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ドラマ『不適切にもほどがある!』については何度か書いた。
回を重ねるごとに、違和感と「これはあかん」が重なりもし、
入り込めなく集中できなく(集中して楽しめなく)なった。
最終回を「どう終わらせるのかな」っていう期待はあったのだけれど、
「んー………?」「うんうん」「なるほどな」「でもなあ」
だからもう一度観なおしたらほろりとはなりもしたけれど、
いろんな人の気持ちを考えて「どうなんやろうなあ」となったのもほんとの気持ち。
悪い意味でもいい意味でもいい意味でも悪い意味でも
「おじさんたちの本気の本音の、本気の悪ふざけ」やったんかなあ、かもなあ。
観られてよかった。完走できてよかったな。と思った。
 
中盤くらいから頭に浮かんでいたのは
「なんか、古いなあ」「古いんやろうなあ」だ。
「古なってもうたんかなあ」「そう思いたくないねんけどなあ」
新しいものや新しくすることが必ずしもいつも絶対に正解ではないとはいえ。
 
同時にずっと思ったし観ながら口にも出してしまったのは
「やさしいな、宮藤さん」
ふざけながらもその考え方とか伝えようとされていることを感じての独り言。
「やさしいな」「やさしいひとなんやろうな」
でも古、失礼、歳をとったのかもしれない。
いや、歳は関係ないし言い訳にしかならない(きっぱり)
やさしいはいいことだ。やさしい人が好きだし尊敬する。
でもやさしいだけでは伝わらないこともあるし誤解も招きかねない。
受け取れない受け取ろうとすらしない人にはシャットダウンされてしまう。
シャットダウンして「聞きも聞き入れもしない」をされてしまったり
決めつけられてしまったりずるい人ずる賢い人からは利用されたりもしてしまう。ずるい人ずる賢い人のずるさはすごいから。
つまりそれは生きる力なのだろうけれど。
そう、やさしさは、むずかしい。
やさしいとか、やさしいだけでも、きっとダメなんじゃないか。
やさしいひとはたぶん苦しい。
 
宮藤さんはずっと「小劇場」でやってこられた。
役者で、そして、作・演出とかバンドとかもやって、
そうして人気者となられテレビドラマの世界に進出した。
「原稿用紙の1マスに3文字書いていた」(松尾スズキのエッセイより)ところから
朝ドラも大河も手掛けた。
その作風は、いいとか悪いとかじゃなく、小劇場やなあ、っていつも思っていた。
小劇場の手法でのテレビドラマ作り(作り方)だなあ、って。
がちゃがちゃ感、細かいギャグやくすぐり、
考察や余韻の楽しみ、伏線を予想する楽しみ、アテ書き、
「この役者にやらせたいこと」「からの、出来上がるストーリー」みたいな作風、
を実現してくれるカンパニー(心置ける役者陣とスタッフ)が具現化される。
極めて小劇場的「劇団」的なそれとその作品は、信者にはウケるし愛される、
知らなかったり触れてこなかった視聴者にとても最初は衝撃だったんだろう。
でもテレビの地上波という誰もが観る観られるところ……
「好きで、選んで、お金を払って足を運んで来て、観る」劇場と違って、
テレビドラマでやるには、やるのに、ちょっときびしいんじゃないかな、
きびしくなってきてしまったのは事実なんじゃないかな、って、
あの頃からの、今、この時代には。
 
