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港のガントリークレーンのようにヒューマンステージを引っ張り上げてほしい

大好きな神戸にたまに遊びに行く時。
絶対に電車の海側シートに座る。

尼崎から先、芦屋〜灘あたりを走っていると、ぐんぐん山の稜線と海の海岸線が近くなって狭まっていくのがよくわかるのだ。こんなに海と山が隣り合った街はなかなかないし、その挟まれている感がなんとも癒やされるのだ。

その様が見たくて、あえて高台を走る阪急か、逆にあえて海の近くをのんびり走る阪神のどちらかを選び、かつ海側のシートに座りがちな私である。

このへんの港には必ず、赤と白のおめでたいカラーに身を包んだガントリークレーンが海岸線キワキワにずらりと並んで立っている。国際貿易港・神戸の一面を垣間見ることができる特徴的な景色だ。

大きな貨物船から一つ一つカラフルなコンテナを
吊り上げて陸地に下ろしていく様。
子供は胸が躍り、大人も思わず見入るだろう。


クレーンのように自分の人生を吊り上げてほしい。
そんなことが一瞬、頭をよぎるのである。

なんともなっさけない愚痴であり、お恥ずかしい限りだが、この考えがどうにも頭を大きく占めてしまって吐き出さずにはいられないのだ。

例えば、無名人が有名人のSNSでプッシュされて一躍スターダムにのしあがったり、日本ではさっぱり受け入れられなかった人間が突然海外で才能を開花させる。そういうのは全部天からクレーンの紐が吊り下げられていて、神様が「こいつ引き上げるぜ」って言って、天使がそいつに玉掛けして上に引っ張られていく。

そういえば私の上司も、こないだ「飼ってる犬が有名人に紹介された」って言って喜んでたなぁ。今や犬ですらクレーンで引き上げられてヒューマンステージならぬドッグステージ上げちまう世の中だもん。哺乳類ヒト科が生きにくい時代になりますわなそら。

それをずーっと下から見てると思うのだ。
いいなぁ、俺も誰か吊り上げてくれよ、って。

一体いつまで生活の向上しないゆとりも生まれないこんな地平でのたうち回ってればいいのか、ヒューマンステージいつ上げてくれるんだよってな感じで嫌になっちゃって、また今日も酒をパカパカ飲んでます。

とはいえ、私も馬鹿じゃないからわかっている。
そんなに自分にとって都合のよく使い勝手のいいクレーンは存在しなくて、むしろどう自分が扱われるかよく分かっていないがなんだか急に周囲の人間が自分を褒め出し、あっという間に誰からも支持される人間になる。

有名になるというのはそれぐらい無自覚で、かつ一瞬。自分が大きなクレーンで引っ張り上げられている、というよりはジェットエンジンで無理やり重力に逆らってぶっ飛ぶような感覚の方が近いのだろう。



おしまい。



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