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新谷雅先
2024年7月22日 19:38
おかあさんは猫のサークルに おとうさんは狸の飲みごとに夜はだーれもおりませんです 空しく灯がついてるだけです
2024年7月2日 06:30
傷ついた部屋に閉じこもってぼくは何気なくマッチをすった前からやっていたような気もするけどこれが初めてのような気もする その日太宰府は雨の中にあった ただいつもと違うことは傘が二つ 小さな梅の木はただ雨の中に そうやっていつも春を待つんだろうマッチをすっては何気なく消してまた新しい火を起こしながらうつろに風を眺めているだけどそれも何気なく忘れて 騒ぎすぎた日々と別れるよ
2024年6月8日 20:27
夜を夜に返してあげよう。文明を象徴する明るさが、未来の文明を作っていく子供の夢を邪魔している。夜を夜に返してあげよう。夜を夜に返してあげよう。恐怖を与えない明るさが、昔からの妖怪を滅ぼして新たな妖怪を生んでいる。夜を夜に返してあげよう。夜を夜に返してあげよう。人類の便利な一日の形は、実は他生物の不便なのだ。だからもういいかげんに夜を夜に返してあげよう。
2024年5月24日 07:49
教室の中のきみしか知らないどんな家庭で育ってきたのかどういう幼少時代だったのかどういう家に住んでいるのかどういう食べ物が好きなのか教室の中のきみしか知らないどういう服を好んで着るのかどんな友達と遊んでいるのかどういう会話をしているのかどういう時に笑っているのか教室の中のきみしか知らないどんな趣味を持っているのかどんな本に感銘を受けるのかどんな音楽を聴いているのかどん
2024年3月9日 07:00
幼い頃から、遠い灯りを見ると、何か惹かれるものがあった。心がウキウキしてきて、夢や希望がふくらんでくるんだ。ところが昼間そこに行ってみると、別に大したところではなく、パチンコ屋のネオンだったり、カラオケ店の看板だったりする。人生のイベントだって同じようなものだ。そこにたどり着くまでは、遠い灯りを見るように心を弾ませているのだが、着いてしまうと何のことはなく、そこには日常
2024年4月25日 06:23
あの日流れ星に願ったことは生涯持ち続けられる夢を授けてもらうことあの日流れ星に誓ったことは生涯その夢を追い続けていく粘りを持つことあの日流れ星に願ったことは生活の中に極上の酒を添えてもらうことあの日流れ星に誓ったことは極上を味わえるように味覚を鍛えることあの日流れ星に願ったことは毎日毎日を輝いた日にしてもらうことあの日流れ星に誓ったことは毎日を輝いた日と思える自分になるこ
2024年4月16日 22:20
仮に世間があなたを善としましょう。いい人ですよ。近所付合いもいいし。この人が悪なんて絶対にありえない。大勢の声があなたに味方しています。しかしわたしはあなたを善としない。なに故にそう言切れるのかというと、わたしはあなたにとって絶対の存在、故にあなたのすべてが見えるのです。あなたはいつも人の後に隠れている。あなたは汚れる仕事をしたがらない。基本的に働かない方向に歩いている。
2024年4月23日 17:44
水の兵隊と砂の兵隊が波打ち際で戦争を繰り返す。喚声を上げながら一気に侵攻する水の兵隊と、そうはさせじと身を捨ててこれを押し返す砂の兵隊が、太陽を味方につけ風を味方につけお互いに一歩も譲ろうとしない。くる日もくる日も飽きもせずにこの戦争は続いている。
2024年4月24日 06:42
傘をさすのが苦手なもんで、なるべく傘はささないことにしている。そのせいで雨に濡れることもあるのだが、さほど気にはならない。昔からこんな調子だった。傘をさす苦労に比べると楽なもんだと、びしょ濡れで学校に行ったこともある。もちろんクラス中の笑い者になったが、それでも傘をさすよりはいいと思い、みんなといっしょになって笑っていた。そういえば最近は昔に比べると、濡れることが少なくな
2024年4月26日 13:13
ぼくら家族が住むこの家にはもう一つの家族が住んでいる。彼らは老若や男女の区別なく無慈悲で野蛮で凄く好戦的で、ぼくらの姿を見つけるや否やキャーキャーと奇声を上げてスリッパ片手に襲ってきたり猛毒の霧をふりかけてきたり時に凍死させようと試みたりこちらの息の根を止めるまでその手をゆるめず攻めてくる。例えその場で取り逃がしても通り道に罠を仕掛けてみたり毒煙を撒いて住めなくしたり
2024年4月27日 17:48
君のそのまなざしはいつの時代のまなざしですかぼくが知る以前の君ですかぼくが知っている頃の君ですかそれとも今の君ですか君の人生ですかほんの気まぐれですか
2024年5月17日 06:30
月が出ている。月が出ている。ひとつふたつの言葉なんか簡単に忘れさせてしまう月が出ている。大きな月だ。大きな月だ。その上にうっすらとうっすらと雲がかかっている。影を隠す雲がかかっているだけどそれは今だけのこと。ほら、春から夏への星たちがあんなにはっきり映っている。だから雲もいつかは晴れるんだ。ふふふ、月が出ている。大きな月が出ている。うっすらとうっすらと月が出てい