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奇譚

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奇譚、怪談
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#眠れない夜に

こわいものの話

こわいものの話

何か、こわいものってありますか。

大概の人はそんなことを聞かれても、と困った顔をします。
そして考えを巡らし話を始めるのです。

居酒屋で友人と呑んでいて、こんな話を聞かされました。

「○○大学の近くにあるビルにはお化けがでる」

彼は心底嬉しそうな顔をしながら言うんです。

「なあ、行くだろ?」

こわいのが好きなもので、つい、乗り気になってしまいました。
お酒の力もあったのだと思います。良

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後から分かることだってある

後から分かることだってある

 美紀さんの母が亡くなった時の話。

「母は嫌われ者でした。皆が母の事を嫌っていたんです。祖父も祖母も、勿論私も」

 母は若い頃から酒に溺れ、借金を作ったりと父に迷惑をかける最低な人だった。美紀さんも物心ついた時には毎日のように母から暴言を浴びせられ、母との楽しい思い出など存在しなかった。

 父はとても優しく、母に暴言を浴びせられて泣いている美紀さんをいつも慰めてくれていた。

 酒に酔い、タ

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耳業地説

耳業地説

【自業自得】

・自身で行った事の報いを自分の身に受けること。

実話怪談。誰かが体験した、もしくは自身で体験した奇怪で奇妙な話。
創作ではない、本当にあった話を探しては世の中へ届ける。

それが、私が生業としている怪談作家の仕事である。

毎日の様に、まだ見ぬ怪談を求めては全国を飛び回っていたのだが、近ごろはめっきり行かなくなっていた。行かないというよりは行けなくなっていた。

知人、友人と様々

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キスするみたいに

キスするみたいに

さっさと風呂に入ってさっぱりしてビールでも呑んだろうと思って。
ぱっぱっぱっと服を脱いで浴室に飛び込んだら
「何をそんなに焦っているのです?」
って声をかけられた。
キョロキョロしていると
「こっちです。こっち」
そこにいたのは買ったばかりのシャンプーだった。正確にはシャンプーの容器か。
とにかく早く風呂を終えてビールが呑みたかったんで
「あぁなんだ」
と気のない返事をして、シャンプーのポンプに手

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奇譚 映り

奇譚 映り

Kさんはある時期から写真や映像に映ることを嫌がり、自身が写った映像、写真は絶対に見ないようにしている。

「写真や映像に映った自分を見ていて、何だか違和感を覚えるようになったんです。最初はその違和感に全く気付きませんでしたが、時が立つにつれてハッキリと分かるようになりました。」

写真や映像に残るKさんは少しづつ首が伸び、顔がグシャグシャになっており、最後に映った自身をみた時には首から上がもう人な

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怪談 冷たい手

怪談 冷たい手

「幼少期はとにかく寂しかった記憶しかないです」

Nさんは物心がついた頃には母を亡くしており、父と二人で暮らしていた。

「常に体調が悪くて、学校にも満足に通えずに色白で痩せていて、見た目から相当に貧弱でした。」

産まれたときから身体の弱かった新垣さんを男手一つで育てる為に、父は毎日働き詰めだったが常に笑顔を絶やさない優しい人だった。

ある雪の降る日、Nさんは熱を出して寝込んでしまっていた。

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奇譚 救済

奇譚 救済

とあるビル、屋上で転落防止の金網を乗り越え、彼は飛び降りようとしている。私は熟練の警備員として見逃すわけにはいかない。
不審な動きをしているので、何か企んでいることは感じていたが、まさか命を絶とうとしていたとは。

「まて!はやまるな!君が命を落とす必要はない!」

「…もう疲れたんだ、学校でも家でも…僕は必要とされてない…もう疲れたんだ!」

「…正直、今の君が感じている苦しさは私には分からない

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奇譚 回想

奇譚 回想

とある冬の日、Eさんは家の掃除をしている最中に学生時代のアルバムを数冊発見した。

懐かしさのあまり掃除の手を止め、
次々にアルバムを開きながら想い出に浸っていると、ある1冊のアルバムに違和感を覚えた。

そのアルバムには全く記憶にも無いような写真が収められており、どの写真にも人物が写っておらず、どこか田舎を思わせるような風景ばかりであった。

最後のページをめくると、
目と口を異常なほどに大きく

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