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知財のおはなし

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さまざまな知的財産の話題です。海外で事務所をやっているので、外国知財のことも多いです。
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2021年3月の記事一覧

日本の知財活用の事情

日本の知財活用の事情

日本では、それほど行われていないのですが、欧米では活発に、特許は売買されています。
特許売買のマーケットも、日本とアメリカを比べますと、数十倍以上の違いがあります。
これは、日本企業の特許権を利用するコンセプトが、欧米とは大きく異なっていたためです。
日本の特許の活用法は、主に社内の研究者の成果を査定するツールとして、長らく使われていました。

特殊な日本の知財活用企業は、多くの研究者を、実際の成

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弁理士資格よりも必要なもの

弁理士資格よりも必要なもの

一昔前は、知財の業界に入るのならば、弁理士の資格があるのと、ないのでは、大きくステータスや収入が違いました。
いまの知財業界を見てみると、弁理士の資格はどのようなメリットがあるでしょうか?
かつては、弁理士になると高収入が保証されていました。
東京の高額納税者に、毎年、弁理士が入っていたほどです。
弁理士会の定額報酬制が廃止されてから、弁理士報酬が激減しています、多分、ピークの半分くらいの報酬に落

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日本よりもカンタン?アメリカ特許の申請

日本よりもカンタン?アメリカ特許の申請

アメリカへ特許を申請するのって、ちょっと難しそうに思いませんか?
日本に申請するだけでも、大変そうなのに、アメリカなんて、ちょっと無理でしょ、って思っていませんか?
いえいえ、実は、日本へ申請して特許を取得することの方が難しいんですよね。
結構、アメリカ人は、簡単に特許を申請しています。
いろいろな制度的な優遇が、個人の発明者にあるんですね。
たとえば、大企業は申請費用を全額支払わなければいけませ

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成功報酬制の知財訴訟が普通になると良いな。

成功報酬制の知財訴訟が普通になると良いな。

知財訴訟では、成功報酬制で訴訟を行うことも可能です。
この点は、検討すべき課題だと思います。
一般的に、知財訴訟を起こそうとすると、裁判所へ支払う費用の他に、弁護士や弁理士へ支払う費用も必要になります。
多くの方たちが、知財訴訟に二の足を踏んでしまうのが、知財事件の特殊性もあるのですが、訴訟費用が高額なところもあると思います。

せっかく、知財を権利として取得しても、多くの人はそれで満足しているよ

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日本特許を超す中国特許の価値

僕は、特許の売買の仕事もしていますが、特許の価格を決めるのは、その国の侵害事件の損害賠償金の平均値です。
それと同時に、その国の知財の裁判制度にも影響を受けます。
つまり、特許を買う側からすると、損害賠償金が高くて、かつ、積極的な訴訟戦略が練りやすい国の特許が高額化します。

日本の特許は、この両方の要素を満たさないために、特許をとっても数十万円くらいの価値しかないケースがほとんどです。
つまり、

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日本、アメリカ、中国の特許制度を比較してみよう③

日本、アメリカ、中国の特許制度を比較してみよう③

本日は、比較シリーズの最終回で、拒絶理由応答の違い、拒絶理由通知の応答後の違いについて、説明したいと思います。

拒絶理由応答の違いまず、拒絶理由応答の違いについて、説明します。
日本では、引用文献の開示以外の情報が少ない傾向です。
審査官に確認するか、自分で解釈する必要があります。
ただし、ここ10年くらいで、すごく丁寧な拒絶理由も増えてきました。
かつて20年くらい前は、1行くらいの理由しかな

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日本、アメリカ、中国の特許制度を比較してみよう②

日本、アメリカ、中国の特許制度を比較してみよう②

今回の内容は、前回、法制度の違い、特許明細書作成時の違いについて、説明しました。

本日は、特許出願時の違い、特許出願後の違い、特許要件の違いについて、説明したいと思います。
時系列に説明していく感じですね。

特許出願時の違いまず、特許出願時の違いについて、説明します。
特許の出願時に、米国では発明者が会社などに特許を受ける権利を譲渡した場合には、譲渡証の提出が必要となります。
日本や中国では、

