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大日本末期文学全集

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終末感が滲み出る文章がまとまったら、ここに投稿します。イラストと文を合わせて一つの作品になっていることもあるので、雑誌のような感覚でお楽しみください。
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2023年1月の記事一覧

『ナインハンドレットナインティナイン甘枝ゆとりのオーノレナイトニッポン 〜文芸みたいな世界は実はいちばん苦手で。〜』

『ナインハンドレットナインティナイン甘枝ゆとりのオーノレナイトニッポン 〜文芸みたいな世界は実はいちばん苦手で。〜』

長いよ。

♪タラッタ

♪タッタラタタッタラ

♪タッタラタタッタラ

♪タラッタラ

♪タラッタンタンタン

(中略)

文芸みたいな世界は実はいちばん苦手で。

だから自分の作文を載せ終えたら、さっさと掃けてお笑いかスポーツを観たりしているんですよ。

なんで苦手かっていうと、みんな悦に入りすぎ、勝手に。酔いしれちゃってさ、もう。

コロナ禍の直前にアメリカを旅しましてボルティモアという港湾

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『居て、飲む人ら』

『居て、飲む人ら』

(これの続編です)

5155…

8702…

ここで飲むようになって

そろそろ半年になるか

6921…

0394…

熱燗なしには

なかなか厳しい時候

5408…

1870…

なんだかさいきん

清ちゃんが俺の耳元で

ぼそぼそと…

7673…

「あっ!」

暗証番号だ!

来る人来る人の

暗証番号を!

清ちゃんときたら

暗記しているのか!

「清ちゃんそれはよくないぜ

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『電話』

『電話』

あぁかんぜんに終わった

俺はかんぜんに終わった

平日より少し遅めに床を出て

リビングに出てみれば

涙をこらえてうつむく妻の姿

あぁこれはバレたな

かんぜんにバレた

俺は不倫をしている

もうかれこれ3年になるだろうか

部下のFさんと逢瀬を続けていて

「おはよう」

「…」

いつもと同じ朝のように

俺は声をかけた

ところが妻はいっこうに

うつむいたまま

涙がこぼれている

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『石』

『石』

父の故郷はだいぶ田舎で

良質な石が採れるまち

曽祖父はその採掘を

稼業としており

全盛期には

墓石ひとつ売ったら家が建つ

そんなふうに形容されるほどの

ブランドを誇ったらしい

いまやむかし

掘れば掘ったで

その資源は枯れて

削られた山肌だけが

その風景には残っていて

--

ちょうど時局は

世界大戦のまっただなか

国中が物資不足に喘いでいる

鍋釜を差し出し

芋のつ

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『(そこでも泣いた)』

『(そこでも泣いた)』

人目も憚らず

俺は泣いた

教え子たちの

勇ましい姿

まさか弱小校の我々が

全国の頂点に立つなんて

俺がこの部の監督に就いて

もう10年になるのか

きょうここで勝ち取った

その栄冠は

これまで10年間の

いいやそのもっと前からの

先輩たちの想いも

ぎゅうぎゅうに詰まって

胴上げをされながら

そんなことを考えたら

なおのこと泣けてきて

俺は涙をまき散らしていた

俺が

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『社長がロレックス旅館に忘れたとか言いやがるから』

『社長がロレックス旅館に忘れたとか言いやがるから』

社長がロレックス旅館に忘れたとか言いやがるから俺が休日返上で熱海までクルマ飛ばしてるんだがめちゃくちゃめんどくせえ。

社員旅行は飲んで食って歌って騒いですんげえ楽しかったんだけど社長の忘れ物取りにもっかい俺一人で行くとかそれはだるいじゃん。

これ経費ちゃんと出してくれんのかよとか思いつつブッ飛ばしてたら渋滞だしナビも真っ赤で熱海まで5時間かかるとかふざけんなよ。

社長に熱海むりって言ったら電

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『全国の流通・小売関係 各位』

『全国の流通・小売関係 各位』

「店長これ、本部からの転送メールです

「ほぉ

「発注、増やしときます?

「間に合うなら

「わかりました

「よろしく

「店長これ、本部からの転送メールです

「ほぉ

「発注、戻しときます?

