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歴史あれこれ

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歴史(おもに日本史)について、思うところを綴りたいと思います。
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#仏教

考古学と歴史学と 〜過去を追求する学問とは〜

考古学と歴史学と 〜過去を追求する学問とは〜

九條です。

我が国の過去のできごと(歴史)を専門的に研究する分野には、おもに以下の3つがあります。

(1)考古学
(2)歴史学
(3)民俗学(民族学ではありません)

これらは「広義の歴史学」と言われます。

1.各学問の特徴
以下にそれぞれの特徴をごく簡単に説明いたします。

2.考古学と歴史学
考古学の研究範囲は旧石器時代から始まり、縄文・弥生・古墳・(飛鳥・白鳳)・奈良・平安・中世・近世

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【日本仏教史】人は救われるのか、救われないのか?

【日本仏教史】人は救われるのか、救われないのか?

1.はじめに
仏の教え(仏教)というと、慈悲深い教えであり、全ての人は仏の慈悲によって救われる…と思われがちですが、実はそうでもありません。

ここでは日本の仏教(仏教史)の中において「全ての人は救われる」とする教えと「いや、そうではない」とする教えのそれぞれの代表的な教えを簡単に述べ、その後に「いや、そうではない」という教えの考え方について、なぜそのように考えるのかを簡単に述べます(以下約2,9

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お釈迦様の対機説法 〜学問・教育の極意〜

お釈迦様の対機説法 〜学問・教育の極意〜

九條です。

お釈迦様の教えは対機説法と言われます。

それは、

「難しいことが理解できない人には難しいことは説かない」

「難しいことが理解できる人には積極的に難しいことを説き示す」

という説法です。

なぜお釈迦様がこのような説法の方法を取られたのかと申しますと、

という理由からです。

お釈迦様は相手をよく見て、難しいことが理解できない人には、けっして難しいことは説かず、逆に難しいこと

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古代仏教「唯識」の教え

古代仏教「唯識」の教え

九條です。

私が信仰し学んでいる仏教宗派の法相宗は、今から1300年ほど前の奈良時代に隆盛した南都六宗のひとつで、現存する日本最古の仏教宗派となっています。

その教えは「唯識思想」「唯識哲学」と呼ばれ、人の心の在り方やその働きを観察し、思索し、人の心の本質、人という存在そのものの本質に迫ろうという教えです。唯識仏教とも言われます。

この法相宗(唯識仏教)の代表的なお寺は、奈良の薬師寺と興福寺

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朝焼けの薬師・夕焼けの弥陀

朝焼けの薬師・夕焼けの弥陀

九條です。

夕方の薄明かりの時間帯を「黄昏時」と言いますね。

この黄昏の語源は「誰そ彼」で、人の顔がはっきりとは見えなくなる時間帯なので「誰でしょうか、彼は?」という意味なのです。

ちなみに仏教では黄昏と書いて「こうこん」と読みます。夕方のお勤めの際に読む偈文(短いお経)を「黄昏偈」と言います。

では、朝日が昇る直前の薄明かりの時間帯はなんと呼ぶのかと申しますと…。

今ではほとんど使うこ

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【歴史随想】観音さまの智慧の力

【歴史随想】観音さまの智慧の力

九條です。

これは『妙法蓮華経』(略して『法華経』)の第25番目の章にあたる「観世音菩薩普門品第二十五」の一節です。私が好きな一節でもあります。

仏教のお経のタイトルに付いている「品」(ほん/ぼん/ぽん)という文字は「章」という意味です。そしてこの「観世音菩薩普門品第二十五」は、この章の単品だけで一般に『観音経』と呼ばれています。

さて、観音様は一般的には「慈悲の菩薩」として知られていますが

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古代仏教とお葬式 〜神々と仏の接点〜

古代仏教とお葬式 〜神々と仏の接点〜

九條です。

歴史好きの人や仏教に関心がおありの方ならご存知かと思うのですが、奈良仏教(南都六宗)では、いまでも奈良時代からの伝統を守り続けているのでお葬式は致しません。

日本でお葬式を仏教形式でするようになったのは平安時代の頃からだと考えられているのですが、具体的にその詳しい年代まではよく分かっていないのです。

古い例で申しますと、平安時代中期の中宮定子(西暦977〜1001年:清少納言が仕

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歴史の逆展劇 〜古代仏教のドラマ〜

歴史の逆展劇 〜古代仏教のドラマ〜

九條です。

私が信仰している法相宗(南都六宗のひとつで現存する日本最古の仏教宗派)の根本の教えは「唯識」の哲学。

これは「ただ識あるのみ」という思想。すなわち、私たちが見ているすべての世界は私たちの意識(無意識の領域をも含む)によって成り立っているという思想です。

この「唯識思想」は、法華仏教(法華経を中心とした教え=天台宗、日蓮宗、法華宗など)における「諸法実相」と共通するものがあると思い

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私なりの唯識

私なりの唯識

※この記事は『大阪歴史倶楽部』2022年5月8日の記事をこちらへ移動させたものです。

九條です。

私は古代仏教である奈良仏教(南都六宗)のうちの法相宗の信者なのですが、この法相宗の教えは「唯識」という哲学的な思想から成り立っています。

たとえば…

私が見ている信号の青色と、私の隣に立っている人が見ている信号の青色は、同じ青色だとは限りません。

自分が見ている風景と、自分の隣にいる人が見て

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