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エッセイ、その他

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『過去の音に導かれて』

『過去の音に導かれて』

 「ババア」

 そう呼んでいたのは、高校1〜2年生のころだ。深い意図はない。徐々に母を拒絶するようになり、干渉を避けるために用いた言葉だ。

 もう気づいていた――暴言には抑止力があるのだと。

 同時に、申し訳なさも感じていた。吐き捨てた暴言の数だけ、後悔があった。しかし、反省している自分を見せると、母はぼくの「バリア」を破る。そう怖れ、赤裸々な姿は見せなかった。

 心と言葉を連動させると、

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『ぼくとルーツと今』

『ぼくとルーツと今』

 三十余年の人生を反芻(すう)するーー。紆余(うよ)曲折な生き方をしている・いたように思える。踏み込もう。

学生時代 非行少年ではなかった。ただ、周りに不良が多かった。特に中学生のころだ。

 具体的には?

 ーー剣道部の木刀が全て盗まれる。先輩や同級生がそれらを持って、他校に乗り込む、といった具合に、過激な非行を目の当たりにするのがつねだった。

 ぼく自身はどこかシラけた目で眺めていた。

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『前向きな死について』

『前向きな死について』

 いつか迎える「死」を、ぼくは前向きに受け入れるだろう。今は「生」に感謝をしていない。

 --厳密には、出来ていない、する余裕がないのかもしれない。死に向き合う時だろう、「命」のありがたみが分かるのは。

 今ある生ーー。自分は惰性で生きていると思っている。楽観的でもなく、悲観的でもない「惰性」だ。

 ただただ、今を生きる。

 時間を意識せず、雑音に囲まれることもなく、目前のことをこなしてい

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『トー横という病』

『トー横という病』


トー横キッズたち
トー横はTOHOシネマズ付近にある。
シネマズの横にあることから、この名前がついたとされる(Wikipedia)。ここにたむろする少年少女が話題となった(っている)。

 このエリアで取る奇行などが注目を浴びるきっかけになった。その話題性からか、トー横に居座る若者は「トー横キッズ」と呼ばれる。今ではトー横キッズの呼称は定着し、浸透している。

 一面だけを見ると、いかにも若者が

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『沈黙する命』

『沈黙する命』

【記憶】

 小学4〜5年生の時の話だ。

 竹やぶのような山に、叔父がぼくを連れていった。秋田県に住む、叔父の家からすぐそこのところ。目的は告げなかった。黙って山を上りきった。

 炭となった車が一台、場違いな空気を放ちながら、佇(たたず)んでいた。

 無神論者だが霊的なものを感じた。無言の圧力を受け、耳鳴りがしそうだった記憶がある。言葉にしがたい違和感。

 少し経って「昨日ここで、車のなか

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『煙に包まれて』

『煙に包まれて』

【衝撃】 テレビ越しに映る世界貿易センタービル(WTC)に飛行機が突っ込む。煙を放ちながら、もう一台がWTCを破壊する。つづけてWTCが倒れてゆく。混乱状態にある人びと、助けを求める人びと。

 一瞬で。道路が灰に覆われるニューヨークの姿が、まじまじと映されていた。ーー22年前の今日、2001年9月11日の出来ごとだ。

 非現実的な光景を目の当たりに想像力は無力だ。

 当時ぼくは12歳だった。

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『試練の技術』

『試練の技術』


【AIの悪用】 AI(人工知能)が犯罪に悪用される恐れが高まりつつある。

 「ディープフェイクボイス」ーー。AIによって生成される他人の声のことだ。知人や親族の「なりすまし声」を犯罪者が活用できるのでは、と懸念されている。

 生成AIなど、精度の高い技術が企業の生産性を高めるなど、技術発展の恩恵は大きいだろう。生成AIによって議事録が作成される。

 また、蓄積されたデータを用いて、文章を生

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