北川 俊 / shun kitagawa

MEME Editor

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記事一覧

技術は思想を伝達する道具にすぎないことを忘れたくない

マクドナルドのポテト割引キャンペーンのCMにAI生成動画が起用され、炎上した。コメントの多くは、AIによって人間の仕事を奪われることへの恐れによる批判だった。相変わら…

他人を自分の所有物だと思ってる奴みんなイモータン・ジョー

「久しぶり!何気に卒業式ぶり?よくインスタで何か作ってるの見るけど、最近なにしてるの?」 「おお、久しぶり!アニメで父権社会ぶっ壊したいんだよね」 同窓会でそんな…

3DCGアニメシリーズ『終末映写俱楽部』企画書

【概要】<タイトル> 『終末映写倶楽部』 副題:“THE COSMOWIDE SPECULATIVE FICTION” 英題:Frozen Archive <あらすじ> 人類の絶滅に一役買ったのは、突然の大氷…

エッセイコンペに出し損ねた文章

#あの選択をしたから 留学で得たもの: ・英語 ・おもちゃ ・夢を語り合える国を越えた友人 ・一度に家族、パートナー、お金を失って養った精神 ・新興宗教やってるやつの…

『色彩休暇』 最終話 モノクロの輪郭

切間ひとつない曇天の県道。 新菜の母が運転するセリカの助手席で絵を描いている新菜。 新菜が母の顔を覗くと同時に色彩休暇が起こり、 その瞬間運転席側に車が追突。 エア…

『色彩休暇』 #8 群青のカラートップ

「一度も使ったことなかったですけど、無くなったら無くなったでなんかちょっと寂しいかもですね」 学校教育での水泳の授業が正式に廃止になって以降、 4年間の放置を経て…

『色彩休暇』 #7 白銀の瞳孔

財布も定期券も持っていなかったのに、 どうやって家に帰ったかすら覚えていない。 自分が帰宅したことをやっと自覚したのは、シャワーの水に流される、 わずかな血が脚を…

『色彩休暇』 #6 漆黒のバブル

私と新菜は駐車場に車を止め、 ただ黙々と静寂が馴染みきった住宅街を進む。 住みやすそうな場所だね、家までは歩いてどのくらいなの、など、 この沈黙を埋める他愛もない…

『色彩休暇』 #5 青緑のミニディスク

小雨が降る中、 立花と新菜を乗せたホワイトのセリカ GT-FOURは山手通りを走る。 ごっそりと剥がれ落ちた「CELICA GT-FOUR」のデカール、 ハンドルは錆び、フロントシート…

『色彩休暇』 #4 RE-COLORED

AIに人間が仕事を奪われるかもしれないという恐怖は、 もう何十年も前からフィクションによって散々と描かれてきた。 自分の仕事が取って代わられ得るものなのか、十分に考…

『色彩休暇』 #3 警告色の節足動物

立花が勤務する大手ゲーム会社「株式会社ビヨンド」。 その最上階に位置する第一開発室の中央には、内側に湾曲した8本の柱が円形に設置された装置が設置されている。 隣接…

『色彩休暇』 #2 橙色の瞳孔

朝起きたらまずカーテンを開けて日光を浴びましょう、なんて地上波の健康番組を流していたらよく聞くが、大通りに面したアパート2階に住んでいる私がそんなことをすれば、…

『色彩休暇』 #1 桃色のフィクション

「君のその想像力は、いつかきっと命取りになる」 8ビットの電子音、ステンレス硬貨の摩擦音、隣のおやじの咀嚼音。 それらの騒音をいともたやすく潜り抜けて私の頭に響き…

『架空』 あらすじ #ジャンププラス原作大賞 #連載部門

幼少期に父親の暴力によって、見えない"糸"で空を架ける能力「架空」を発症した映画ヲタクの女子高校生シノアミ。 ある日街中でナンパ男に手を掴まれたことをきっかけに、…

『架空』〈第3話〉架空-Fictionalized Monorail-

東京には、映画を観る以外に用はない。 ましてはわざわざ休日に人混みを浴びることは、 シノにとって生活の質を著しく低下させることだと確信している。 17:45開始という中…

『架空』<第2話>内心-Inside Gossip-

校庭に無造作に生えた雑草は、まるで地球で際限なく繁殖する我々人間のようだ。黙々とそれらをむしり取る清掃服に身を包んだ彼女らは、人間を粛清するウィルスに似ている。…

