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日本、アメリカ、中国の特許制度を比較してみよう②

今回の内容は、前回、法制度の違い、特許明細書作成時の違いについて、説明しました。

本日は、特許出願時の違い、特許出願後の違い、特許要件の違いについて、説明したいと思います。
時系列に説明していく感じですね。

特許出願時の違い

まず、特許出願時の違いについて、説明します。
特許の出願時に、米国では発明者が会社などに特許を受ける権利を譲渡した場合には、譲渡証の提出が必要となります。
日本や中国では、譲渡証の提出義務はありませんので、特別のことがない限り、譲渡証を提出することはありません。

アメリカのグレースピリオド並み?

また、新規性喪失の例外についてですが、米国は、グレースピリオドという考え方で、出願前1年間の間であれば、何をしてもOK です(35 U.S.C. 102(b)(1)(A)/(B))。

日本は2011年の改正で、要件が緩和され、特許を受ける権利を有する者の行為に 起因する新規性喪失行為を、幅広くカバーされるようになりました。
新規性を喪失する行為から半年間だったんですが、これも2018年に改正されて、1年以内に出願すればOKになりました。

かなり、アメリカのグレースピリオドに近づいてきました。
中国は、 国際展覧会による展示(中国専利法24条1項1号)、学術会議等による発表(中国専利法24条1項2号)、意に反する公 知(中国専利法24条1項3号)が規定されています。

新規性を喪失する行為から半年間に出願する必要があります。
日本法は、試験による公知・刊行物による発表、あるいは、電気通信回線による発表は、適用内で、中国よりも適用範囲が広いと言えます。
つまり、新規性喪失の例外については、米国、日本、中国の順に適用範囲が広いと言えます。

特許出願後の違い、ユーザー・アンフレンドリーな日本

さらに、特許出願後の違いについて、説明します。
日本は、 出願日から3年経過までに審査請求する必要があります。
誰でも審査請求出来ます(日本特許法48条の3)。
これに対して、米国は、 審査請求制度がそもそもありません。
総ての特許出願について実体審査が行われます。中国では、優先日から3年経過までに審査請求(中国専利法35条)をしなければなりません。
審査請求は出願人のみが出来ることになっています。

この審査請求を期間内にしないと、日本では、 取り下げと見なされてしまいます。
復活させる方法はありません。
中国も、同様に取り下げ擬制の考えは同じですが、復活させる方法はあります (中国専利法実施細則6条)。
まあ、日本では、出願内容は公開されているので、取り下げ擬制になっても、 第三者の権利化は阻止出来るということで、多くの出願は審査請求されずに、取り下げと見なされています。

この点で、本当に、日本の考え方が良くわかりますよね、ユーザー・アンフレンドリーですよね。

日本は早期審査大国

続いて、早期に審査を行う制度ですが、日本では、法令上の規定はありませんが、早期審査制度が設けられています。
さらに、優先審査制度(日本特許法48条の6)も設立されています。
日本の早期審査は、運用を開始した2000年ころは、それほど活用されていませんでしたが、いまや、利用実績は年間2万件を超えています。

米国には、早期審査(37 CFR 1.102)および優先審査制度(2011年改正)が設けられています。
中国にも、 早期審査などに相当する制度あります (中国専利法審査指南第2部分第8章3.4.2)。

ペナルティが尋常でないアメリカ

そして、情報開示義務について、比べてみます。
日本では、明細書に先行技術文献を開示する要件があります。
米国では、情報開示義務(IDS制度 37 CFR 1.56)が、特許登録されるまで課せられています。

この制度は、条件が厳しい上、違反した場合に、不公正な行為または詐欺(Fraud)として、権利行使不能状態に 陥るので要注意です。
中国では、情報提供義務(中国専利法36条1項)で、出願日以前に おけるその発明に関係する参考資料の提出義務があります。
ただし、 罰則が明確ではありません。

また、外国出願の場合、国務院特許行政部門が、外国の審 査結果資料の提出を要求する制度もあります(中国専利法36条2項)。
この要求に応えないと、取り下げ擬制になります。

特許要件の違い

次に、特許要件の違いについて、説明します。
まず、新規性ですが、日本は、世界公知・公用(日本特許法29条)なんですが、米国は 2011年改正で(35 U.S.C. 102)、中国は、2009年改正で(中国専利法22条)、世界公知・公用になりました。

そして、非常に重要な特許要件である、進歩性なのですが、日米中で比べますと、日本は相当厳しく、米国は、最近、厳しくなりつつあると言えます。
日本と拒絶理由の引例が同じでないことが、米国の場合は多いです。
審査官の認定が、米国の場合は、結構、ばらつきが大きいんですよね。

中国も、最近、厳しくなりつつあります。
特に欧州出願がある場合、欧州出願が特許されるまで、中国出願は特許されない傾向があります。

これは、豪州特許庁が、米国出願がある場合、米国出願が特許されるまで、豪州出願は特許されない傾向があるのと似てますね。
こういった点も、踏まえたうえで、多国出願を考えていかなくてはなりません。



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