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作詩-言葉たち-vol2

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2016年3月の記事一覧

いのちの奇跡

目を閉じたら
全て終わってしまう気がしていた

5歳のわたし

人が生きる仕組みの輪郭を
ぼんやりと知るようになった

息をしていることが当たり前じゃなくなった
身体の奥できこえる鼓動が生きてるうれしさになった

今よりも大事にできていただろう

この息を吐いたらもう吸えないかもしれない
今のどくんで、次のどくんはないかもしれない

次なんてないかも
続いてけるかなんてわかんない

途方もない怖さ

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ささやかな聲

足りない足りない
乾いてゆく地面が

足りない足りない
雨が降らない

曇り空の下で
虚ろな水琴窟の
細やかな聲がないている

横たわっても
聴こえない
清音は
体の奥から響くのね

言葉を為さないせせらぎが
自分の奥に消えてゆく

このおもてを沁み出でて
溶かした氷よ
零れておいで

何が痛みか忘れる前に
愛しい想いがしおれる前に
愛することを怖れぬ前に

あなたに逢いたい 逢いたいのです
砂漠

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変わらないこと

臆病なままでも世界に触れる
怖がりな冬を眠ってすごしたくなる
時折訪れる春の陽気に
少しだけ誘われてもみる

一日一日が四季
一時一時が季節
心が揺れ動くままに雨が降り
夜より昏い夕立が降る

抜け殻より軽い中身の身体が
風に飛ばされても
石より重い心が
陽射しに安らげなくても

一日一日が四季
一時一時が季節
心が揺れ動くままに夜を思い
月の光だけがやさしさになる

燈火でありたい
何を見失って

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deep breath

自分の足で立つこと
それがなければ言葉を紡ぐことすらできないのかもしれない
でも それでも

心が苦しいまま
あなたを縛り続ける道を行かなくてもいい

きっと守りたいもの
大切にしたいもの
たくさんあって
守るために大切にするために
苦しくてもなお進む人もいるだろう

だからこそ、頑張りすぎないでほしい

辛いなら立ち止まって
休んだっていい

あなたを駆り立てるその衝動が
あなた以外の思いである

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幸せであるために

ほんとうになにも見えない時は
そこが光か闇かもわからない

ただただ
漂っている
波間に揺られ
同じ空ばかり続いてゆくようで
藻掻くことにも疲れてしまって

けれど
投げ出しきれない心の泣き言が
唇を弱らせる

かなしみを遮断した左脳の回路から零れ落ちる
涙のひとしずくが
裏腹な言葉を結ばせる

その奥底で幸せになりたいと叫びながら

伸ばした手の行方が
光でも闇でも
此処がどこかを知りたい

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春の雨が近づけば
空気もやさしくなるようだ

雨の帳に包まれて
微睡むベッドに横たわると
そっと揺られてゆりかごのよう

雨が奏でる旋律に
この身をすべて預けたら
たとえ体が冷えたって
きっとあたたかいんだと
願ってる

雨のぬくもりに
気づけたなら
どこか愛しい夜になれるね

圧倒的な道に

平日の午前中
たくさんの人が
似通った服を着て
似たような足取りで
同じ道を同じ方向へ歩いてゆく

行き先はみんな違うのだろう
見えている景色も違うのだろう

けれど、これだけ多くの人が
同じような営みを日々繰り返す
その光景は異様な圧力を持っているように思う

疑いもせずに歩き続けるその道には
誰のレールが敷かれているのだろう

自分一人で織り上げられるものなんてない
けれど自分が紡いでゆきたい

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