マガジンのカバー画像

旧統一教会/家庭連合問題をまとめる

28
安倍晋三元首相暗殺を契機にした旧統一教会/家庭連合をめぐる問題について取材と調査を踏まえた報告と論考をまとめました。
運営しているクリエイター

記事一覧

アベの悪魔化に限りがなかった理由を考える

アベの悪魔化に限りがなかった理由を考える

加藤文宏

はじめに 「アベ政治を許さない」はともかく「アベしね」とまで言われ、共産党の赤旗まつりではマーチングドラムに顔写真を貼られて叩かれたのが故安倍晋三氏だ。なぜ、ここまでされなければならなかったのか。
 60年安保闘争を敗北させた岸信介の孫であり、改憲への熱意が強い総理大臣であったことが要因として大きく、最年少で首相になり、後に歴代最長の在任期間を誇ったことで、ある界隈の人々にとって実に憎

もっとみる
名誉毀損 カルトのレッテル貼りに判決が出た

名誉毀損 カルトのレッテル貼りに判決が出た

加藤文宏

カルトのレッテル貼りは名誉毀損 カルトはキリスト教における分派を表す「セクト」とほぼ同じ意味の言葉だが、宗教用語にとどまらない否定的な色彩を与えられた蔑称だ。こうした否定的な意味合いから、マニアックな狂信ぶりをカルトと呼び、専門性が高いことや世の中の風潮と一線を画す点を自画自賛するときも使われるようになった。
 だが自称はともかく、他者への決めつけはモラルに抵触するだけでなく、違法性が

もっとみる
報道は何を意図して何を伝えたのか◇統一教会追及報道をデータで振り返る

報道は何を意図して何を伝えたのか◇統一教会追及報道をデータで振り返る

加藤文宏

本稿は、2024年1月20日に開催されたシンポジウム[報道はなぜ「暴走」したのか ジャーナリストによる徹底検証「旧統一教会報道」]から、加藤の発表(書き起こし)を全図版とともに紹介する。
誤記などがあった場合、内容を更新する場合があります。

統一教会報道が伝えたもの

統一教会報道が伝えたもの


はじめに あるプロジェクトが動きはじめ、あらためて統一教会追及報道について調べることになった。自分自身に課したテーマは「定量的検証」。つまり数値データで統一教会追及報道を読み解くのだ。
 報道は言葉で組み立てられている。このため報道への批評は、報道された言葉を読んで「解釈」したうえで行うものとされてきた。しかし、これでは客観的であろうと努めても主観を排除しきれない。報道への批評を批評する者も主観

もっとみる
社会運動がつくりだした被害者たち 原発事故から宗教、J事務所まで

社会運動がつくりだした被害者たち 原発事故から宗教、J事務所まで

取材・論考・タイトル写真
加藤文宏

はじめに ALPS処理水で騒いで終わったかと思えば、次はあきたこまちR──こんな話を、騒動の構造をあきらかにしながら論考しようと思う。

彼らは被害者なのか 原発事故に際して首都圏が不安におののき、瓦礫処理では地方都市でも騒がしい動きがあった。
 日本中が動揺していた10余年前、ふと思った。原発事故にまつわるできごとの「真の被害者」は誰だろうか。
 首都圏は放

もっとみる
伝統宗教の聖職者まで怯える 内心の自由を軽々とつぶす もの言えぬ時代の到来

伝統宗教の聖職者まで怯える 内心の自由を軽々とつぶす もの言えぬ時代の到来


はじめに 「怖いから、何も言いたくない」と言う人がいます。
 月額版「筋道のタテツケ通信」の第4回は、第3回で整理した「『根拠』がない不安をでっちあげる大衆扇動」がもたらすものを考えます。
 発端は旧統一教会をめぐるできごとですが、より幅広く社会で何が起こっているかあきらかにするのが当記事の目的です。
 日本社会が「統一教会は悪いに決まっているではないか。自民党はズブズブではないか」と一色に染ま

もっとみる
エビデンスで殴られている から 「買ってはいけない」へ。さらにおしどりマコと鈴木エイトへ。

エビデンスで殴られている から 「買ってはいけない」へ。さらにおしどりマコと鈴木エイトへ。


はじめに 朝日新聞が[「エビデンス」がないと駄目ですか? 数値がすくい取れない真理とは]と問いかける記事を掲載して、「エビデンスで殴られている」と書きました。
 エビデンスとは「根拠」「証拠」なので、根拠のない主張をして訂正されたり批判されるのを「殴られる」と表現したことになります。そして同記事では、福島第一原発からの処理水放出が例として挙げられました。
 私は自主避難者問題と事故直後からかかわ

