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【BL二次小説(R18)】 恋する王子様⑲


「……」


新開は荒北の目前に膝をつき、手を取って頭を上げさせた。


「新開……頼むよ」


グズグズになっている荒北の涙を、指先で拭う新開。


「困ったな……」

新開はフッと笑った。


「話を全部聞いたら……益々おめさんを好きになっちまった」


「ハァ?」

呆れる荒北。



「余計に結婚したくなくなっちまったよ」


「こンの……!オメーはこんな時まで天然か!」

ガックリと脱力する荒北。


「仕方ないだろ。惚れてんだ」


「新開……。オレは、オメーを騙してたんだぜ」


それを聞いてキョトンとする新開。

「騙してた?べつにお互い敵対してるわけじゃないだろ?おめさんは自国のために当然の仕事をしてるだけだ。国に忠を尽くすおめさんの姿、感動したよ」


「う……」

調子の狂う荒北。




「靖友」


新開は荒北にチュッと軽く口づけすると、両肩を掴んで言った。




「オレを、殺してくれ」



「……ハ?」

眉間に皺を寄せる荒北。




「プランBだ」

新開はニッコリ笑って言った。


「……何言ってンだテメェ」

新開を睨み付ける荒北。



「全てを解決するには、プランBしか……」

「っざけてンじゃねーよ!!」



荒北は新開の手を振り払い、立ち上がって叫んだ。


「何のためにオレが苦労してると思ってンだ!プランBなんて認めねェ!!」

新開を指差して声を荒らげる。



「靖友……。オレが死にさえすれば悠人が第一王子になって、大好きなマリア王女とも結婚出来る。靖友の国も助かる」

荒北を見上げ、諭すように淡々と話す新開。


「うるせェ!そんなのオレが許さねェ!」


「プランAがダメでも、プランBを遂行すれば、おめさんの任務は成功だろ?」


「オレの事なんてどうだってイイんだよ!!」

床をダンダンと踏み鳴らしイラつく荒北。



「オレは……白蟻じゃない。人間だ」


「……!!」

ハッとして、新開を見遣る。



新開の目に涙がにじんだ。


「人間の意地として……断固、結婚は拒ませてもらうよ」


「新開……!」



瞳から涙が溢れ、こぼれる。


「自分の愛する人とは違う相手と結婚するぐらいなら……死んだ方がマシだ」


「オメー……まだそんな……」



「オレは……死んで、自由になりたい。もう、王子の人生なんて、嫌なんだ……」


「新開……」

青冷める荒北。



「もう……解放されたいんだ、こんな運命から。……靖友……オレを救ってくれ」


滝のように止まらない涙。



「その銃で!オレを撃ってくれよ靖友!!」


荒北の足にすがり、見上げて訴える新開。


「……」



「自由になりたいんだ!こんな籠の鳥はまっぴらだ!オレの名前!隼のように!大空に翔び立ちたいんだよ!!」




「……いいのか……ホントに……」


新開の本気を感じ取った荒北は、尋ねた。



「おめさんに最期を委ねられるなんて……最高に幸せだ」


新開は微笑んで答える。



荒北はポケットに仕舞った銃を取り出した。




「靖友……愛してる。あの世でもずっと……。おめさんと出逢えて、本当に良かった……」


新開は充足感に満ちた表情でそう言うと、ゆっくり目を閉じた。



チャキッ。

しっかりと銃を構え、新開の眉間に狙いを定める荒北。





「……ありがとう……靖友」





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