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【BL二次小説(R18)】 恋する王子様⑰


「手こずるようなら、いつでもオレ手伝いますから」


「いらねェ。オレ一人で充分だ」


「そうスか……。荒北さん、絶対無事で帰ってきて下さいよ」


「あァ……」



黒田と呼ばれていた男は、帰って行ったようだ。




荒北が家に戻って来る。

新開は慌ててベッドへ戻り、布団を被って寝たふりをした。



パタン。

荒北がベッドルームに入って来た。



「……」


新開の寝顔を見つめる荒北。


顔を近付け、そっと新開の頬に口づけをする。



そのままベッドに入り、新開に背を向けて横になった。

城へ戻る時間までまだ間がある。
少し仮眠をとろうと思い、目を閉じた。





「おめさんは、誰なんだ」


「!!」


荒北は咄嗟にマットレスの下に手を差し入れる。
ベッドから飛び出して前転。
壁を背にして体勢を整えた。

チャキッ!

新開に向けて銃を構える。




「……!」


その流れるように自然な動作を見て目を丸くする新開。



「ハッ!」


条件反射でとってしまった自分の行動に、荒北は「しまった」という表情をした。



「なんだい……?その訓練されたような身のこなしは……」

ベッドの上で半身を起こした姿で固まったままの新開が驚いた顔で尋ねる。


「……」

銃を構えたまま、黙っている荒北。



ドクン、ドクン……。


深夜の室内に二人の鼓動音が響く。




「いったい……何者なんだ靖友……」


荒北の目を真っ直ぐ見て問う。



「……聞いてたのか……」


荒北が口を開いた。

額に汗が一筋流れる。



「プランBは……オレの暗殺だって……」


「……!」


知られてしまった……。


荒北は観念して銃を下ろした。




「オレぁ……ビアンキ王国の人間だ」


銃をポケットに仕舞いながら荒北は打ち明けた。


「マリア王女の国の……?」


銃を下ろされたので、新開はベッドの上に座り直した。



「オレの正体は、ビアンキ王室の御庭番衆。……つまり、忍者だ。諜報や隠密工作……国の裏の仕事をする部隊さ」


「忍者……」


「マリア姫は何も知らねェ。自分の国にこんな部隊が存在してるなど夢にも思ってねェだろうよ」



「おめさんの主人は……オレの親父じゃなくて、ビアンキ王だったのか」


「あァそうだ」




新開は疑問に思っている事をひとつひとつ質問する。


「オレに近付いたのは……ハニートラップ?」

「!!バカ言え。ハニトラ使うつもりなら最初っからくの一を派遣してる」

荒北はすぐに否定した。



「オメーとこんな関係になったのァ……全くの計画外だった……」


「……」


それを聞いて、新開はこわばっていた表情が少し緩んだ。



「オメーとマリア姫の結婚話は、数ヶ月前から決定していた」

「……そんな前から?」



荒北は語り出す。


「……オレの国ビアンキ王国は、このサーヴェロ王国とは逆側の隣国から侵攻されている」


「……!」


「軍やオレの部隊はそれを阻止するためにずっと戦っている。……だが、うちの国力ではとても太刀打ち出来ねェ。……そこで、うちのビアンキ王は最後の手段に出た」


「それって……」


「そう。オメーの国、サーヴェロ王国に吸収されることだ。国ごと身売りするんだ。……サーヴェロ王は、ビアンキ王国を救済すると約束してくれた」


「親父が……」


「うちのビアンキ王は、一人娘のマリア姫をそれはそれは溺愛している。その娘を他国に嫁がせるのはかなり躊躇っていたが、国の存続のために決断した」


「……」


「それが決議されると、オレの部隊はすぐにサーヴェロ王国の調査に乗り出した。結婚式や国の統合までにはまだ準備に数ヶ月かかる。オレ達の国を飲み込むのはいったいどんな国なのか、その間に知るためだ」


「……」

新開は黙って聞いている。


「だが、懸念することは何も無かった。このサーヴェロ王国は想像していたよりも遥かに平和で豊かで素晴らしい国だった。……それでオレの部隊は次に、マリア姫の結婚相手を調査することにした」


「オレの……?」


「マリア姫はうちの国の大切な財産だ。結婚相手がとんでもねェドラ息子だったら可哀想だからな」


「ドラ息子……」

ガックリと肩を落とし、悲しくなる新開。


「オレは直接結婚相手を見てやりたくて、調査役に志願し、単身乗り込んだ。もしクソ野郎だったらこのオレが再教育してやる!と意気込んでナ。ちなみにサーヴェロ王は、オレがビアンキ王国の間者だとは知らねェ」


「クソ野郎……」

両手で頭を抱える新開。



「だが……実際会ってみた王子サンは……」

荒北は新開を見つめて言った。



「イケメンで、優しくて、誠実で、純粋な……ナイスガイだった……」



「靖友……」

新開は顔を上げる。



「オレは……そんなオメーに……」





── 惹かれちまった ──



荒北はその部分の言葉を飲み込んだ。





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