もっとみる
濃淡論の見せしめに怯える世界へようこそ

濃淡論の見せしめに怯える世界へようこそ

加藤文宏

濃淡論とは ここで濃淡論と名付けたものは、紀藤正樹弁護士が提唱する、旧統一教会/現家庭連合をめぐる善悪判定基準だ。教団との関係性が濃ければ悪質で糾弾されなくてはならず、薄ければ不注意であるから許される基準と言い換えてもよいだろう。
 もちろん特定の宗教団体または信者と政党や政治家が交流、交際してはならないとする法はないので、濃淡だけでなく悪質かどうかも紀藤独自の価値観に基づく意見にすぎ

もっとみる
党員の子として生まれて──共産党二世が見た暗殺事件からの悲喜劇

党員の子として生まれて──共産党二世が見た暗殺事件からの悲喜劇


はじめに 月額版「筋道のタテツケ通信」の第2回です。今回は第1回に収録できなかった過去の取材をもとにした記事です。
 関東在住の角田さん(仮名)は共産党員の家庭に生まれた、いわゆる共産党二世の男性です。角田さんに誘われて実家を訪ねると、塀に樹脂板が吊り下げられていて共産党のポスターが3枚貼られていました。どの地域、どの住宅街にもありがちな党員家庭に見えます。
 しかし党員ではない角田さんには、安

もっとみる
統一教会追及は被害者救済ではなく政治にテロを肯定させてしまった全国弁連の社会運動だ

統一教会追及は被害者救済ではなく政治にテロを肯定させてしまった全国弁連の社会運動だ


はじめに 月額版「筋道のタテツケ通信」の第1回は、なぜ統一教会が解散請求の手続きをされるに至ったのか、根本的な原因をあきらかにします。原因は単純極まりないものですが、それは政治が、教団の体質がといった単純さではありません。
 では統一教会追及は、どのような事情によってもたらされたものか。それは今まで語られてきたものと何がちがうのか。結論を書いてしまうなら、統一教会追及は被害者救済のために行われた

もっとみる
テロに屈して統一教会をつぶしたとき私たちは何を得るのか

テロに屈して統一教会をつぶしたとき私たちは何を得るのか

論考・取材・タイトル写真
加藤文宏

何を得るためのものかという疑問 安倍晋三元首相が暗殺されたテロから、すべてがはじまった。
 テロから1年3ヶ月後、政府は旧統一教会/現家庭連合に対して解散命令を下すための手続きに入った。旧統一教会はテロを行ったのではなく、教団は安倍とともに標的にされた側だったが、犯人が望んでいた通りになったのだ。
 盛山正仁文科相は旧統一教会を、「多くの方々を不安や困惑に陥れ

もっとみる
政治に弄ばれた教団 暗殺事件から解散請求まで

政治に弄ばれた教団 暗殺事件から解散請求まで

取材・タイトル写真
加藤文宏

──安倍晋三元首相暗殺事件を発端として旧統一教会/現家庭連合追及がはじまった。宗教二世を救済するはずの議論は、すぐさま政治家と教団の関係を問うものばかりになり、共産党が「決着をつけるまでとことんやる」と言い出すまでになった。旧統一教会が政党や政治家を利用したとされた追及劇だったが、旧統一教会こそが政治に弄ばれたとは言えないだろうか。

論点がすり替わった教団追及 1

もっとみる
報道災害を考える 反カルトとイエロージャーナリズム

報道災害を考える 反カルトとイエロージャーナリズム

取材・タイトル写真
加藤文宏

──10月4日、旧統一教会/現家庭連合の関連NGOである天宙平和連合(UPF-Japan)が鈴木エイト氏を東京地方裁判所に提訴した。国連NGOであるUPFから、故安倍晋三元首相側にビデオメッセージへの報酬が支払われたとするのは事実無根として、同氏がメディアや公共の場で流布したことに対し、名誉毀損(慰謝料1100万円)で訴えたものだ。この報酬をめぐる鈴木氏の発言を疑問

もっとみる