マガジンのカバー画像

小説、詩、歌詞

49
小説、詩、歌詞。話題は様々ですが、どれも若い頃の、切羽詰まった気持ちで統一されています。
運営しているクリエイター

記事一覧

“ブルータートルズ”とその他の物語

“ブルータートルズ”とその他の物語

“Blue Turtles” and the stories

(1.In a cage 檻の中
Hirofumi Sugawara

エレベーターのドアが開き、同い年ほどの若い女が二人 出てきた。二人は淡灰色の廊下にヒールの音を軽く響か せて歩く。心持ち背の高い女が振り向き、ここなの、と 言いスチールのドアの前で立ち止まる。財布から鍵を取 出し、音をたてて錠を開ける。
入って、少

もっとみる

街の秘密

フェンスの青いペンキが剥げ落ちていく

僕は車で町を通り抜ける

窓は弾丸に砕けていく ガソリンの匂い

動く物の気配は無い

階段を駆け登り、二階へ上がる 部屋の扉を打ち破る

彼女は 白いシーツの上で眠っていた

晴れた空の雲の影が ゆっくりと過ぎて行く

太陽に囚われた町

もっとみる

一緒にいよう

朝方の五時 夏が目覚める
夜明けを抱きしめる
キャサリンとヒースクリフみたいに
繋がっている
長い髪の人見ると 君じゃないかと 胸が高鳴る
雨 見つめていても 青空見ても 思い出す

I want to keep you stay with me
I want to feel your existence
Want to spend time hearing your voice please s

もっとみる

彼女は謎をくれる

平野へとドライブしている

ウインドウは開いていて、地上に何かが輝く

ボンネットでパンを焼けるくらいの熱

彼女は友達のことを話す

彼女らしい言葉で、僕を笑わせる

彼女にギアを握らせ、その上に手を置く

夜に、彼女が言った言葉を思い出す

それを感じている

彼女は解けない謎を僕にくれる、体の奥深くへと

もっとみる

葡萄の木のかたち

9才の夏に、父が車で海岸へ連れていってくれた

工場の煙突が空に向かって立っていた

どこに行くの? と尋ねると、父は、「俺達の飯の種」と答えた

カーラジオからバンドの音が流れ、僕は歌った

全てのものの輪郭は、太陽であらわだった

僕の体は、太陽で熱くなった

僕は水を飲みたくなった

沿道の家で、水を貰った

僕達の車の輪郭が、はっきりとしていた

ひいきの球団が負けて、父は顔をしかめた

もっとみる

寺院への小径

蝉の騒ぎが、丘を包む

僕は細い道を歩いている

風が木の葉を揺らして、涼しさを運んでくる

小径を歩いて、寺院へと向かっている

町では、陶器の市が立った

赤や青のセロファンの中で、碗が音を立てる

僕は、木の陰へと向かっている

宇宙に近い、山の上の

背の高い杉が新しい空気と匂いを吐き出す

僕は細い道を歩いている

苔の生えた石を踏む

古い、小さな小屋に向かって登る

もっとみる

北国の鳥

河の側にあるアパートに住んでいたことがあった

休みの日には、一日をそこで過ごした

仕事のことも、色んな煩わしいことも気にせずに

河には砂洲があり、潅木が茂って、鳥達が住んでいた

僕はベランダの手摺にもたれて、それを眺めた

鳥達はいつも素早く飛びまわり、春には巣に餌を運んだ

或る晩、彼等はいつ眠るんだろうか、と考えた

彼等の眠りと、みる夢がどんなものか、想像してみた

僕は砂洲に行って

もっとみる

夏の感情

自分達だけの国道 この浜に、二人で来た

太陽の熱 海と空は、一つの曲線に溶け合う

松の木を見る 波の音を聴く

沖からの風に吹かれて 口を噤む

夏の感情 言葉は空の高みへと

あなたの唇 君は世界の秘密を知っている

雲の影が キリン達のように過ぎていく

僕達は動物みたいに 太陽を体で感じる

君の歌う歌は 強い風に舞い上がる

もっとみる

愛の市場

世界は気が狂っていて空虚だと、もっと早く気がつくべきだった

だけどそれは愛の流れで、色んな物達は光の粒を放っている

自分は単に屋根に過ぎないと、もっと早く知っていればよかった

僕の下には空っぽの空間と柱だけがあって、空気を遮る壁はない

女の子が僕を見て、この空虚な建築に入ってくるなら

彼女に遠い海と山と、街を見せよう

そこには市が立っていて、人々が歌っている

Yea…!

僕は、この

もっとみる

モナミ

公園に出掛けよう、モナミ 外は晴れている
太陽が髪を輝かせるよ
子供達が話し掛けてきて、君も応える
鳩の声が気持ちをひきたててくれる
Lu…

君が何を思っているのか、わかるような気がする
だけど、彼はもう戻ってこない 君もそのことを知っている
何を言えばいいのか、…

君が忘れるまで、待ちたい 僕の方を向いてくれるまで
きっと時間が、色んなことを解決してくれる
Lu…

もっとみる

Pleasures〜楽しみ

ベットの中に隠れて、彼女の髪の感触を思い出している

何もすることがないのに、色んなことで頭が一杯になる

数時間前、僕達は同じシーツの上にいたが、彼女は昼の世界へと出ていった

僕の方は、ここ数日の記憶を辿る時間が欲しいと思っている

何か手掛かりがあるはずだ 考えて、動くしかない

何も良くなっていない、だけど俺は生きているのが楽しい

状況が、何かのコミュニティーにアクセスすることを促す

もっとみる

冬空の下の樹木

ケヤキ並木の道に僕達はいた、赤や黄に染まった葉が舞っていた

クリスマスの時期で、幾万の豆電球が点っていた

五月には、パステル色を幾つも重ねた葉に包まれて

太陽の斑点が中央分離帯の地面に揺れていたことを、僕達は思い出した

彼女の表情は、何よりも僕を安心させた 笑いの中で、何も心配していなかった

僕達は、通りの人達について

そして彼等が何の話しをしているのかについて、話しあった

この冷た

もっとみる

心と体を使おう

松の木の影が、空を背景に黒く映る
空気は、インクの藍に染まる

潮の風 冷たさを吸い込む
まだ太陽が昇る前の

僕等の人生の扱い方
体と心を目いっぱい使おう
自分の人生を生きたいと望む気持ち
この感覚を人に伝えよう
浜の木々は、まだ成熟していない

もっとみる

暗闇の中の跳躍

最後の日の光が落ちて

窓を通して車と人の喧騒が聞える

スティックでリズムを鳴らす

この歌と気持ちの結末がどうなるかなんて、知らない

列車は轟音をたてて走っていく、…

サウンドは空気を揺さぶる

僕は自分の見たものを信じる、それは暗闇での跳躍だった

本当のことは、どうやって明かされる?

多くの閃きが、孤独な夜に隠されている

もっとみる