技術は思想を伝達する道具にすぎないことを忘れたくない

マクドナルドのポテト割引キャンペーンのCMにAI生成動画が起用され、炎上した。コメントの多くは、AIによって人間の仕事を奪われることへの恐れによる批判だった。相変わらずX(Twitter)はおしまいだ、と思いながらWebページのタブを移動し、"ジェネレート"ボタンを押す。数秒待つと空白だった画面に、公園で中年女性が縄跳びをしている画像が4枚並んだ。AIで仕事増えたな、と脳内で呟いた自分は、批判コメ

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他人を自分の所有物だと思ってる奴みんなイモータン・ジョー

「久しぶり!何気に卒業式ぶり?よくインスタで何か作ってるの見るけど、最近なにしてるの?」
「おお、久しぶり!アニメで父権社会ぶっ壊したいんだよね」
同窓会でそんなことを軽はずみに発言すれば、なに言ってんの?、政治的な発言やめてよ、などと返答が返ってくることは容易に想像がつくので自粛すべきだが、正直そんな配慮している時代はコロナ禍と共に終わった。
 長年の父親の度重なる不貞行為によって両親が事実的な

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3DCGアニメシリーズ『終末映写俱楽部』企画書

3DCGアニメシリーズ『終末映写俱楽部』企画書

【概要】<タイトル>

『終末映写倶楽部』
副題:“THE COSMOWIDE SPECULATIVE FICTION”
英題:Frozen Archive

<あらすじ>

人類の絶滅に一役買ったのは、突然の大氷河期だった。
それから時が流れ、地球に新たな生命体が降り立つ。
冷凍保存された文明の跡をオマージュし、それらは瞬く間に都市「ディンナム」を築いた。
アカデミーに転校したハスイは、そこで「

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エッセイコンペに出し損ねた文章

#あの選択をしたから

留学で得たもの:
・英語
・おもちゃ
・夢を語り合える国を越えた友人
・一度に家族、パートナー、お金を失って養った精神
・新興宗教やってるやつの見分け方

留学で失ったもの:
・お金
・自分を棚に上げて子ども扱いしてくるヲタク
・トランクの中におもちゃスペースを確保するための衣服

(2018年12月10日投稿 自身のInstagram ストーリーズより)

なにかを得れば

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『色彩休暇』 最終話 モノクロの輪郭

『色彩休暇』 最終話 モノクロの輪郭

切間ひとつない曇天の県道。
新菜の母が運転するセリカの助手席で絵を描いている新菜。
新菜が母の顔を覗くと同時に色彩休暇が起こり、
その瞬間運転席側に車が追突。
エアバッグが作動し、新菜の絵が外に放り出される。
新菜の視界が暗闇に包まれる。

辺り一面モノクロの世界、一本の道路の上で寝そべる新菜の母。
その背後では、大きな炎を上げて軽トラックが炎上している。
逆さに転がったセリカの助手席に、
シート

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『色彩休暇』 #8 群青のカラートップ

「一度も使ったことなかったですけど、無くなったら無くなったでなんかちょっと寂しいかもですね」
学校教育での水泳の授業が正式に廃止になって以降、
4年間の放置を経てようやくプールの取り壊しの話が持ち上がった。
使用されることのなかったプールの底には、
地球の表面にコンクリートの突起を積み上げる人間のごとく、
我が物顔でひたすらに生しまくった苔が広がっている。

「まあいいんじゃない?あっても臭いだけ

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『色彩休暇』 #7 白銀の瞳孔

財布も定期券も持っていなかったのに、
どうやって家に帰ったかすら覚えていない。
自分が帰宅したことをやっと自覚したのは、シャワーの水に流される、
わずかな血が脚を伝っていくのを眺めている時だった。
私は濡れた髪のまま、眼帯を薬局のビニール袋から取り出す。
実原先輩との再会と別れ、あの空間で起こった全てが現実であることは、
玄関を開けるまでずっと握りしめていた
このフィルムロールが証明している。

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『色彩休暇』 #6 漆黒のバブル

私と新菜は駐車場に車を止め、
ただ黙々と静寂が馴染みきった住宅街を進む。
住みやすそうな場所だね、家までは歩いてどのくらいなの、など、
この沈黙を埋める他愛もない話題を振ることはできたはずだ。
しかし彼女の綺麗に伸び切った背中は、
そんな沈黙など微塵も気にも留めていないように見えた。
中野駅から程近い住宅街に位置する3階建てのマンション。
キッチンが備え付けられた廊下を抜けた先にある6畳ほどの洋室

