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七つ目の大陸

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#自然

旅路の根源

旅路の根源

 一度門をくぐったガデアが再び坂を下りてきたのは、十数分後。ノイのことを知るものはいなかったそうだが、客人としてもてなすことを伝えられる。
 ガデアと共に坂を登り門にたどり着く頃には、周囲の鬱蒼と茂る木々にも負けないほど密集していた人々は、いつの間にか姿を消していた。
 木製の巨大な門が、ギシギシと苦しそうな音を立てながらゆっくりと開く。その先に広がる光景に、レガは感嘆の声を漏らした。
「凄い。ヤ

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微笑みの巾着

微笑みの巾着

カーン、カーン、カーン
「集まれーい! 訪ね人だ! 皆、集まれーい!」
 来訪者を知らせる鐘の音が、集落中に鳴り響く。その甲高い音を耳にした者たちは、皆一様に警戒心を高めた。
 数十もの足音が向かった先は、集落の素朴さにそぐわないほどの重厚な門扉。鐘をこれでもかと鳴かしている見張り台の男は、額から汗を流しながら足元に集まる人々を眺めていた。
「ふう、こんなもんか」
 見張り台から見渡せるのは、ヤマ

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脅威との邂逅

脅威との邂逅

 夜の帳に包まれて眠る皆を眺めるのは、火の番を務めるノイ。我こそが番をと意気込んでいたピーシャルはそうそうに眠りにつき、懸命に眠気と戦っていたレガもまた、襲い来る睡魔に体を預けていた。
 パチパチとつつましく鳴る音、控えめに揺らめく酸素の燃焼。ノイの体に傷を刻んだ炎とは、似ても似つかぬ穏やかさ。
「お頭、まだ起きてるんですかい?」
 転がしていた体を起こしてきたブリンゴが、あたりの岩に腰かける。そ

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遅参の胸中

「いやー、何とかなったな。とりあえず外には出れた」
「荷物はほとんど無いけどね。この後どうするつもりなんだよ」
「うるさいな! どっちにせよ、燃えてしまってどうもできなかっただろ?」
 二頭のタカダガを並走させながら口論を始めるピーシャルとレガ。ブリンゴはピーシャルの後ろでぐったりとして、しがみつくのに精一杯の様子。
「あんたたち。良くやってくれたね」
 終わりそうになかった口論にノイが一言口を挟

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金色の日陰者

金色の日陰者

「お母さんは知ってたんだろ! お父さんがいなくなるって! なんで黙ってたんだ!」
 ビーク家に帰った途端、レガはタカダガの背から飛び降り母に詰め寄っていた。乱暴に開け放たれた扉から、家の中に乾いた風が入り込む。
「レガ、ごめんなさい。レガ……」
 ただ深く謝るばかりのコットの顔を、涙の跡が幾筋も通っている。腕に食い込んだ爪痕からは、血の涙が流れていた。
「レガ! やめねえか、お前の母さんはお前の為

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