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123天文台通りの下町翁 雑記帳 奈倉 有里 著「夕暮れに夜明けの歌を~文学を探しにロシアに行く~」
気鋭のロシア文学翻訳家のペテルブルグ、モスクワ留学時代の濃密に文学、詩、教師、学生たちにどっぷりと浸った日々がつづられている。なんとも貧しくとも、濃密でみずみずしい学生生活だったかが浮かびあがる。
たった一人の東洋からの留学生としての経験が細部に渡り、書き留められている。きめ細やかな心模様、そして何よりもロシア文学や関連する資料を浴びている様子と情熱が全編に貫かれている。奈倉有里は、ロシア文学を読
123天文台通りの下町翁 雑記帳~ 鶴見 済 著「人間関係を半分降りる」
人間だれしも浅くも深くも落ち込む。不運や不幸は時には生まれた時から運命づけられてしまっていることもあるし、自分には無関係と思っていたら出くわしてしまうことがある。鶴見氏が書いているように、すべての悩みは人間関係につながっている。家族、友人、職場、学校、地域社会、あらゆる場所で、ありのままの自分でいられることは至難の技だ。
そうであるからこそ、人からどう思われるかを基準にせず、自分をからめとってい
123天文台通りの下町翁 雑記帳~ブレイディみかこ著「ヨーロッパ・コーリング・リターンズ 社会・政治時評クロニクル 2014-2021」~
英国イングランドのブライトンという町に在住の保育士&ライター/コラムニストの英国社会、政治についての新型コロナ感染拡大した2021年までの自由で闊達な7年半に渡るコラムをまとめた一冊。文庫とは言え500ページ近い分量を読むのは一気にはできないが、一編ごとに、反緊縮・人々への積極財政の必要性、かつては"ゆりかごから墓場まで"と呼ばれた社会厚生システムが保守党、とりわけサッチャー以降の新自由主義政策で
もっとみる123天文台通りの下町翁 雑記帳~大山勝男・著「さっちゃんの診察器 -医師・矢島祥子-」読後記
大阪市西成区の診療所で釜ヶ崎で一貫して町に暮らす厳しい生活環境や健康状態にある人々のために、献身的に医療活動を続けていた”さっちゃん”先生こと矢島祥子医師。2009年11月19日の午前1時20分に木津川の千本松船場の水中で遺体となって発見されるまでのわずか34年の人生の濃くも短い軌跡を追った内容。と同時に、ご両親お二人とも医師、祥子さんの兄弟3人のご家族と他殺死としか思えない彼女の死の真相を現在も
もっとみる123天文館通りの下町翁 雑記帳~柳美里「JR上野駅公園口」(河出文庫)を読んで
冒頭とエンディングに太字で書かれた「まもなく2番線に池袋・新宿方面行きの電車が参ります、危ないですから黄色い線までお下がりください」上野駅構内の山手線ホームアナウンスで繋がれた福島県出身のホームレス男の日常、故郷での家族との葛藤ある暮らしが入り交じる話は、東日本大震災後に南相馬に居を移し、本屋も構えながら土地の人々に丹念に耳を傾け、実際に上野の山で"山狩り"と称される天皇一族が美術館、博物館来訪時
もっとみる123天文台通りの下町翁 雑記帳~桐野夏生『日没』読後感とナオミ・クライン『ショックドクトリン(上)』を併読して~
読書することが身に付いてきたのは奥手だった。会社員時代まだ改革開放してまもない頃の北京に、1985年秋から3年間駐在員として滞在していた28歳からだ。天安門広場の悲劇が起こる少し前。それまでは受験生時代の受験参考書程度の読書と呼べない文字の追い方だった。だが当時の北京は外国人駐在員が遊びに行ける娯楽は少なく、ひたすら町中の路地裏、いわゆる胡同を巡って市民の生活を垣間見るか、長い夜を一時帰国時に買い
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