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『色彩休暇』 #5 青緑のミニディスク

小雨が降る中、
立花と新菜を乗せたホワイトのセリカ GT-FOURは山手通りを走る。
ごっそりと剥がれ落ちた「CELICA GT-FOUR」のデカール、
ハンドルは錆び、フロントシートには一部穴が開いているが、
こんな”アンティーク”が今もなんとか走行が可能であることから、
新菜のこの車への愛着が感じられる。
他人の車であることに加え、
自動車教習所でしか扱った事のないマニュアル車の圧力が、
立花

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『色彩休暇』 #4 RE-COLORED

AIに人間が仕事を奪われるかもしれないという恐怖は、
もう何十年も前からフィクションによって散々と描かれてきた。
自分の仕事が取って代わられ得るものなのか、十分に考える時間はあったはずだ。しかし、ここ近年の技術革新と大衆化のスピードに追いつけない隣のデスクに座る上司という立場のこの男性は、ソーシャルメディアからコピペして繋ぎ合わせたかのような文章で、私に”説明”を垂れる。
人類は”分からない”に対

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『色彩休暇』 #3 警告色の節足動物

立花が勤務する大手ゲーム会社「株式会社ビヨンド」。
その最上階に位置する第一開発室の中央には、内側に湾曲した8本の柱が円形に設置された装置が設置されている。
隣接した小柄な操作パネルの電源を入れ、それを起動する実原。
ネックレスを外し、パネルの中央から伸びる台座上で浮遊する。
「実原くん珍しいですね、残業ですか」
語尾が少し擦れる、低めのその声にハッとして振り向く実原。
ダークネイビーのセットアッ

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『色彩休暇』 #2 橙色の瞳孔

朝起きたらまずカーテンを開けて日光を浴びましょう、なんて地上波の健康番組を流していたらよく聞くが、大通りに面したアパート2階に住んでいる私がそんなことをすれば、間抜けな寝ぼけ面を近隣住民に晒すことになってしまう。節約術やら下町紹介やら、一見庶民に受け入れられ易いように構成されたテレビ番組から流れる情報には、時折自分がそれを享受できる環境からすらも溢れていることを実感させられる。
そんな皮肉をつらつ

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『色彩休暇』 #1 桃色のフィクション

『色彩休暇』 #1 桃色のフィクション

「君のその想像力は、いつかきっと命取りになる」
8ビットの電子音、ステンレス硬貨の摩擦音、隣のおやじの咀嚼音。
それらの騒音をいともたやすく潜り抜けて私の頭に響き続ける、
言葉の形をしたこれまた騒音。
西新宿にビルを構える本社に異動になって約半年、
退勤後に巣鴨駅の側に位置するアーケードゲーム専門ゲームセンターの地下一階でお金を溶かし、技術を得る。このなんとも単純なリスクとリターンに浸ることが、も

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『架空』 あらすじ #ジャンププラス原作大賞 #連載部門

『架空』 あらすじ #ジャンププラス原作大賞 #連載部門

幼少期に父親の暴力によって、見えない"糸"で空を架ける能力「架空」を発症した映画ヲタクの女子高校生シノアミ。
ある日街中でナンパ男に手を掴まれたことをきっかけに、その能力が暴走してしまう。彼女の能力とその過去について知る幼馴染のタキヤは、とある提案を持ちかける。それは、この世界のすべての害悪な男性達の"社会的去勢"だった。
#ジャンププラス原作大賞 #連載部門

『架空』〈第3話〉架空-Fictionalized Monorail-

『架空』〈第3話〉架空-Fictionalized Monorail-

東京には、映画を観る以外に用はない。
ましてはわざわざ休日に人混みを浴びることは、
シノにとって生活の質を著しく低下させることだと確信している。
17:45開始という中途半端な上映スケジュールに微々たる苛立ちを覚えながらも、新宿のむさ苦しさはそれを表情筋の裏に隠すことを許さない。

自然と眉間に皺が寄り、早足になる。
「東京は空気が汚いから鼻毛が伸びる」
なんてタキヤの冗談を不意に思い出した。

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『架空』<第2話>内心-Inside Gossip-

『架空』<第2話>内心-Inside Gossip-

校庭に無造作に生えた雑草は、まるで地球で際限なく繁殖する我々人間のようだ。黙々とそれらをむしり取る清掃服に身を包んだ彼女らは、人間を粛清するウィルスに似ている。

「お前ら"内進"は勉強ばっかしてるから体力が足りねんだよなあ。
男子はもっと目も当てられないんだけどさ」
仁王立ちしたこの長身の中年男性は、温暖化真っ最中であることをアピールするかのようなこの炎天下でも、少しでも目の前のショートパンツ姿

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