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日本、アメリカ、中国の特許制度を比較してみよう①

日本、アメリカ、中国の特許制度を比較してみよう①

日本、アメリカ、中国で、知財の法制度って、結構違いますよね。
時系列に、3つの国を比較しながら覚えるのが一番手っ取り早いと思います。

最早、日本の知財制度のみの知識では、足りない時代になってきました。
特許を出したい人は、日本の他に、外国でも出してみたいと思いますよね。

多くの方が、アメリカや中国で、特許を出したいと思うことが多いようです。
やっぱり、国全体のGDPや世界シェアの大きいところで

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中国のプロパテント政策が始まった!

中国のプロパテント政策が始まった!

中国は、いまプロパテント政策に踏み切ろうとしています。
この間、発表された2021年2月の習近平主席の「知的財産権保護活動の全面的な強化」の宣言により、中国のプロパテント政策の内容が明らかになりました。
これにより、日本よりも、さらに進んだ知財保護に、中国は向かおうとしています。

すさまじい今回の中国の知財の法改正知財保護の全面的な強化として、先ずは侵害に対する懲罰的な損害の賠償を認めることとな

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絶対に使おう!知財減免制度

絶対に使おう!知財減免制度

中小企業やベンチャー企業が、特許を出していくのは、費用的に大変だとよく耳にします。
最近、自治体の補助金の他に、特許庁もいくつかの特許庁に納付する料金を軽減する制度を開始しています。

多くの方が、2019年4⽉から始まっている、新たな中⼩企業の料⾦の軽減制度を知らないようです。
今回の減免制度は、かなりの軽減措置なので、活用しないと本当に損ですよね。
中⼩企業が、特許庁に納付いただく費用の内、

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どうなるミャンマー知財局!

どうなるミャンマー知財局!

ミャンマーの商標法は、2019年1月に成立しました。
しかし、その商標法の施行は、知財局の設立と同時になる方針でした。
これは、いまだに変わっていません。
そのため、問題となるのは、知財局の設立がいつになるかなのです。

せっかく始まった商標申請だがミャンマーの商標制度は、過去70年間、各地域ごとの登記所で登録されている商標を、各地域ごとに保護していました。
そのため、ミャンマー全体で保護を行う、

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弁理士って、なんだろう?

弁理士って、なんだろう?

弁理士って、ご存じですか?
知財の業界の国家試験です。
ほかの業界では、弁護士とか公認会計士とかいますよね、それと同じような資格なんです。

でも、あまり知らないですよね?
僕の父親も知りませんでした、「何で大学まで出したのに、便利屋になるんだ!」といきなり怒られました。
知財の業界って、すごいニッチで、皆さん知りませんよね、でもそういう資格があるんですよね。

知財の業界は、弁理士試験の他に、知

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成立しても施行されない、ミャンマー特許法の不運ふたたびか!

成立しても施行されない、ミャンマー特許法の不運ふたたびか!

ミャンマーの歴史は、まさに混迷の歴史です。
それは、ミャンマー特許法にも現われており、紆余曲折しています。

ミャンマーの混迷の歴史は、知財の歴史?ミャンマーでは、まずイギリス統治下の1914年に著作権法が施行されました。
その後に、第2次世界大戦後の混乱期から、1946年にミャンマーは独立しています。
当時では、東南アジアでは、最も豊かな国として、特許法と意匠法が成立しました。 
しかし、194

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特許を取ったら、それでもう安心していませんか?

特許を取ったら、それでもう安心していませんか?

今回は、特許を取られた方が、まず準備していただきたいことに、ついて説明します。
みなさん、特許を取ったら、それでもう安心していませんか?
やったー!特許が取れた!と喜ぶ気持ちはわかります、しかし、実は、これからが一番大事なのです。

まず、権利範囲の確認と、その特許に無効理由がないかの確認は、少し時間を掛けてでも、完璧にすべきです。
ご自分で権利を取った内容が、ちきんと相手の商品や技術をカバーして

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