『滅びの前のシャングリラ』 (凪良ゆう 作) #読書 #感想 3

感想は今日で終わりである。
今日は、最後の主人公、つまり元アイドルでありスターとなった山田路子(芸名:L o c o)について書く。
彼女は自分の人生に絶望し、スターとなったにも関わらず....むしろスターだったからこその虚しさや寂しさを感じていた。

286ページより、彼女の思い

普通の人たちには手の届かない至上の罪と愛を手に入れた女神として、世間が尊ぶ幸福の形に爪を立てる記憶として鮮烈に残りたかったのだ。
それが、今のこの世界はなんだ。
みんな本当はたいして幸せでもなく、すさんでいたじゃないか。

彼女は自分が幸せになれる選択をし、ひとときの幸せを感じていた。なのに人類滅亡を目前に控えた今、なぜこんなに彼女は虚しいのか。

290ページより

それが自らの欲望に端を発した自業自得の寂しさだとしても、わたしは寂しかったのだ。

と彼女は語っている。死ぬ間際になった時、彼女の近くには誰も親しい人がいない、心配してくれる人もいない、と彼女はそう思っていたのだ。故郷を捨てて、整形をし、そこまでして掴み取ったものは、本当に大切なものだったのだろうか。

彼女の人生は"芸能人にはよくあるような人生"なのかもしれない。だがそれでも1つ思うのは、毎回毎回"自分が幸せになれるような"選択をしてきたとしても、あるいは自分の"欲望"を満たせるような選択をしてきたとしても、最後に幸せだと感じられるとは限らないのだなぁということだった。

自らが望むまま人生を駆け抜けてきたとき、最後に残ったものが"虚しさ"だけだったとしたら。ひとときの幸せを何度も感じていたけれど、最後に辿り着いたところで幸せを感じられなかったとしたら。

どんな人生が、1番幸せな人生なのだろうか。
"幸せになれる選択"とは、何なのだろうか。





329ページより

明日死ねたら楽なのにと夢見ていた。
その明日がついにやってきた。
なのに今になって、もう少し生きてみてもよかったと思っている。
後悔じゃない、もっとやわらかい眩しい気持ちだ。
これを希望と呼ぶのはおかしいだろうか。

若き彼女にとって、歌うことは全てだった。大声でいつも歌っていた。

最期の瞬間に、彼女は何を想うのか。
最期の瞬間に、彼女は何を愛するのか。

最期の瞬間に、彼女は何を謳うのか。



人類滅亡の瞬間を共に迎えたひと家族の運命。
人類滅亡の瞬間を大好きな仲間と迎えた山田路子の運命。

彼らの人生の一端を、のぞいてみませんか。


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