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どうなるミャンマー知財局!

ミャンマーの商標法は、2019年1月に成立しました。
しかし、その商標法の施行は、知財局の設立と同時になる方針でした。
これは、いまだに変わっていません。
そのため、問題となるのは、知財局の設立がいつになるかなのです。

せっかく始まった商標申請だが

ミャンマーの商標制度は、過去70年間、各地域ごとの登記所で登録されている商標を、各地域ごとに保護していました。
そのため、ミャンマー全体で保護を行う、統一した制度はありませんでした。
それが、ようやく、ミャンマー登録法の下で、過去に登録所で登録している商標について、全国で保護ができるようになりました。
この登録は、過去に登録所で登録している商標や、実際にミャンマー国内で使われている商標が優先的に出願できることになっています。
まだ、一斉に、新規の商標出願は、受け付けていないために、我々は、このような対応を「ソフトオープン」と呼んでいます。

それが、果たして、2021年2月に起こった国軍によるクーデター後に、どうなるかが問題になっています。
このような中で、ミャンマーの知財局は、設立されるのかが、わからなくなってきました。

70年もの間、実際には施行されなかった過去も

ミャンマーの国軍も、外国投資を無くすわけにはいかないし、外交や行政の体制は維持されるのではないの、と思う方も多いと思います。
実際に、国軍の総司令官が行った施政方針演説では、外交、行政、経済政策の方針は、そのまま継続されることが明言されました。

しかし、ミャンマーは、知財の法律が成立されたにもかかわらず、70年もの間、実際には施行されなかった過去があります。
前回の知財の法律が成立した翌年の1947年に、アウンサン将軍が暗殺されました。
その後、ようやく2019年に、再度の知財の法律が設立しました。
今回は、成立した知財の法律が、ふたたび施行されずに終わってしまうかもしれない、2度目の危機です。

果たして、知財局はちゃんとできるのか?

実際に、知財中央員会のメンバーは、大幅に変更されている状況です。
これは、軍政の下でも、知財局の設立に向けた動きであるものと思います。
ミャンマーは、この知財中央員会を最高意思決定機関として、その下に副大臣をトップとする知財機関が設置され、審判請求などの実務を行います。
そして、その知財機関の下に、知財局が設置されて、実際の審査実務を行います。
本当であれば、2020年の12月に知財局ができる予定でいましたが、まだ、知財機関も知財局もできていません。

ミャンマーの商標法は、2019年1月に成立しました。
しかし、その商標法の施行は、知財局の設立と同時になる方針でした。
これは、いまだに変わっていません。
現状の情勢下では、知財局の設立がいつになるか、まったく不透明な状況になってしまいました。

オンライン出願受け付けはできるのだが

本来、2020年の10月から、商標申請のソフトオープンが始まり、これが6か月続くことになっていました。
このソフトオープンの間に、過去の制度下で、各地の登録所で個別に登録していた人や、すでにミャンマーで商標を使用している人たちは、優先的に商標申請できるはずでした。
これらのスケジュールは、いったいどうなってしまうんでしょうか?

現在、知財局へのオンライン出願受け付けは、継続されています。
また、従来の地域ごとの商標登録は、実際の登記所などは、デモで閉鎖されていますが、新聞などでの商標の使用に対する警告通知は行えます。
新法の商標申請に関して言えば、料金や代理人が必要な書類などについて、どのようなプロセスで決められるかがわからない状況です。
また、新しい商標の法律は成立しているのですが、それを施行する規則などが決まっておらず、アナウンスもされていません。

本来であれば、知財局が設立され、施行規則が決まり、商標審査が開始される、いわゆるグランドオープンが、すでに開始されるはずでした。
つまり、現状では、実体のない、知財局に対して、オンラインで申請ができるだけで、その後のことは、何も決まっていないのです。

サイバー攻撃が頻発!

オンラインで申請ができるのであれば、まずは申請だけしておいて、その後に具体的なプロセスが決まってから対応すれば良いんじゃないの、と思うかもしれません。
しかし、ミャンマー国軍に対して、サイバー攻撃が頻発しており、政府のサーバーも深刻な被害を受けていることがわかっています。
つまり、知財局に対して、オンラインで申請した内容が果たして無事なのかもわからないのが、現在の状況です。

まだ、知財中央委員会のメンバーを再度、選定中で、その後に、知財機関、そして、知財局という、長い長いプロセスが、先に控えています。
すでに、ミャンマーに進出して、商品を製造しても、ミャンマー国内で、その商品名が果たして使えるかどうか、この先もしばらくわからない状況が続きそうです。

ニセモノ品の流通が増加?

僕の経験からすると、このような好機を、ニセモノ品業者が見逃すとは思えません。
ただでさえ、ミャンマー国内では、ニセモノ品が大量に流通しています。
ミャンマー消費者も、ニセモノ品であっても、見かけや機能が満足できれば、気にしないという意識調査もでています。

そのため、タイやベトナムのように、本物品よりもニセモノ品の方が圧倒的にシェアをとってしまう恐れが大いにあると思います。
本来であれば、知財機関の下に、摘発や権利侵害に対する法的措置がとれる部門ができるはずでしたが、まだ知財機関自体が出来上がっていません。
このような、市場環境が、今後の日本企業の現地ビジネスに多大な影響を与えるのではないかと心配しています。

本来、2020年の10月から、ミャンマーでは、商標申請のソフトオープンが始まり、そして、すべての新規の申請を受け付ける、グランドオープンが始まっているはずでした。
このスケジュールを信じて、これまで日本企業は投資を進め、ミャンマー国内でのマーケットを狙ってきました。
これらのスケジュールは、いったいどうなってしまうんでしょうか?
今後の情勢を見守りたいと思います。



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