『色彩休暇』 #7 白銀の瞳孔
財布も定期券も持っていなかったのに、
どうやって家に帰ったかすら覚えていない。
自分が帰宅したことをやっと自覚したのは、シャワーの水に流される、
わずかな血が脚を伝っていくのを眺めている時だった。
私は濡れた髪のまま、眼帯を薬局のビニール袋から取り出す。
実原先輩との再会と別れ、あの空間で起こった全てが現実であることは、
玄関を開けるまでずっと握りしめていた
このフィルムロールが証明している。
ガコン。
一瞬にして私は、足元も見えぬほどの暗闇に包まれた。
部屋を唯一照らしてい