ましてやこのテーマ、「多様性の尊重」においては。
 
チョケればチョケるほど伝わりにくい伝わらない(ことが少なくない)。
意図していない方向にとられてしまうし、
そのチョケは、誰かを傷つけてしまう、しまっている。
例えそのチョケが照れや「まっすぐストレートを外して伝える」ことを目的にしても。
小劇場、舞台という生の場でのギャグやチョケや身内ノリは
「ずっと堅苦しいままだと客の集中力が切れてしまいかねない」
という客席への配慮(& 舞台上の自分たちが飽きないために)であることも多い。
でも、テレビドラマという生の舞台でツッコミや訂正のきかない作り上げられた作品での
チョケや笑いはどれだけ慎重になってもきっとめちゃくちゃ難しい。
チョケたら、あかん。あかんことはない。
でもチョケながら、それらを入れながら物語を物語で伝えることは本当にむずかしい、
そのチョケや、「身内感」「身内だけで笑ってる笑える」は他者への攻撃や加害に繋がるし、
このテーマを扱う作品としては「え?」「What?」(に直結しがち)
繋がってしまっていたのではないかなあ。誰かを傷つけてしまっている。
その自覚はなくても、ないどころか、認め合おうという前向きな気持ちだったとしても。
座長と座員たちを超えてリーダーと信者たちみたいになっちゃってるカンパニーが。
その世界観を具現化してくれる・出来ることが、ことも、ことで。
限定されたそういうのが好きな人や関係性や距離感ではそういうのもなしではなく、
あり・あるのかもしれない。
けれど、悪ふざけは例え人情をまぶしたとしても悪ふざけ。
ほんまにそれらの笑いのとり方やギャグが「おもしろい」と思って?
いや、「わざと」やってる(入れてる)のかな。
そういうのに目くじらや過剰反応もとい「ちゃんと」反応する人たちに対して
それらを茶化したり笑ったりするためにだったのかな。
それとも凝り固まりというかファンや信者が持ち上げすぎたことによる麻痺なんやろうか?
 
テレビドラマがもうオワコン? 小劇場というものがもうオワコン?
いや、どちらもオワコンかもだけれどオワコンではないかもだけど。
 
むずかしいね。
 
デロリアンはない。デロリアンみたいなバスもない。過去には行けない戻れない。
ドラマの登場人物たちはまあもう行ったりきたりした出来た。
でもわたしたちは行けない、先へしか行けない。
だから考えないといけないんじゃないかなあ。
好きなものも嫌いなものも過剰反応したちしてしまうものも
自分とは違う意見のものも目を通して呑み込めなく呑み込まなくてもいいが
目に口にしてみること、それは、「しないといけない」ことで
そうして変わったり進んだり、も、していかないとね、なんやろね。皆。皆が。と、思ったり思わされたり、した。
 
わたしは野木亜紀子とそのカンパニーが作るドラマが好きで
好き過ぎて某作品と某作品を暗記するほど観ている今も観る。
でも皆が皆、野木亜紀子になれはしないし
皆が皆野木亜紀子になる・なろうとする、というのも、なんだかたぶん、違う、とも思う。
この期間、また、何度目かの観返しをしながら、そんなことも考えた。
 
不適切をタイトルにした作品が生み出されてカンパニーがつくりあげて放送されて
不適切だとかいろんな意見で観られた作品が今世に出されて、賛否両論、
そのぐちゃぐちゃごちゃごちゃは意義があったことではないかととても感じたし、
宮藤さんは、そんな自分自身に気付きもしているんじゃないかな。
回を進めていって、それこそSNSだのでの感想もたくさん目に耳にされたことで
いろんなことに気付いて行ったんじゃないかなって。
もがきや反省やしんどさも見えた気もした。
だからといって全面的に褒めたたえるとかもたぶん違うのだろうけれど、
 
楽しみやね。こわいね。でも楽しみやね。2054年。
 
何度かここ(note)にも書いて、
アツいコメントをいただいたり、やりとり出来たことも、よかったうれしかった。
 
観られて、完走できて、よかった。



あの頃からずっとずっと好きで格好いい(けど、今はおいおいおい心配も多い)な古田新太が、
今の古田新太が、踊っているのを観れたのはすごいことうれしいことで。

あの頃よりもイケおじ感増してるなんでもできて格好いいのに人間み半端ない池田成志が〝その役どころ〟だったこともうれしかった。

楽しかったぞ笑


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【略歴や自己紹介など】

構成作家/ライター/エッセイスト、
Momoこと中村桃子(桃花舞台)と申します。

旅芝居(大衆演劇)や、
今はストリップ🦋♥とストリップ劇場に魅了される物書きです。

普段はラジオ番組構成や資料やCM書き、
各種文章やキャッチコピーなど、やっています。

劇場が好き。人間に興味が尽きません。

舞台鑑賞(歌舞伎、ミュージカル、新感線、小劇場、演芸、プロレス)と、
学生時代の劇団活動(作・演出/制作/役者)、
本を読むことと書くことで生きてきました。

某劇団の音楽監督、
亡き関西の喜劇作家、
大阪を愛するエッセイストに師事し、
大阪の制作会社兼広告代理店勤務を経て、フリー。
lifeworkたる原稿企画(書籍化)2本を進め中。
その顔見世と筋トレを兼ねての1日1色々note「桃花舞台」を更新中。
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