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死花-しか-

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不定期更新の連載小説。 棗藤次(なつめとうじ)は、司法修習生の同期で弁護士の谷原真嗣(やはらしんじ)と同居する、京都地検の名物検事。 笠原絢音(かさはらあやね)は、20年に渡…
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#30日うちの子語りチャレンジpart2

#30日うちの子語りチャレンジpart2

…はいっ!
Twitterにて絶賛公開中の、#30日うちの子語りチャレンジ。
day6〜day10まで溜まったので、またこちらにまとめます!!

■day1〜day5はこちら

好きな食べ物、季節、場所

嫌いな食べ物、季節、場所

許せないこと、怒りの沸点

死花-14話-⑦

死花-14話-⑦

…そして、季節は芽吹きの春。

藤次と絢音が、7回目の結婚記念日を迎えようとしていた時だった。

榎戸修二の判決の日がやってきたのは…

喪服姿で、2人の子供の遺影を持った藤次は、隣で沈痛な表情をする絢音の肩を優しく抱き締める。

「大丈夫や。やれることはやった。きっと神さんが味方してくれる。せやから、そないな顔しなや。な?」

「う、うん…」

そうして粛々と裁判は開廷し、榎戸が証言台に立つ。

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死花-14話-⑥

死花-14話-⑥

そうして、賢太郎をはじめ検察と被害者家族会は、殺人と殺人未遂罪。危険運転の罪で、榎戸修二の死刑を求刑。

弁護士側は、あくまでも過失だったと、有期刑を求刑し、裁判は結審した。

「ほんなら、お世話になりました…」

花藤病院の正面ロビー。

看護師から花束を受け取り、藤次と絢音は頭を下げる。

「いや、ホントによかったです。絢音さんの記憶が戻って。後は、審判を待つばかりですね。」

「はい。自信は

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-死花-第14話⑤

-死花-第14話⑤

…2月28日。

運命の日。

藤次は真嗣に導かれながら、証言台に立ち、宣誓の誓いを立てると、ギリギリと歯痒そうに自分を睨む榎戸を冷ややかに見つめた後、裁判長に向かい、口を開く。

「…初めに言います。これから私が話す論告は、事件とはかけ離れた内容になるかもしれません。ですが、皆様にどうしても知ってもらいたくて、そして私が今、被告人の死をどれほど切に願っているかをご理解してほしいためです。長くなり

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死花-14話-④

そうして年が明け、榎戸を棗藤太と棗恋雪に対する殺人容疑、棗絢音への殺人未遂容疑で立件…再逮捕するか否かの審判が下される日が来た。

取調室でニヤニヤと下衆な笑いを浮かべる榎戸に、松下は胸元から一枚の紙を出す。

その紙の内容を見た瞬間、榎戸の顔から笑みが消える。

「なっ…んで……」

あったのは、榎戸修二、殺人罪及び殺人未遂罪により逮捕立件すると書かれていた、逮捕状。

「ふざけんな!!俺の親父

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死花-第14話-③

死花-第14話-③

「…………」

重い沈黙が漂う中、藤次は真嗣の働く弁護士事務所の会議室で、被害者の会の面々と向き合っていた。

「一体何なんだよ!谷原先生がどうしてもって言うから来てみたら、なんでアンタがいるんだよ!」

「そうよ!アンタのせいで、うちの子全治3か月の骨折よ!傷だってあるし、毎晩あの日が夢に出るって泣いてるのよ!?」

我慢できずに口火を切った2人の被害者の言葉を聞いた瞬間、藤次は椅子から立ち上が

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死花-第14話-②

死花-第14話-②

「お父さん!お父さん!コレ!コレ読んで!!」

2人では広すぎると、北山のマンションを引き払い、かつての長屋に戻って来た藤次は、背中に縋り付いてねだる絢音を余所に、思案に耽っていた。

「(このままやと、賠償金に釣られて被害者の弁が甘うなる。裁判員制度の事考えたら、被害者の心情をしっかり伝えるんは重要…どないする。どないしたらええ…)」

「ねぇっ!お父さんたらぁ!」

「五月蝿い!!お父ちゃん大

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死花-第14話-①

「…被告人は、◯月×日正午。京都市花藤区花藤町三丁目の大通りの歩道を、およそ100kmで500m暴走。通行人12名を跳ね、乳幼児を含む3名を死に至らしめ、9名に重軽傷の加療を与えた。動機は、京都地方検察庁検察官棗藤次氏への怨恨と供述。よって検察は、この事案には個人的怨恨…つまり、明らかに被害を受けた棗氏の家族の命を狙った犯行であると認定し、危険運転致死傷、道路交通法違反の他に、この罪状を追加致しま

