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旧統一教会/家庭連合問題をまとめる

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安倍晋三元首相暗殺を契機にした旧統一教会/家庭連合をめぐる問題について取材と調査を踏まえた報告と論考をまとめました。
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記事一覧

精神勝利法、配信世代、みんなすごいキレイだよ!があきらかにしたバズり幻想について

精神勝利法、配信世代、みんなすごいキレイだよ!があきらかにしたバズり幻想について

私は原発事故後に首都圏から自主避難した母子の困窮問題に関わり、その後旧統一教会追及問題でも教団や信者、信仰を継承しなかった子弟から直接事情を聞いてきた。直近では、神宮外苑再開発反対運動のデマ体質を問うた。これらの活動から「扇動の循環構造」や、「虚像」を生み出す「メディア世論」の弊害を明らかにしてきたが、ある種の人たちが情報操作でいとも簡単に騙されて扇動の渦に飲み込まれるのが不思議でならなかった。

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「反統一教会」勢とは何者だったのか

「反統一教会」勢とは何者だったのか

追記 / 2024.6.30 15:30 誤記など訂正

加藤文宏

1 今回は本題に入る前に、そもそもの本質に関わる重要な話をしなくてはならなくなった。
 6月26日、アメリカ合衆国政府の公式サイトに『各国の信教の自由に関する2023年版年次報告書』が掲載された。同報告書の「日本」に関する部分は、ほぼ統一教会(家庭連合)への解散命令請求を問うことに費やされ、岸田政権が法治ではなく政治を優先してい

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暗殺犯山上の新証言が事件と統一教会追及を振り出しに戻した

暗殺犯山上の新証言が事件と統一教会追及を振り出しに戻した

加藤文宏

1 6月19日、安倍晋三元首相暗殺事件で起訴されている山上徹也に対して、精神鑑定で「完全責任能力」があるとする結果が出た。2日後の6月21日、山上が「現在のような状況を引き起こすとは思っていなかった」と語ったと報道された。「(宗教)2世の人たちにとって良かったのか悪かったのか分からない」とも言ったそうだ。
 山上の新証言は、彼の弁護団が言うように「明確な真意を確認できない」が、彼にとっ

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モラル・パニック現象を操る人々

モラル・パニック現象を操る人々

ゲーム脳や携帯電話を巡る騒ぎを思い出そう。「モラル・パニック」によって世の中が流され、できごとの本質が忘れ去られただけでなく、新たな敵がつくられて社会が分断された。

加藤文宏

モラル・パニックとは何か

アベの悪魔化に限りがなかった理由を考える

アベの悪魔化に限りがなかった理由を考える

加藤文宏

はじめに 「アベ政治を許さない」はともかく「アベしね」とまで言われ、共産党の赤旗まつりではマーチングドラムに顔写真を貼られて叩かれたのが故安倍晋三氏だ。なぜ、ここまでされなければならなかったのか。
 60年安保闘争を敗北させた岸信介の孫であり、改憲への熱意が強い総理大臣であったことが要因として大きく、最年少で首相になり、後に歴代最長の在任期間を誇ったことで、ある界隈の人々にとって実に憎

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名誉毀損 カルトのレッテル貼りに判決が出た

名誉毀損 カルトのレッテル貼りに判決が出た

加藤文宏

カルトのレッテル貼りは名誉毀損 カルトはキリスト教における分派を表す「セクト」とほぼ同じ意味の言葉だが、宗教用語にとどまらない否定的な色彩を与えられた蔑称だ。こうした否定的な意味合いから、マニアックな狂信ぶりをカルトと呼び、専門性が高いことや世の中の風潮と一線を画す点を自画自賛するときも使われるようになった。
 だが自称はともかく、他者への決めつけはモラルに抵触するだけでなく、違法性が

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報道は何を意図して何を伝えたのか◇統一教会追及報道をデータで振り返る

報道は何を意図して何を伝えたのか◇統一教会追及報道をデータで振り返る

加藤文宏

本稿は、2024年1月20日に開催されたシンポジウム[報道はなぜ「暴走」したのか ジャーナリストによる徹底検証「旧統一教会報道」]から、加藤の発表(書き起こし)を全図版とともに紹介する。
誤記などがあった場合、内容を更新する場合があります。

