マガジンのカバー画像

一生ボロアパートでよかった

13
連載シリーズをまとめました☺️ 最新話もこちらに入れていきます。 よろしければフォローをお願いします🌸
運営しているクリエイター

#家庭環境

一生ボロアパートでよかった⑬

一生ボロアパートでよかった⑬

 春休みの終わりが目前に迫った4月の頭。春の日差しを受けて花々が芽吹くように、私の心にも焦りが芽吹き始めていました。

 あともう少しで新学期になる。中学3年生になる。そして今年は高校受験がある。それが私の中で焦りを芽吹かせる主たる原因でした。少し先の未来を考えれば、新学期からでも学校に行くべきである事は明白でした。

 でも私にはそれが恐ろしく怖かったのです。だって、もう既に一度逃げてしまいまし

もっとみる
一生ボロアパートでよかった⑫

一生ボロアパートでよかった⑫

 学年末テストも終業式も終わり、春休みに入りました。私は不登校のまま春休み入りしたので、学校というしがらみから解放される、あの長期休み前特有の喜びに浸ることが出来ませんでした。

 想像するにきっと男子なんかは、終業式後のホームルームが終わるや否やガッツポーズをして「よっしゃー、休みだー」とかなんとか言っちゃって、舞い上がっているに違いありませんでした。きっと女子なんかは、春休みに入ったら気になる

もっとみる
一生ボロアパートでよかった⑨

一生ボロアパートでよかった⑨

 "親ガチャ"って、便利な言葉ですよね。自分の人生の不運を憐れむのに、使い勝手が良い。

 両親の経済力や性格、相性なんかを槍玉にあげて、不運の責任を押し付けるのに丁度いい言葉だと思います。
 もしくは、神様とか運命とか、そんな目に見えないフワフワしたものを悪者にして、"はずれ"を引かされた自分は可哀想な被害者なんだって、思わせてくれる言葉ですよね。

 私も中学生になってから、なんで自分だけこん

もっとみる
一生ボロアパートでよかった⑧

一生ボロアパートでよかった⑧

 マナちゃんは、小学校卒業と同時に引っ越していきました。お父さんが転勤になったと言っていました。たしか東京に行ったはずです。

 最後にマナちゃんにバイバイした日、アオイちゃんと3人で一緒に泣きました。マナちゃんが泣きながら「手紙書くね」って言ってくれて、「私も絶対書くよ」って泣きながら答えました。でも結局、手紙は一通も来ませんでした。私も、一通も送りませんでした。

 マナちゃんが実は、中学受験

もっとみる
一生ボロアパートでよかった⑥

一生ボロアパートでよかった⑥

 物置部屋掃除の翌日、学校から帰った後、私は1人で床を掃除しました。
 物置部屋の床は、埃を掃いてしまえば大して汚れていませんでした。荷物置きにしか使われていませんでしたから、荷物がなくなってしまえば、あの部屋が家の中で一番綺麗でした。
 床掃除は、箒で掃いてから雑巾掛けをしました。一階のクローゼットの中に掃除機があるのは知っていましたが、ゴミが扉の前に山積みになって取り出せなかったので、使うのを

もっとみる
一生ボロアパートでよかった①

一生ボロアパートでよかった①

 私が幼稚園の年長になった頃、両親は家を買いました。新築の白い家です。今思えば大して広くもない、よくある40坪程度の分譲住宅の一つでした。しかし、当時の私にはお城のように広く感じられて、まるで自分がお姫様にでもなったかのような気分でした。太陽の光を浴びると白色の壁面がより輝いて見え、新しく美しい家は、幼い私に自信を与えてくれました。まさか、あの白い綺麗な家がゴミ屋敷になるなんて、誰も思わなかったと

もっとみる