桔梗

変態だけど、淑女でいたい。 SMという生き方を選びます。 面白いことだけを、やっていき…

桔梗

変態だけど、淑女でいたい。 SMという生き方を選びます。 面白いことだけを、やっていきたいよね。

記事一覧

幸福

ダメな人生。だめなだめな人生。 仕方が無いよ、変われないからね。 わたしは何なのだろう。取るに足らないのに人間なのに。 わたしは人と話す時、目を見たりはしない。 …

桔梗
1年前
3

わたしはバスに乗って、職場に向う。 仕事は嫌いだけど、朝のバスは好きだ。 始発駅の次だからかもしれない、わたしが乗るバスはいつも空いていた。 後部座席で、あの人は…

桔梗
1年前
8

慈愛

久しぶりに会ったMは、わたしを歓待してくれた。 いっぱいの笑顔と、聞き分けの良い返答。 わたしの話を聞きたかったんだって。わたしに会いたかったんだって。 ずっとニコ…

桔梗
1年前
4

いつでも誰とでも

妄想の一つです。 わたしが誰彼構わず寝ていたということ。 だってそれはとても簡単だったから。 飲み屋のカウンター。 スマホと一緒に酒を飲んでいるサラリーマン。彼の…

桔梗
1年前
12

プロ意識

責任の範疇を定めたいと思う。 「お客様は神様」価値感の延長上にしか人生がないのは、哀れすぎるだろう。 ひたすらに消費者の生き方。それはそれで楽なのかもしれんけど…

桔梗
1年前
7

ベランダの手すりに、鳩が止まった。 早朝の、冷えた日差しと鳩。 今日もいい一日になるなあ、と思っていたら、プリケツからフンをひり出した。 こんなに近くで、鳩がフン…

桔梗
1年前
1

海の近くに引っ越し

海と空の美しい、見晴らしの良い場所に引っ越した。 自分が狭く小さくなっているのがわかって、とても憂鬱な日々が続いていた。 何にも心が動かず、どんどん熱が低くなっ…

桔梗
1年前
1

心躍る

ここ3〜4年、沈んでいた。 気分が落ちていた。 世界中が風邪をひいて引きこもって、みんなみーんな落ち込んで、当然と言えば当然、わたしもその中の一人になったわけだ。 …

桔梗
1年前
2

見事なビアさばき

珀色のビールを注ぎ、真っ白な泡を重ねて、溢れ出た液体をスプーンで切る。 真綿のようなアワが琥珀に重なる。 開業60年目にして閉店する、とあるビアホールでの光景だ。…

桔梗
1年前
1

これから

生き方としての変態淑女。 わたしは薬剤師で口に糊をしており、サディストでもある。 薬剤師は正確さが一番、サディストは加虐性が一番であろうと思う。 正確さとは、薬…

桔梗
1年前
幸福

幸福

ダメな人生。だめなだめな人生。
仕方が無いよ、変われないからね。
わたしは何なのだろう。取るに足らないのに人間なのに。

わたしは人と話す時、目を見たりはしない。
そんな不躾なことはしない。第一、目なんて怖くて見れない。
その人の考えていることがわかるから。
「とるにたらないやつだ」とバレてしまうから。

鶴を見た。檻の中にいた。
檻の中で、中途半端に羽根を広げ、「ケー」と鳴いていた。
本当なら、

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熱

わたしはバスに乗って、職場に向う。
仕事は嫌いだけど、朝のバスは好きだ。
始発駅の次だからかもしれない、わたしが乗るバスはいつも空いていた。
後部座席で、あの人は本を読んでいる。
日焼けした褐色の肌、丸刈りの頭髪、黒縁の眼鏡、ページをめくる指は固く動かないようだ。
紺色の擦れた作業着の胸元に、社名の刺繍が施されている。
手にしている文庫本は古びて、肌と似た色になっている。
彼はそれを、毎日読んでい

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慈愛

慈愛

久しぶりに会ったMは、わたしを歓待してくれた。
いっぱいの笑顔と、聞き分けの良い返答。
わたしの話を聞きたかったんだって。わたしに会いたかったんだって。
ずっとニコニコ顔。
桜を見に行こうだってさ。
わたしと桜だって。

