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導きの花

不幸の滅却。

汝は自我を愛する。

あたかも我が子のように。
あたかも恋人のように。
あたかも親友のように。

人は自我を過度に愛着するがゆえに苦しむ。

自我は我々に何の利益をもたらすか。
我々を幾度となく地獄の獄卒の手に引き渡し。数え切れないほど地獄の業火に投げ入れ。我々に数多の苦痛をもたらした。

数千生の輪廻を経巡り。数多の有為転変を果たし。我々を苦の牢獄に縛りつけるこの自我は。一体何の役に立つか。

苦しみの根元は自我である。

自我ゆえに転生し。
自我ゆえに苦しみ。
自我ゆえに悪業を犯す。

かような諸悪の根元である自我に一体何の利益があるか。それを深く熟考せよ。

人は自我を命に変えても守りたいと思っている。苦しみの集積であるこの自我に過度に囚われ。数多の苦しみを起こさしめ。現に今この時を以て。苦の深海に沈みゆく。

私は苦しみを嫌悪する。

ならばなぜ。苦しみの集積であるこの自我を嫌悪しないか。

私は苦しみから逃れたい。

ならばなぜ。苦しみの集積であるこの自我を手放さないか。

自我を持つこと敵の如しと捉えよ。

自我を手放さずして苦しみから逃れ得ることは叶わない。

それは火を持つと火傷を免れないことに等しい。

苦しみたくない。
苦しみから逃がれたい。
苦しみから解放されたい。

もしも汝がそのように願うのなら。
自我を手放せ。

自我は苦しみである。
自我は苦の業火である。

そのようなものを心に飾り。
苦しみに思い悩まされるのは不和である。

自我あるならば苦しい。
それは当然のことである。

ゆえに自我を滅せよ。
自我を滅ぼす平等心に心を向けよ。

それが汝に幸福を現す。

他人を過度に愛着するならば。その者は他人に対して惜しみのない奉仕を施す。恋人の為なら命さえ投げうち。愛人との邂逅を願ってあらゆる苦痛にも耐え忍ぶ。その忍耐と愛を全生命に向けよ。

一切衆生に惜しみない愛を持て。

あたかも恋人のように。
あたかも親友のように。
あたかも我が子のように。

全ての生類に敬愛の心を持ち。
生きとし生ける者を決して害することなく。一切は等しいという認識の元。
全てを平等に愛しなさい。

一切は平等である。

ならば何故。
汝は自己だけの安楽を望むか。

自らが幸福を望むなら他人もまたそうである。

自らが不幸を望まぬなら他人もまたそうである。

誰もが幸福を望み。
誰もが不幸を望まない。

ならば何故。
汝はそれら他人の願いを無視するか。

なにゆえに他人を自己と無関係な者と見なすか。

一体どんな特権があって自己の安楽だけを貪るか。

自己と他者との間に何の区別があるか。
皆等しく生命ではないか。
皆等しく身体を有する者ではないか。
皆等しく迷える者ではないか。

この世に自主独立で動くものは一つとして存在し得ない。全てのものが互いに影響を及ぼし合う。然るに。なぜ汝は己が楽だけを求めるか。なぜ汝は己が楽を他者にも与えぬか。なぜ汝は他者を自己と平等な者と見なさないか。

自己本位の幸福に何の価値がある。

己の欲求を満たす為に他者を陥れ。他者を苦しめ。他者を踏みつけ。他者を土台として。自らがあらゆる富と名声を得ることに。汝は如何なる喜びを感じ得るか。他者に対する敬いの心なく。及ばぬ異性。及ばぬ富。及ばぬ名声などを欲し。またそれらを獲得することなく。下劣な欲望に駆られたがゆえに他者を傷つけ。罪悪は増し。負債は貯まり。恐ろしい罪過だけが汝の面前に残っている。

自利を求めて何になるか。
欲望を求めて何になるか。

無意味な努力は不幸を生む。

無価値な行いにより汝の面前には恐ろしい罪過だけが残る。その報いを受けるにどれ程の苦痛が伴うか。何も成功することなく。何も達成することなく。何もかもを失い。何もかもの不幸を背負う。今生来世において不幸をもたらす原因は煩悩である。自利と煩悩が我々に何の利益をもたらすか。そのことを深く熟考せよ。

他人を蔑み何の利益があるか。
他人を妬み何の価値があるか。

他人を哀れみ愛することこそ私に相応しいことだ。そのような心こそ正常である。

他者との抗争。
そこから派生する怒り。嫉妬。傲慢。嫌悪。憎悪。

これらは等しく我々を滅ぼすものではないか。

他者との争いに何の価値があるか。
それは自他共に破滅をもたらすものである。

それは我々には相応しくないと想うなら。
それはまことに正常な心である。

他者を平等に見ることなく。
他者に敵対心を燃やし。
他者との抗争に明け暮れる。

このような者は夢の中でさえ地獄を見る。
そして来世では本物の地獄に赴く。

かような不利益を被る敵対心という悪魔を強く滅ぼせ。

そこにあるのは破滅のみ。
ゆえに相応しからぬ心の所作を捨離せよ。

一切成就は心を根本とする。
心が拠り所を失えば。たちどころに全ては瓦解する。ゆえに心をあまねく観察し。正念正智を以て。心を強く正しく保て。さもなくば。心は拠り所を失い。瞬く間に崩れ落ち。悪心により。全ては苦しみの巣窟と成り果てる。

それゆえ心を正しく保ちなさい。
これが修行の根本である。

正しきを学び。正しき思念を持ち。正しき心を形成し。正しき行いを為し。正しき言葉を語り。正しき念を保ち。正しき人生を歩み。正しき修行を以て。正しき解脱に赴き。正しき智慧を得る。

これが仏陀のお説きになられた八正道である。

転生の巷にさすらいを覚える汝らは。この偉大なる智慧の王の教えに従い。正しく修行に励みなさい。

それが汝の為すべきことです。

ゆえに稀なる者よ。
ダルマの道に恐れなく進め。

今汝らが恐れなく立っている場所が一番恐ろしい場所である。

汝らは無明に陥るがゆえに悪業の果報を知り得ない。
汝らは明智を欠くがゆえに悪業を犯している事実に気付けない。
汝らは智慧なき所業ゆえに自らで破滅の道を辿ることに気付けない。

ゆえにその道から脱却するダルマこそ救いである。

汝らが恐れるべきはダルマを知り得ない現状である。現状が最も最悪の状態だと捉えよ。ゆえに恐れなくダルマに進め。ダルマこそ希望であり。ダルマこそ救いであり。ダルマこそ幸福である。

ダルマは全ての苦しみを滅する。
そして永遠の大楽を現す。

それゆえダルマこそ果報であり。
ダルマこそ破滅から逃れ得る唯一の手段である。

ゆえに苦しむ者よ。
ダルマを求め幸福となれ。

ニルヴァーナには如何なる苦しみも存在し得ない。それゆえに大楽である。

ニルヴァーナとは苦しみの滅尽である。

修行とはニルヴァーナに至る為の手段である。

ニルヴァーナを求め修行に励むことが人生の目的である。


それゆえ稀なる者よ。
真理との縁を無駄にすることなく。
正しく物事を考え。正しく思索熟考し。
正しき結果をこの世に示せ。
今何を為すべきか。
そのことを深く熟考せよ。

救いはダルマにある。
ゆえにその道を歩め。

苦しみを滅ぼす為。
永遠の幸福を得る為。
衆生の幸福の為。

限りない真理の正道を歩め。

愛しき修行僧よ。。。



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