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2022年、観たもの読んだもの。

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2022年1月の記事一覧

『オーバーヒート』

『オーバーヒート』

哲学者・千葉雅也氏の著作。二作収録されているのだけど、それを知らなくていつの間にか終わった一作目。二作とも読み終えた後も気づかず「変な終わり方だなあ…」と思ってすみません(笑)

文体がぼくの思考に馴染むまでは異物を身体に接種している感じがしたけれど、慣れてしまえばパンキッシュな文体が心地よくもあったり。

内向的な主人公は自らの内側に湧き上がる言語の海に溺れている。
それをそれらしくパッキングし

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『ムーミン谷の彗星』と『人新世の「資本論」』

『ムーミン谷の彗星』と『人新世の「資本論」』

三十路を過ぎムーミンを読むとは思わなかった。きっかけは予備校講師・小池陽慈先生のツイートだった。

ムーミンが哲学?ムーミンでイヤーな気分?哲学にも精通する国語予備校講師の先生が「世紀の傑作」と評するのだからこれは一読せねば、と手に取ったわけだから単細胞だ。

人間への深い洞察眼が現れた「ムーミン谷」子ども向けに書かれた(訳された?)ものであろうから、ひらがなが多くて読みづらい。論理でつかめないレ

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付録(感銘を受けた『ムーミン谷の彗星』名言・名場面集)

付録(感銘を受けた『ムーミン谷の彗星』名言・名場面集)

付録として前noteの末尾に付そうと思っていたものの、結構なボリュームだったので別のnoteにまとめた。ほとんどがスナフキンにまつわる内容。

スナフキンのミニマリズム「そうだな。なんでも自分のものにして、もってかえろうとすると、むずかしいものなんだよ。ぼくは、見るだけしてるんだ。そして、立ち去るときには、それを頭の中へしまっておくのさ。ぼくはそれで、かばんをもち歩くよりも、ずっとたのしいね」(6

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「愛を読む人」(2009)

「愛を読む人」(2009)

「君に読む物語」という映画を薦められたことがある。そろそろ観てみようと思うに至ったが、観ているとなんだか思っていたのと違う。何でだ、と思ったら違う映画だった。それが「愛を読む人」との出会いだった。

セクシャルな描写もあるので親子での鑑賞などは控えた方がいいかも知れないが、かと言って高校生くらいなら観賞をきっかけに良質な思索がはじまるかも知れない。

映画は、戦後のドイツを舞台に壮年を迎えた男性の

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シャッターアイランド(2009)

シャッターアイランド(2009)

「ディパーテッド」「ウルフ・オブ・ウォールストリート」など、名作を残してきたマーティン・スコセッシ監督✕レオナルド・ディカプリオ主演の名タッグが魅せるサスペンス映画。誰を信じたら良いのか判らなくなる筋書きはよくあるものの、それを更に一歩進めたのが本作だろう。(以下、ネタバレ?)

観る側に主人公の錯乱状態を追体験させるような演出、どこかで観たことがあるなと思ったら好んで観ていたクリストファー・ノー

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