す。初夏の香りが潮風に混ざり、きらっきらにまぶしい景色がわたしの瞳を射抜いてゆく。 香川県の瀬戸内海が見える本屋さん。今日もわたしは穏やかに扉を開ける。ワクワクとトキメキを、めくるページに忍ばせて。 * 昼、開店したての店ではたきをかけていると、一番めのお客さんがやってきた。「やってる?」と微笑んだのは、

          おはよう、せかい

          博士、餃子、愛。

          博士、というあだ名の恋人がいる。博士は理系の研究者で、たぶんちょっと変わっている。 怖いものは採血と大学の先生で、電話越しのわたしの声を立体音響で聴こうと日々努力している。わたしの怒るポイントや悲しむポイントを知るたびに、「傾向と対策ができてきました」とか、「これはケアレスミスだなあ」という言い回しをする。わたしを何かしらの試験だと思ってるのか?と時々憤慨するが、そんなところも愛おしい。 そんな博士とわたしは遠距離恋愛。海外を拠点に研究する博士は忙しく、なかなか会えていな

          博士、餃子、愛。

          海の見える街

          そのお店は海のそば、古いトタン屋根の倉庫街にある。秘密基地のような狭い階段を上がると、建てつけの悪い古めかしいドア。鍵を開ける時は、えのながい大きな鍵でひと回し。まるで物語のはじまりみたいに開くドアの先には、たくさんの夢が詰まった本が並ぶ。美しいポスター、おしゃれな写真集。物語の隙間に挟み込まれる挿絵のようなお店は、ちいさいけれど愛おしい。すみずみまで愛に満たされた、美しい本屋さん。そんな場所で、働くことになった。 * 「ここで働かせてください!」 まるで気分はジブリ映

          海の見える街

          大人になんかなるなよ、死ぬなよ、

          「大人にならなくていいのに」そう悲しそうに、何気なく先生は言った。少し暑くなった病室に、静かな風が吹く。春の終わりの匂いがした。 * 昨日、初めてのメンタルクリニックへ行った。東京から引っ越したせいで、新しい病院を探していたからだ。「3ヶ月後になっちゃうんですけど…」予約時にそう言われた時は絶望したけれど、なんとか騙し騙しこの日を迎えた。精神科は、ほんとうに空いていない。今日死にたいのに!今日がもう無理なのに!勇気を出して連絡しても断られる日々。いのちの電話なんて繋がった

          大人になんかなるなよ、死ぬなよ、

          桜が降る夜に、永遠を想う

          桜が降る街、雨の音は深く胸の中まで降り注ぐ。春は美しく、世界中が活気づいて見える。芽吹くたくさんの命の香りにクラクラしては、自分の生を実感させられるそんな日々。孤独な生きものとして生まれた人間たちは、ただ愛を求めて彷徨う。こんな穏やかな春の日は、そんな自分の孤独と切なさを感じて涙がこぼれ落ちる。 桜は咲いている時より、散っている方が好きだ。歩けば桜の絨毯、舞い落ちる花びらはわたしの肩で微笑みかける。「地面につく前にキャッチしたら、願い叶うんやって!」と叫ぶ通学路の子どもたち

          桜が降る夜に、永遠を想う