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死花-第13話-⑥

死花-第13話-⑥

「ほんなら、お世話になりました。」

藤太と恋雪の49日となる冬の初め。

奇跡的な回復を遂げた絢音を連れて、藤次は冬の雪がちらつき始めた京都市内を車で走る。

「お父さん。ここ、呉じゃないの?お山やお寺がいっぱいあって、雪も降ってるし、違う街みたい。」

不思議そうに車窓を見つめる絢音に、藤次は優しく笑いかける。

「そうだよ。ここは、京都。日本の都。今度お父さんと、仁和寺行こうな?南禅寺もかな

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死花-第13話-⑤

死花-第13話-⑤

「ほんなら、その離婚届持って、役所行くんやで?間違っても、病院には来たらあかんえ?…全ては、アンタの為や。姉ちゃんが責任持って、あの娘の後見人になってくれる人探すさかい、アンタはアンタで、事件もなんもかんも忘れて、別の幸せ探し。ええな。」

「う、うん…」

絢音が目覚めて1週間。
彼女が桜山病院に転院の決まった朝。

散々恵理子にそう説き伏せられ、藤次は彼女が代筆し埋められた妻の欄を見つめながら

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死花-第13話-④

死花-第13話-④

「とーちゃん。今日は大役お疲れさん。姉ちゃんと抄子ちゃんに後任せて、今夜は久しぶりに家で寝たらええわ。チビちゃん達とも、ゆっくり話したいやろ?」

藤太と恋雪の葬儀を終えた夜の花藤病院の待合室。

暗がりの中、小さな遺骨になった2人を抱き締めてぼんやりしている藤次に恵理子は語りかけたが、藤次は首を横に振る。

「嫌や。一般病棟移った言うても、まだ油断できん。今日も寝ずに、看病する。」

「そやし…

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死花-第13話-③

死花-第13話-③

「…改めて見ると、ホント…酷いわね。」

「うん…」

朝。

送検されてくる榎戸の取り調べをするために、警察から回されてきた書類を整理していた夏子は、事件直後に撮られた藤太と恋雪の亡骸の写真を見て呟く。

その言葉に、佐保子は静かに頷き、纏めた資料を、稔に渡す。

「稔君…ちょっと、良い?」

「えっ?」

瞬く稔の手を引いて、佐保子は夏子に作業の続きを頼み、検事室から出る。

「ど、どうしたの

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死花-第13話-②

死花-第13話-②

「ちょちょちょっ!なっちゃん待って!!気持ちは分かるけど無茶だよ!!」

時間は少し戻り、京都地検刑事部長室に向かう廊下を、何かを決意した夏子と、オロオロする柏木が歩いていた。

「止めないでください検事。私、どうしても許せないんです…」

「だからって、事務官が部長に直訴なんて聞いたことないよ!?それに、棗が刑事部長に今回の件、楢山に託したってのは、まだ噂の域なんだよ?!なのに…第一、なっちゃん

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死花-第13話-①

死花-第13話-①

…楢山君は、どうして検察入れたのか不思議なくらい、優しくて繊細な心の持ち主。

まあ、別に検察官が全員ガサツだって言いたいわけじゃないんだけど、毎回重大事件を担当すると、被害者は勿論、加害者まで同情して、感情移入して、憂さを晴らすかのように、30代中頃から、好きだった酒の量も増え、煙草も始めた。

体に毒だよって言いたかったけど、それで少しでも楢山君の心のバランスが取れるなら良いかと、黙認してきた

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