個室の割烹。
親切な店員たち。
わたしはテーブルの下の、Mの足を思い切り蹴る。
のけぞるM。それでもニコニコとしている。
わたしはMが大嫌い。このニヤケ顔も虫唾が走る。
それがM

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いつでも誰とでも

いつでも誰とでも

妄想の一つです。
わたしが誰彼構わず寝ていたということ。
だってそれはとても簡単だったから。

飲み屋のカウンター。
スマホと一緒に酒を飲んでいるサラリーマン。彼の視野に入るところに座って、わたしは時折彼のことを見る。
手元の画面から、色の塊が消えたり現れたりして、何も考えないひと時に酔い始めている。
背中を丸め、肘をついて、ジョッキを飲み干す。小指で画面を操作する。
また色を消えた。
彼はほんの

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プロ意識

プロ意識

責任の範疇を定めたいと思う。

「お客様は神様」価値感の延長上にしか人生がないのは、哀れすぎるだろう。
ひたすらに消費者の生き方。それはそれで楽なのかもしれんけど。
責任感を持って、とか、持つべきという正義面の言葉を吐くやつに見え隠れする、「絶対に責任をとりたくない」の表情の卑劣さ。
自己決定出来ないモノ独特の弱さ。
でも、そんなやつが、わたしより権限が上だったりするからなあ。

わたしは薬剤師な

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鳩

ベランダの手すりに、鳩が止まった。
早朝の、冷えた日差しと鳩。
今日もいい一日になるなあ、と思っていたら、プリケツからフンをひり出した。
こんなに近くで、鳩がフンをひり出すところなんて見たことないので、やらせるままにする。
1回では終わらず、クルックーと2回、3回と続く。
無表情の鳩フェイス。テンポよくひりだされるフン、フン、フン。
鳩と目が合った。クルックーの首前後。鳩はわたしの存在を認識してい

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海の近くに引っ越し

海の近くに引っ越し

海と空の美しい、見晴らしの良い場所に引っ越した。

自分が狭く小さくなっているのがわかって、とても憂鬱な日々が続いていた。
何にも心が動かず、どんどん熱が低くなって、冷たく固くなっている私自身が本当にイヤで、思い切って引っ越した。
めちゃめちゃ金がかかった。
貯金通帳を見て、鼻血出た。
体力も消耗した。
でも、家電や家具を買い、食器をそろえ、カーテンをあつらえて、わたしの部屋が出来上がると、気分が

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心躍る

心躍る

ここ3〜4年、沈んでいた。
気分が落ちていた。
世界中が風邪をひいて引きこもって、みんなみーんな落ち込んで、当然と言えば当然、わたしもその中の一人になったわけだ。
「みんなそうだよ」でも気持ちは個人的なものだから、やはり辛い。

わたしは薬剤師で、病人に薬をお渡しするのが仕事だから、こういった感染症の大爆発が起きると、めちゃくちゃ忙しくなる。
cov19お届け、0410対応、ひっきりなしに来局する

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見事なビアさばき

見事なビアさばき

珀色のビールを注ぎ、真っ白な泡を重ねて、溢れ出た液体をスプーンで切る。
真綿のようなアワが琥珀に重なる。
開業60年目にして閉店する、とあるビアホールでの光景だ。
土曜日、いつの気にもなっていたけど入ることがなかったその店に、私は行った。

木枠のドアはズレているし、ガラスケースは曇っているし、白だったであろう壁はもはや灰色に近くなっているし、別の意味でインスタ映えしそうな、昭和レトロもレトロ。

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これから

これから

生き方としての変態淑女。

わたしは薬剤師で口に糊をしており、サディストでもある。
薬剤師は正確さが一番、サディストは加虐性が一番であろうと思う。

正確さとは、薬剤師の職種で言えば、細かさと同義だと感じている。
医療のゴールキーパーと、薬剤師は形容されることがあるが、まあ8割くらいは当たっているだろう。
処方が100枚があるとする。
その100枚は問題の無いものでも、101枚目が間違っていたとす

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