リルケ「白鳥が 自分自身に取り囲まれて…」(フランス詩を訳してみる 20)

Rainer Maria Rilke, Vergers XL (1924)

消しゴム山さんが翻訳・紹介されていたリルケのフランス語の詩を、ぼくも訳してみました。

白鳥が 自分自身に取り囲まれて
水の上を進んでいく、
まるで滑らかに移動する絵画のように。
このように 私たちの愛する存在は
時として 移動する空間そのもの
となる ことがある。

愛する存在は 水の上を進む白鳥のように
私たちの乱れた魂の上を
二重になって近づいてくる……
そして私たちの魂が この存在に
幸福と 不信の
ふるえる映像を付け加える。

(消しゴム山さんの投稿のほか、山崎栄治の訳を参考にした。)

Un cygne avance sur l'eau
tout entouré de lui-même,
comme un glissant tableau ;
ainsi à certains instants
un être que l'on aime
est tout un espace mouvant.

Il se rapproche, doublé,
comme ce cygne qui nage,
sur notre âme troublée...
qui à cet être ajoute
la tremblante image
de bonheur et de doute.

 *

ヒンデミットによる合唱曲(「6つの歌」第2番、1939年)、サミュエル・バーバーによる歌曲(「過ぎ行きし者の歌」第2番、1951年)があります。

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