「間に合うなら

「わかりました

「よろしく

「店長、発注の変更間に合いませんでした

「みんなひとり3袋買うこと

「えぇー

「いや俺なんて10袋は買わないと

「ぐぬぬ

「明日の晩はみ

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『神様はいないと思うよって』

『神様はいないと思うよって』

マスターに愚痴ってばかりいたら

アタシとしたことが

終電を逃してしまって

そういえば

4杯目のモヒートを頼むときに

時間だいじょうぶ?って

マスターは訊いてくれてたな

すっかりだめだねアタシ

ヤケになったから

ちょっと濃いめで

ミントが多めのモヒートを

でもこれでラスト

30分後にタクシーを

横付けしてもらうように

マスターにお願いしたから

もうだいじょうぶ

おかわ

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『きっとそれはいつの時代も』

『きっとそれはいつの時代も』

3年ぶりの娑婆の空気は

やっぱりうまい

しかし働く気にはなれず

だいいち働こうにも

まともな仕事がないことも

よぉくわかっている

だからナカで

準備は済ませていた

かなり綿密な計画だから

きっとうまくいくだろう

--

一晩まるまる

高速道路を飛ばして

大きな都市に辿り着いた

昨日の夕方

俺は小さな地方都市の

信用金庫を襲って

みごと現金の強奪に成功

近くの駐車場

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『ノンフィクション カツ4』

『ノンフィクション カツ4』

それは高校二年生のとある昼休み、学食でのできごと。ゆとるがカツカレーの皿をおばちゃんから受け取り、席に着こうとしたときに遭遇した出来事を綴ろうと思う。

そもそもカツカレーとは皇国にのみ神が与えたもうた聖なる食べ物であることに加え、我が母校のカツカレーたるや、まぁそのあれだ、なんだ、うまいんだよ。

自販機でカラフルなプラスチックの食券(リユースするやつ)を買う。カレーが240円とか?そのくらい。

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『素敵な妻になりマス。』

『素敵な妻になりマス。』

ときは昭和40年代

高度経済成長の真っただ中

とある都下の高層ビル屋上

昼の休み時間を持て余す

男性サラリィマンがふたり

煙草を燻らせながら

「やぁやぁ関君、さいきんどうだね?

「ぼちぼちだよ馬林君

「なんだかキミ、顔が浮ついてやしないかね?

「いやぁさすが馬林君だね

「はっは関君のことならすべてお見通しさ

「いやはやまったく…

「いったいぜんたい何があったと?

「その…

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『ひんにょう』

『ひんにょう』

「ねぇあのコ

「どれ?

「あの、いちばん奥の観葉植物の手前

「あぁ、けっこうかわいいね

「なんか震えてない?

「きっと寒いんでしょ

「具合悪いのかなって

「あ、トイレに行ったよ大丈夫

「ねぇあのコ、まだ震えてるよ

「ほんとだ

「声掛けてあげたほうがいいかな?

「やめなよ変なひとだと思われる

「でも尋常じゃないよ震え方が

「あ、またトイレに行った

「戻ったけどまだ震えてる

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『原稿が上がった』

『原稿が上がった』

俺は浮気をしている

妻にはバレていない

バレようがない

日中

妻はバリキャリなので

都会に出て働いている

いっぽう俺は

のらりくらりと

小説と呼べるか呼べないか

ギリギリの線の

駄文を綴っていて

そんな俺にも

色気を覚えてくれる

奇特な女性がいるもんだ

その女性と

なんなら複数名と

交わりを持っている

えぇとなぜバレないか

それは妻の帰りが

遅いこともあるのだ

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『ルーティンに入る』

『ルーティンに入る』

きょうもきょうとて

うるさい目覚ましに

叩き起こされて

さっそくいつもの

ルーティンに入る

歯を磨き

顔を洗い

髭を剃る

髪を丁寧に整え

漆黒のスーツに身を包み

漆黒のタイを締める

きょうの現場は

さほど遠くなくて

定刻より少し前に着いたが

すでに受付は

始まっている様子

さっそくいつもの

ルーティンに入る

フトコロから

袱紗を取り出して

きのうの昼

▲▲

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