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好きな作品

18
特に自分の好きな作品を選びました。
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#詩

【詩】お留守

【詩】お留守

おかあさんは猫のサークルに
おとうさんは狸の飲みごとに
夜はだーれもおりませんです
空しく灯がついてるだけです

【詩】傾きかけた日々

【詩】傾きかけた日々

傷ついた部屋に閉じこもって
ぼくは何気なくマッチをすった
前からやっていたような気もするけど
これが初めてのような気もする

 その日太宰府は雨の中にあった
 ただいつもと違うことは傘が二つ
 小さな梅の木はただ雨の中に
 そうやっていつも春を待つんだろう

マッチをすっては何気なく消して
また新しい火を起こしながら
うつろに風を眺めている
だけどそれも何気なく忘れて

 騒ぎすぎた日々と別れるよ

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【詩】夜を夜に返してあげよう

【詩】夜を夜に返してあげよう

夜を夜に返してあげよう。
文明を象徴する明るさが、
未来の文明を作っていく
子供の夢を邪魔している。
夜を夜に返してあげよう。

夜を夜に返してあげよう。
恐怖を与えない明るさが、
昔からの妖怪を滅ぼして
新たな妖怪を生んでいる。
夜を夜に返してあげよう。

夜を夜に返してあげよう。
人類の便利な一日の形は、
実は他生物の不便なのだ。
だからもういいかげんに
夜を夜に返してあげよう。

【詩】教室の中のきみしか知らない

【詩】教室の中のきみしか知らない

教室の中のきみしか知らない
どんな家庭で育ってきたのか
どういう幼少時代だったのか
どういう家に住んでいるのか
どういう食べ物が好きなのか

教室の中のきみしか知らない
どういう服を好んで着るのか
どんな友達と遊んでいるのか
どういう会話をしているのか
どういう時に笑っているのか

教室の中のきみしか知らない
どんな趣味を持っているのか
どんな本に感銘を受けるのか
どんな音楽を聴いているのか
どん

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遠い灯り (2009/07/01)

遠い灯り (2009/07/01)

幼い頃から、遠い灯りを見ると、
何か惹かれるものがあった。
心がウキウキしてきて、
夢や希望がふくらんでくるんだ。
ところが昼間そこに行ってみると、
別に大したところではなく、
パチンコ屋のネオンだったり、
カラオケ店の看板だったりする。

人生のイベントだって同じようなものだ。
そこにたどり着くまでは、
遠い灯りを見るように
心を弾ませているのだが、
着いてしまうと何のことはなく、
そこには日常

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【詩】流れ星

【詩】流れ星

あの日流れ星に願ったことは
生涯持ち続けられる夢を授けてもらうこと
あの日流れ星に誓ったことは
生涯その夢を追い続けていく粘りを持つこと

あの日流れ星に願ったことは
生活の中に極上の酒を添えてもらうこと
あの日流れ星に誓ったことは
極上を味わえるように味覚を鍛えること

あの日流れ星に願ったことは
毎日毎日を輝いた日にしてもらうこと
あの日流れ星に誓ったことは
毎日を輝いた日と思える自分になるこ

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【詩風】ドクロ裁判

【詩風】ドクロ裁判

仮に世間があなたを善としましょう。
いい人ですよ。近所付合いもいいし。
この人が悪なんて絶対にありえない。
大勢の声があなたに味方しています。

しかしわたしはあなたを善としない。
なに故にそう言切れるのかというと、
わたしはあなたにとって絶対の存在、
故にあなたのすべてが見えるのです。

あなたはいつも人の後に隠れている。
あなたは汚れる仕事をしたがらない。
基本的に働かない方向に歩いている。

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【詩】波打ち際の戦争

【詩】波打ち際の戦争

水の兵隊と砂の兵隊が
波打ち際で戦争を繰り返す。
喚声を上げながら
一気に侵攻する水の兵隊と、
そうはさせじと身を捨てて
これを押し返す砂の兵隊が、
太陽を味方につけ
風を味方につけ
お互いに一歩も譲ろうとしない。
くる日もくる日も
飽きもせずに
この戦争は続いている。

【詩風】傘をさすのが苦手なもんで

【詩風】傘をさすのが苦手なもんで

傘をさすのが苦手なもんで、
なるべく傘はささないことにしている。
そのせいで雨に濡れることもあるのだが、
さほど気にはならない。

昔からこんな調子だった。
傘をさす苦労に比べると楽なもんだと、
びしょ濡れで学校に行ったこともある。
もちろんクラス中の笑い者になったが、
それでも傘をさすよりはいいと思い、
みんなといっしょになって笑っていた。

そういえば最近は昔に比べると、
濡れることが少なくな

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【詩風】もう一つの家族

【詩風】もう一つの家族

ぼくら家族が住むこの家には
もう一つの家族が住んでいる。
彼らは老若や男女の区別なく
無慈悲で野蛮で凄く好戦的で、
ぼくらの姿を見つけるや否や
キャーキャーと奇声を上げて
スリッパ片手に襲ってきたり
猛毒の霧をふりかけてきたり
時に凍死させようと試みたり
こちらの息の根を止めるまで
その手をゆるめず攻めてくる。

例えその場で取り逃がしても
通り道に罠を仕掛けてみたり
毒煙を撒いて住めなくしたり

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【詩】君のまなざし

【詩】君のまなざし

君のそのまなざしは
いつの時代のまなざしですか
ぼくが知る以前の君ですか
ぼくが知っている頃の君ですか
それとも今の君ですか
君の人生ですか
ほんの気まぐれですか

【詩】うっすらと月が出ている

【詩】うっすらと月が出ている

月が出ている。月が出ている。
ひとつふたつの言葉なんか
簡単に忘れさせてしまう
月が出ている。

大きな月だ。大きな月だ。
その上にうっすらと
うっすらと雲がかかっている。
影を隠す雲がかかっている

だけどそれは今だけのこと。
ほら、春から夏への星たちが
あんなにはっきり映っている。
だから雲もいつかは晴れるんだ。

ふふふ、月が出ている。
大きな月が出ている。
うっすらと
うっすらと月が出てい

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