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フランス詩を訳してみる

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#フランス語

ひよこのるる訳詩目録

2018年11月以来発表してきたぼくの訳詩約70編の、作者別の目録です。もし気に入った作品を見つけたら、同じ作者や時代の他の作品も読んでみていただけたらとてもうれしいです。

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作曲家・ミュージシャン別の索引も用意しております。

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以下、作者の生年順に並べています。

Marcus Valerius Martialis/マルクス・ウァレリウス・マルティアリス(ローマ)
c.40-c.

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ジャン゠ピエール・クラリス・ド・フロリアン「愛の喜び」(フランス詩を訳してみる 27)

Jean-Pierre Claris de Florian (1741-1816), Plaisir d’amour (1784)

愛の喜びは つかの間のうちに過ぎ
愛の苦しみは 死ぬまでとどまる。
裏切者のシルヴィ きみのためぼくはすべてを捨てた
そしてきみはぼくを捨てて ほかの男のもとへ走る。
愛の喜びは つかの間のうちに過ぎ
愛の苦しみは 死ぬまでとどまる。

この水が 野をうるおすあの川

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フランシス・ジャム「ろばたちと一緒に天国へ行くための祈り」(フランス詩を訳してみる 26)

Francis Jammes (1868-1938), Prière pour aller au Paradis avec les ânes (1898)

あなたのもとへ行かなければならないときは、神さま、
村々に塵がきらびやかに舞う日にしてください。
ぼくがこの世でいつもそうしていたように
ぼくの気に入る道を自分で選んで
真昼にも星が輝くという天国へ参らせてください。
ぼくは杖を手に取って、広

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デボルド゠ヴァルモール「サアディーの薔薇」(フランス詩を訳してみる 23)

Marceline Desbordes-Valmore (1786-1859), Les roses de Saadi (c.1848)

わたしは今朝あなたに薔薇の花を贈りたかった
けれども摘んだ薔薇を帯にたくさん挿しすぎて
きつく締めた結び目は持ちこたえられなくなった。

結び目ははじけた。薔薇の花は空を舞い
ひとつ残らず海に向かって飛んでいった。
そして潮に流されたきり戻ってこなかった。

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格を気にするひと(訳者あとがき2)

格を気にするひと(訳者あとがき2)

このところ翻訳する中で、格を気にさせすぎない日本語にする、ということを気にしていることがある。

学校で習う英文法では

〈主格〉  I  私が
〈所有格〉  my  私の
〈目的格〉  me  私を/私に

というのがある。ドイツ語やフランス語にもだいたい同じようなものがある。日本語文法では「ガ格」「ヲ格」「ニ格」などと呼ばれていて、これも似たようなものだ。

しかし、ぼくらは普段それほど格を意

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リルケ「白鳥が 自分自身に取り囲まれて…」(フランス詩を訳してみる 20)

Rainer Maria Rilke, Vergers XL (1924)

消しゴム山さんが翻訳・紹介されていたリルケのフランス語の詩を、ぼくも訳してみました。

白鳥が 自分自身に取り囲まれて
水の上を進んでいく、
まるで滑らかに移動する絵画のように。
このように 私たちの愛する存在は
時として 移動する空間そのもの
となる ことがある。

愛する存在は 水の上を進む白鳥のように
私たちの乱れ

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クレマン・マロ「自分について」(フランス詩を訳してみる 16)

Clément Marot, De soy-mesme (1538)

今やかつての私ではなく
二度と若返ることもできない。
美しかった私の春も 夏も
窓から飛び降りてしまった。
愛の神よ、あなたをわが主と仰ぎ
どの神にもまして仕えてきました。
ああ もしも生まれ変われたなら
もっと良くあなたに仕えられるだろうに。

(清水謙子の訳を参考にした。)

Plus ne suis ce que j’a

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ミュッセ「悲しみ」(フランス詩を訳してみる 14)

Alfred de Musset, Tristesse (1840)

僕は 力と生命を失った。
友人たちと快活さを失った。
自分の天才を信じさせていた
僕の誇りまでも失った。

僕が〈真実〉を知ったとき
彼女と友達になれたと思った。
彼女を理解し 感じ取ったとき
もう彼女を嫌いになっていた。

それでも真実は永遠である。
真実をそっちのけにした者たちは
この地上で全くの無知なのだった。

神が語

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ラマルティーヌ「秋」(フランス詩を訳してみる 13)

Alphonse de Lamartine, L'Autmmne (1819)

ごきげんよう! わずかに緑の残る林よ、
まばらに黄色くなっていく芝生よ、
最後の美しい日々よ! 喪に服する自然は
傷ついた心に似つかわしく 僕の目を和ませる。

誰もいない小道を 僕は夢見心地で辿っていく、
暗い林の足元を淡い光で照らす
衰えつつあるあの太陽を
最後にもう一度見たくて。

そう、朽ち果てようとしている

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ユゴー「こうして季節が暮れて……」(フランス詩を訳してみる 12)

Victor Hugo (1861)

先日のランキングで35位になっていたヴィクトル・ユゴー(1802-1885)の秋の詩を訳してみました。1902年になって出版された遺作です。

フランス詩人気ランキング

poetica.fr という、フランス詩を読んでコメントを投稿できるサイトを見つけました。「いいね」の数とコメントの数が表示されているので、「いいね」の多い順(同じならコメントの多い順)にソートして、上位300編を並べています。タイトルの右が「いいね」の数、括弧の中がコメントの数です。ぼくがこれまでに訳したものには★をつけています。

1. Paul Eluard : Liberté 24000

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ボードレール「アホウドリ」(フランス詩を訳してみる 10)

Charles Baudelaire, L'Albatros (1861)

『悪の華』第2版より。

しばしば水夫は慰みに捕まえる、
底深い荒海を滑りゆく船に
気だるげについて来る
雄大な海鳥アホウドリを。

甲板に降ろされるや否や
蒼天の王者は おずおずと不器用に
大きな白い翼を 惨めったらしく
櫂のように両脇に垂らす。

天翔る旅人の 無様でだらしないこと!
かつての偉丈夫の 滑稽で醜いこと

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ラマルティーヌ「湖」(フランス詩を訳してみる 9)

Alphonse de Lamartine, Le Lac (1820)

日本での知名度は低いですが、フランス・ロマン主義を代表する詩です。全64行と、これまで訳してきた詩よりも大分長いので、読み通しやすいように、いつもより若干意訳の度合いを強くしています。

(村上菊一郎・窪田般彌・入沢康夫の訳を参考にした。)

Ainsi, toujours poussés vers de nouveaux

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ユゴー「明日、夜が明けて」(フランス詩を訳してみる 8)

Victor Hugo, Demain dès l'aube (1847)

明日、夜が明けて、野が白く染まりはじめたら、
僕は出かけよう。きみが待っているのが分かるから。
森を越えて、山を越えて、僕は行こう。
これ以上きみから離れてはいられないから。

僕は歩くだろう、心の内だけを見つめて、
外のものは何も見ず、何も聞かず、
ひとり、知られず、身をかがめ、手を組んで、
悲しく、昼も僕にとっては夜

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