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記事一覧

【詩】お留守

【詩】お留守

おかあさんは猫のサークルに
おとうさんは狸の飲みごとに
夜はだーれもおりませんです
空しく灯がついてるだけです

【詩】傾きかけた日々

【詩】傾きかけた日々

傷ついた部屋に閉じこもって
ぼくは何気なくマッチをすった
前からやっていたような気もするけど
これが初めてのような気もする

 その日太宰府は雨の中にあった
 ただいつもと違うことは傘が二つ
 小さな梅の木はただ雨の中に
 そうやっていつも春を待つんだろう

マッチをすっては何気なく消して
また新しい火を起こしながら
うつろに風を眺めている
だけどそれも何気なく忘れて

 騒ぎすぎた日々と別れるよ

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【詩】夜を夜に返してあげよう

【詩】夜を夜に返してあげよう

夜を夜に返してあげよう。
文明を象徴する明るさが、
未来の文明を作っていく
子供の夢を邪魔している。
夜を夜に返してあげよう。

夜を夜に返してあげよう。
恐怖を与えない明るさが、
昔からの妖怪を滅ぼして
新たな妖怪を生んでいる。
夜を夜に返してあげよう。

夜を夜に返してあげよう。
人類の便利な一日の形は、
実は他生物の不便なのだ。
だからもういいかげんに
夜を夜に返してあげよう。

【詩】教室の中のきみしか知らない

【詩】教室の中のきみしか知らない

教室の中のきみしか知らない
どんな家庭で育ってきたのか
どういう幼少時代だったのか
どういう家に住んでいるのか
どういう食べ物が好きなのか

教室の中のきみしか知らない
どういう服を好んで着るのか
どんな友達と遊んでいるのか
どういう会話をしているのか
どういう時に笑っているのか

教室の中のきみしか知らない
どんな趣味を持っているのか
どんな本に感銘を受けるのか
どんな音楽を聴いているのか
どん

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1,
 48歳の時、ぼくの所属していた部署が閉鎖になった。ぼくは専門職で雇われていたため、つぶしが効かないと判断され、リストラの対象となり、そのまま会社を退職することになった。
 それからおよそ一年間、表向きには失業保険をもらいながら、ハローワーク通いをやっていたのだが、その裏では充分に時間が取れるので、『こんなチャンスはない』と思って、エッセイを書いたり、詩を作ったり、歌を作ったりしていたのだっ

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遠い灯り (2009/07/01)

遠い灯り (2009/07/01)

幼い頃から、遠い灯りを見ると、
何か惹かれるものがあった。
心がウキウキしてきて、
夢や希望がふくらんでくるんだ。
ところが昼間そこに行ってみると、
別に大したところではなく、
パチンコ屋のネオンだったり、
カラオケ店の看板だったりする。

人生のイベントだって同じようなものだ。
そこにたどり着くまでは、
遠い灯りを見るように
心を弾ませているのだが、
着いてしまうと何のことはなく、
そこには日常

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【詩】流れ星

【詩】流れ星

あの日流れ星に願ったことは
生涯持ち続けられる夢を授けてもらうこと
あの日流れ星に誓ったことは
生涯その夢を追い続けていく粘りを持つこと

あの日流れ星に願ったことは
生活の中に極上の酒を添えてもらうこと
あの日流れ星に誓ったことは
極上を味わえるように味覚を鍛えること

あの日流れ星に願ったことは
毎日毎日を輝いた日にしてもらうこと
あの日流れ星に誓ったことは
毎日を輝いた日と思える自分になるこ

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【詩風】サクランボとキス

【詩風】サクランボとキス

サクランボの茎を口で結べる人は
キスがうまいんだと友人から聞き、
喫茶店に行っては、好きでもない
クリームソーダを何杯もお代りし
必死に練習をしていたことがある。

そのせいで舌や顎などを痛めたり
色んな苦労をしたのだが、何とか
結べるようになった。ただそれで
キスがうまくなったのかどうかは
判らない。言われたことないしね。

ところで口で結ぶ時、舌と同時に
歯を使ってもよかったんだろうか。
キス

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【詩風】終わらない恋

【詩風】終わらない恋

あの位置から見ていたからぼくは
君を好きになったに違いないのだ。
もし別の位置から君を見ていたら
そうはならなかったかもしれない。
なぜならぼくは未だに君のことを
何も知らないでいるからだ。夢も
趣味も嗜好も考え方もその性格も
幸せの度合いも不幸せの度合いも
そこまでの君がたどってきた道も
そこから君がたどっていった道も
ぼくはなにも知ろうとしなかった。
だからなにも知らないままなのだ。

ただ知

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https://note.com/massaki1488/n/na73a92ec04d3

 ぼくは20歳から22歳まで東京に住んでいた。
 20歳の春にまったくの未知だった東京に飛び込んでから一年、ようやく東京生活に慣れた頃だった。それとなく仲間が出来、その仲間と飲みに行ったり、ドライブに行ったり、彼らの家を泊まり歩いたりして親交を深めていった。
 ところが、彼らと別れた後、楽しい気持のまま帰

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【詩】ゆびきりげんまん

【詩】ゆびきりげんまん

「ゆびきりげんまん、うそ・・

幾つの頃の約束だったか
あれ以来ぼくの体の中に
毎日針がたまっていって
チクリチクリ心を刺して
毎日痛くて、毎日痛くて
いつも懺悔をしています

・・ついたら、針千本飲ます」

【詩風】ドクロ裁判

【詩風】ドクロ裁判

仮に世間があなたを善としましょう。
いい人ですよ。近所付合いもいいし。
この人が悪なんて絶対にありえない。
大勢の声があなたに味方しています。

しかしわたしはあなたを善としない。
なに故にそう言切れるのかというと、
わたしはあなたにとって絶対の存在、
故にあなたのすべてが見えるのです。

あなたはいつも人の後に隠れている。
あなたは汚れる仕事をしたがらない。
基本的に働かない方向に歩いている。

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【詩】波打ち際の戦争

【詩】波打ち際の戦争

水の兵隊と砂の兵隊が
波打ち際で戦争を繰り返す。
喚声を上げながら
一気に侵攻する水の兵隊と、
そうはさせじと身を捨てて
これを押し返す砂の兵隊が、
太陽を味方につけ
風を味方につけ
お互いに一歩も譲ろうとしない。
くる日もくる日も
飽きもせずに
この戦争は続いている。

【詩風】傘をさすのが苦手なもんで

【詩風】傘をさすのが苦手なもんで

傘をさすのが苦手なもんで、
なるべく傘はささないことにしている。
そのせいで雨に濡れることもあるのだが、
さほど気にはならない。

昔からこんな調子だった。
傘をさす苦労に比べると楽なもんだと、
びしょ濡れで学校に行ったこともある。
もちろんクラス中の笑い者になったが、
それでも傘をさすよりはいいと思い、
みんなといっしょになって笑っていた。

そういえば最近は昔に比べると、
濡れることが少なくな

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