『死神の精度』 伊坂幸太郎 作 #感想 #読書
音楽を愛する死神、千葉。食べても美味しいとは感じないし、夜寝なくても眠いという感情が湧いてくることはない。彼が仕事をするときはいつも雨。見た目は調査対象に合わせて毎回変えることができる……。
ユーモアな死神と対象者との出会いが面白い。
千葉は「対象者」となった人を1週間調査し、死の判断を下す。「可」とすれば8日目に対象者は死に、「見送り」とすれば対象者は死なない。
ミステリー要素も含まれているかつ、多くの死神が適当な調査をしていて ほとんどの対象者が「可」となる中で 、千葉は対象者と一応きちんと向き合い、判断をしていくかが面白い。「見送り」となった対象者は誰なのか?
それは物語を最後まで読むと、繋がりが見えてくる部分である。
伊坂さんの作品を読んだことがない人でも読みやすいであろう、ユーモラスな作品である。そして長すぎず短すぎずですぐ読み終えることができる。
死神に会うとき=死ぬとき のようなものなので、死神に会いたい….とはならないかもしれないが、自分の最期は千葉に「可」か判断してもらいたいと ちょっと思える小説である。
死の対象者となる人の人生はさまざまで面白い。死ぬ方法もバラバラだ。死神は人間界の当たり前のことを知らなかったりするし、例え話の意味を理解できず頭の中で1人変わったストーリーを繰り広げていることもある。
この死神の脳内の思考に、クスッと笑ってしまう。
「死」に直面している対象者には、来るべき時が来てしまっているのに。
死神の考え方の中で、恋というか片想いをしている男性についての表現が面白かったので残しておく。
恋愛のことを、恋愛をしたことがないであろう死神が真面目に語っているのがなんというか微笑ましい。恋愛というものをここまで丁寧に表現されてしまうと、恋をしている自分が恥ずかしくなってしまいそうだ(笑)
少しズレてる死神・千葉はよく対象者に「おもしろい」と言われているのだが、そう言われるのを嫌がっている千葉もおもしろい(笑)
肩の力を抜いて、死ではなく死神に向き合って読んでほしい。
あなたに「可」の判断が下される前に。