統一教会報道が伝えたもの

統一教会報道が伝えたもの


はじめに あるプロジェクトが動きはじめ、あらためて統一教会追及報道について調べることになった。自分自身に課したテーマは「定量的検証」。つまり数値データで統一教会追及報道を読み解くのだ。
 報道は言葉で組み立てられている。このため報道への批評は、報道された言葉を読んで「解釈」したうえで行うものとされてきた。しかし、これでは客観的であろうと努めても主観を排除しきれない。報道への批評を批評する者も主観

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社会運動がつくりだした被害者たち 原発事故から宗教、J事務所まで

社会運動がつくりだした被害者たち 原発事故から宗教、J事務所まで

取材・論考・タイトル写真
加藤文宏

はじめに ALPS処理水で騒いで終わったかと思えば、次はあきたこまちR──こんな話を、騒動の構造をあきらかにしながら論考しようと思う。

彼らは被害者なのか 原発事故に際して首都圏が不安におののき、瓦礫処理では地方都市でも騒がしい動きがあった。
 日本中が動揺していた10余年前、ふと思った。原発事故にまつわるできごとの「真の被害者」は誰だろうか。
 首都圏は放

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伝統宗教の聖職者まで怯える 内心の自由を軽々とつぶす もの言えぬ時代の到来

伝統宗教の聖職者まで怯える 内心の自由を軽々とつぶす もの言えぬ時代の到来


はじめに 「怖いから、何も言いたくない」と言う人がいます。
 月額版「筋道のタテツケ通信」の第4回は、第3回で整理した「『根拠』がない不安をでっちあげる大衆扇動」がもたらすものを考えます。
 発端は旧統一教会をめぐるできごとですが、より幅広く社会で何が起こっているかあきらかにするのが当記事の目的です。
 日本社会が「統一教会は悪いに決まっているではないか。自民党はズブズブではないか」と一色に染ま

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エビデンスで殴られている から 「買ってはいけない」へ。さらにおしどりマコと鈴木エイトへ。

エビデンスで殴られている から 「買ってはいけない」へ。さらにおしどりマコと鈴木エイトへ。


はじめに 朝日新聞が[「エビデンス」がないと駄目ですか? 数値がすくい取れない真理とは]と問いかける記事を掲載して、「エビデンスで殴られている」と書きました。
 エビデンスとは「根拠」「証拠」なので、根拠のない主張をして訂正されたり批判されるのを「殴られる」と表現したことになります。そして同記事では、福島第一原発からの処理水放出が例として挙げられました。
 私は自主避難者問題と事故直後からかかわ

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濃淡論の見せしめに怯える世界へようこそ

濃淡論の見せしめに怯える世界へようこそ

加藤文宏

濃淡論とは ここで濃淡論と名付けたものは、紀藤正樹弁護士が提唱する、旧統一教会/現家庭連合をめぐる善悪判定基準だ。教団との関係性が濃ければ悪質で糾弾されなくてはならず、薄ければ不注意であるから許される基準と言い換えてもよいだろう。
 もちろん特定の宗教団体または信者と政党や政治家が交流、交際してはならないとする法はないので、濃淡だけでなく悪質かどうかも紀藤独自の価値観に基づく意見にすぎ

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党員の子として生まれて──共産党二世が見た暗殺事件からの悲喜劇

党員の子として生まれて──共産党二世が見た暗殺事件からの悲喜劇


はじめに 月額版「筋道のタテツケ通信」の第2回です。今回は第1回に収録できなかった過去の取材をもとにした記事です。
 関東在住の角田さん(仮名)は共産党員の家庭に生まれた、いわゆる共産党二世の男性です。角田さんに誘われて実家を訪ねると、塀に樹脂板が吊り下げられていて共産党のポスターが3枚貼られていました。どの地域、どの住宅街にもありがちな党員家庭に見えます。
 しかし党員ではない角田さんには、安

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