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雨の中 『羅城門に啼く』と『侠』

豪雨の中、野暮用で1時間歩かないといけなかった昨日昼前。
川沿いの国道沿いを歩いていたら
車やトラックがびゃーっと走ってその度にザバーッ。
無になった。
泣けてくるし怒りが湧いてくるし
でも歩かざるを得ない辿り着けないことには。
ずんずん歩きながらザバーッをまた、またまた、浴びながらも、思った。
たぶん車に乗っている人は攻撃とか加害しようとは思ってもいない。
悪気はない。
あちらもただ仕事や目的のために走らせているだけでしかない。
雨の中の運転だ。あちらも危険だろう。
でも速度、歩く人より早いスピード故に
歩行者に水を泥水をかける、かかる。
こちらは被害を被る。靴、べったべた。髪、ぐっじゃぐじゃ。
どないしたらええねん。でも歩かないといけない。
ザバーッ、しゃーっ、ずっくずく、気持ち悪くて、笑ってしまった。
 
すこしまえに松下隆一という作家の本を続けさまに2冊読んだ。
 
『羅城門に啼く』(2020新潮社、2024新潮文庫、京都文学賞受賞作)
『侠(きゃん)』(2023 大藪春彦賞受賞作)

絵が浮かぶ。
行ったこともないし生きていたこともない平安時代や江戸時代の
荒れ果てたその場所で蠢き世を呪いながら悪事を重ねる若者の姿も
元博打うちで今は蕎麦屋の病におかされた老人の姿もが。
脳に映像として、完璧レベルに「浮かぶ」2作だった。
と、思ったら作者は脚本家として何本も有名作(?)を送り出している方らしい。
まず羅城門を書いて次に侠を書いたということもわかって、納得をした。
小説で書きたいことが、これもわかりやすすぎるくらいに伝わってきたから。
「書きたいねやろうなあこれがこういうことが」
この順番で読めて、しかも続けて読めたこともよかった。
2つの小説、2人の主人公。
でも、どちらも、「じゃあ、どう生きてく?」その過程と姿と結末。
ちょっと、わかりやすすぎるほどだけれど、しかも映像的だけれど、
わかりやすすぎるから止まることなく読み進められ、
前者は「共に走り切り、そして」、
後者は「共に悩み、気持ちを寄せ、そして」を読み終えた。
 
「ほな、どう生きる?」「どう生きてく?」
 
状況、年齢、時代でそれは変わりもするけれど、
まさに羅生門だ。
芥川が結末を書き換えたのは有名な話で、
書き換える前は「もっと単純で爽快」な結末だったらしいし、
それでは今に残らなかった、というのも有名な話。
 
私たちは大雨の中を歩かないといけないし歩いている。
悪意なき水しぶきもかかれば、悪意のあるそれもかかる、
でも雨が降ることで生きられる人も居る。
天災も人災もふりかかるし、生老病死、歳もとる、みんな死ぬ。
だから。でも。でもそれでもと、それでもだから、だ。
 
雨、大丈夫でしたか。
「大丈夫?」っていう言葉も難しいもので、
大丈夫! って返ってくるときは、
ほんとうに大丈夫なときと大丈夫じゃないときがある。
大丈夫じゃない! って返ってくるときは本当に大丈夫じゃないときだし、
それはあってほしくはないことだし、
また、冗談でそう言うのは関係性からだろうし、
そもそも「大丈夫?」はただ言葉だけで、言葉は言葉でしかなく、
でもその言葉がその一言がなにもならないかもしれないけれどその言葉を出すことが何かになったりしないこともない。
言葉や言葉をかけることや聞くことや紡ぐことはひとつの「入口」となることもあるかもしれない。
人と人。結局はすべてのものごとは「人と人」のことであり、
「目の前の人」からかもしれない。
 
こちらは今朝は超青天。
気持ちいいほど、ぱぁーーっとしてる。

◆◆
【略歴や自己紹介など】

構成作家/ライター/エッセイスト、
Momoこと中村桃子(桃花舞台)と申します。

旅芝居(大衆演劇)や、
今はストリップ🦋♥とストリップ劇場に魅了される物書きです。

普段はラジオ番組構成や資料やCM書き、
各種文章やキャッチコピーなど、やっています。

劇場が好き。人間に興味が尽きません。

舞台鑑賞(歌舞伎、ミュージカル、新感線、小劇場、演芸、プロレス)と、
学生時代の劇団活動(作・演出/制作/役者)、
本を読むことと書くことで生きてきました。

某劇団の音楽監督、
亡き関西の喜劇作家、
大阪を愛するエッセイストに師事し、
大阪の制作会社兼広告代理店勤務を経て、フリー。
lifeworkたる原稿企画(書籍化)2本を進め中。
その顔見世と筋トレを兼ねての1日1色々note「桃花舞台」を更新中。
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