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黒船の軍楽隊 その6

 ペリーは6月3日(嘉永7年5月8日)に箱館を出港し、下田に向かい下田・箱館開港に伴う遊歩区域、外人休息所の設定、その他開港場の使用細則などの追加条約の交渉に当たりました。


1954年6月8日(嘉永七年5月10日)

 下田港に上陸し、了仙寺に向う様子がヴィルヘルム・ハイネ作の石版画に描かれています。

上陸石版画

「ペリー提督、将校および兵士の上陸」(図1)

 枠外に「日本の下田で、交渉委員らに会うため 1854年6月8日」と記されています。なお、この絵の中心部分を見ると10人編成ほどの軍楽隊が描かれていることがわかります。ドラム奏者がおそらく2名いて、ここでもオーバー・ザ・ショルダー・サクソルンと思われる金管楽器やホルン奏者も描かれているように見えます。

軍楽隊部分の拡大(図2)

了仙寺での軍事調練

下田了仙寺境内での軍事訓練 1854年6月8日 (図3)
軍楽隊部分の拡大17人程の楽隊員 (図4)

6月17日(嘉永7年5月22日)

 日米和親条約の細則を定めた全13か条からなる下田条約は、6月17日(嘉永7年5月22日)に締結され、ペリー艦隊は6月25日(嘉永7年6月1日)に下田を去りました。

下田条約

 米船員の上陸場所(下田、柿崎その他)、欠乏品供給所、異人休息所(了仙寺、玉泉寺)、洗濯場、立入許可区域、鳥獣の捕獲禁止、商品取引の管理、死亡者の埋葬(玉泉寺)、港内水先案内人の設置等々の細目が決められました。


演奏された可能性のある楽曲

 ペリーの日本訪問中の記録には、見つけられませんが1850年頃にアメリカで流行っていた様々な曲が演奏された可能性があると思われます。

My Old Kentucky Home (図5)
Sweet Home(図6)
夏の名残のばら(The Last Rose of Summer)(図7)
黄色い髪をした少年(The Yellow-Haired Laddie) (図8)

脚注


(図1) ヴィルヘルム・ハイネ作の石版画 下田港に上陸し了仙寺に向う様子が描かれた手彩色石版画
(図2) 図1中心部に描かれている8人程が確認できる軍楽隊の拡大図
(図3) 図1と同日の交渉場所そして軍事訓練も実施した了仙寺境内の様子
(図4) 図3の右下付近に描かれた17人程が確認できる軍楽隊の拡大図
(図5) ケンタッキーの我が家(My Old Kentucky Home)フォスター作曲の E♭ソプラノ・サクソルンパート譜
(図6) スイート・ホーム(Sweet Home)スコア
(図7) 夏の名残のばら(The Last Rose of Summer)の全パート譜
(図8) 黄色い髪をした少年(The Yellow-Haired Laddie)スコットランド民謡の全パート譜


他の黒船の軍楽隊シリーズ

黒船の軍楽隊 その0ゼロ 黒船の軍楽隊から薩摩バンドへ 

黒船の軍楽隊 その1 黒船とペリー来航
黒船の軍楽隊 その2 琉球王国訪問が先
黒船の軍楽隊 その3 半年前倒しで来航
黒船の軍楽隊 その4 歓迎夕食会の開催
黒船の軍楽隊 その5 オラトリオ「サウル」HWV 53 箱館での演奏会
黒船の軍楽隊 その6 下田上陸
黒船の軍楽隊 その7 下田そして那覇での音楽会開催
黒船の軍楽隊 その8  黒船絵巻 - 1
黒船の軍楽隊 その9  黒船絵巻 - 2
黒船の軍楽隊 その10 黒船絵巻 - 3
黒船の軍楽隊 その11 ペリー以外の記録 – 1 (阿蘭陀) 
黒船の軍楽隊 その12 ペリー以外の記録 – 2 (阿蘭陀の2) 
黒船の軍楽隊 その13 ペリー以外の記録 – 3 (魯西亜) 
黒船の軍楽隊 その14 ペリー以外の記録 – 4 (魯西亜の2) 
黒船の軍楽隊 その15 ペリー以外の記録 – 5 (魯西亜の3) 
黒船の軍楽隊 その16  ペリー以外の記録 – 6 (魯西亜の4)
黒船の軍楽隊      番外編 1 ロシアンホルンオーケストラ
黒船の軍楽隊      番外編 2 ヘ ン デ ル の 葬 送 行 進 曲
黒船の軍楽隊 その17  ペリー以外の記録  -7 (英吉利)
黒船の軍楽隊 その18  ペリー以外の記録  -8 (仏蘭西)
黒船の軍楽隊     番外編 3 ドラムスティック
黒船の軍楽隊 その19 黒船絵巻 - 4 夷人調練等之図


ファーイーストの記事

「ザ・ファー・イーストはジョン・レディー・ブラックが明治3年(1870)5月に横浜で創刊した英字新聞です。
 この新聞にはイギリス軍人フェントンが薩摩藩軍楽伝習生に吹奏楽を訓練することに関する記事が少なくても3回(4記事)掲載されました。日本吹奏楽事始めとされる内容で、必ずや満足いただける読み物になっていると確信いたしております。

 是非、お読みください。

「ザ・ファー・イースト」を読む その1   鐘楼そして薩摩バンド
「ザ・ファー・イースト」を読む その1-2  鐘楼 (しょうろう)
「ザ・ファー・イースト」を読む その2   薩摩バンドの初演奏
「ザ・ファー・イースト」を読む その3   山手公園の野外ステージ
「ザ・ファー・イースト」を読む その4   ファイフとその価格
「ザ・ファー・イースト」を読む その5   和暦と西暦、演奏曲
「ザ・ファー・イースト」を読む その6   バンドスタンド
「ザ・ファー・イースト」を読む その7   バンドスタンド2 、横浜地図

SATSUMA’S BAND 薩摩藩軍楽伝習生

writer HIRAIDE HISASHI

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