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ある “失踪本” を追い求めて
手元にあるはずの本が “失踪” してしまい,自宅に積み上がっている段ボール箱をあれこれ開封しまくったがいっこうに埒が明かない.いったいどこに隠れているのだろうか.職場からの全蔵書を引っ越しさせた〈プロジェクト撤収〉の “負の遺産” はときにこうして表面化する.
たいていの場合,探している本の方から「ここだよー」と声がかかるのだが,今回の本は沈黙を守っている.まさか貸し倉庫じゃあるまいな.探索本の
オモテが出ればボクの勝ち,ウラが出ればキミの負け
同じ研究機関に30年余りも長居していると,人生の相談事をいろいろ受ける機会がある.つい先日も「 “なろ天守閣” で御奉公せよとの打診があったのですが,断っても “ブラックリスト” に載らないでしょうか?」との悩みの相談があった.昔から “参勤交代” の風習があるなろ城下町ではこういう人事異動の話はよく耳にすることだ.農水省直下の研究組織としては,行政とのインターフェイスの “面積” は大学や企業に
もっとみる藤沢でのプレゼンテーション高座を終えて
はじめに — 〈プレゼンテーション入門〉の楽屋口
2020年10月から2021年1月までの秋学期に,藤沢市にある日本大学生物資源科学部で〈プレゼンテーション入門〉なる講義を担当した.対象となる受講生は食品ビジネス学科の学部1年生で,受講者名簿には120名あまりの人数がリストアップされていた.学部の1年生ということはついこの間まで高校生だったわけだ.
緊急事態宣言が出るようなご時世なので,開講直前
読売新聞読書委員の任期を終えて
読売新聞読書委員会の納会(2020年12月15日)から一夜が明けて,ワタクシは晴れて “自由の身” となった.二年前に読書委員になったときから,居室の書棚の一角に「読売新聞書評担当本の棚」をわざわざ用意した.そして任期を終えてみると,その棚には前後二段計60冊あまりの書評本がぎっしり詰め込まれている.ワタクシの任期中の掲載書評数をカウントしてみたところ,今月の掲載予定分も含め,計59本(大評40本
もっとみるオンライン授業千秋楽を迎えた日
この4月以来3ヶ月におよんだ東大理学部の「生物統計学」オンライン高座が昨日7月9日(木)に終わったので,忘れないうちに下記に備忘メモを残しておく.
講義内容は例年の “80%” ほど例年通り全12回の高座だったが,4月9日(木)と4月16日(木)は「試行回」という位置づけだったので,実質的な講義は4月23日(木)から開始された.スタートが遅かったので,その後も順繰りに講義項目を後にずらしていった
鵜飼保雄さんの訃報に接し,かつての記憶をたどる
私が農林水産省の選考採用に合格して,4年半に及ぶ無給の “オーバードクター” 生活に終止符を打ち,つくば市観音台にある農業環境技術研究所(農環研)に赴任したのは,1989年10月のことだった.似合わないスーツで農環研に初出勤し,所長室で辞令を手にしたのち,5階の555号室に向かった.私の配属先は環境管理部計測情報科調査計画研究室で,今日からの仕事場になることが決まっていた.
やや緊張しながら研究
大学非常勤講師の給料をめぐるあれこれ
いま話題になっているはてな匿名ダイアリー「残念ながら大学の非常勤講師の報酬額が安いのは「侮辱」ではない」(2019年11月17日)の記事中に「ある大学の専任教員が別の大学の非常勤講師をやるというケースはいまだに少なくない。ポスドクと違ってどういう動機で引き受けているのかわからない」と書かれているので一言.
なろ城下町に本務地があるワタクシがずっと複数の大学で非常勤講師を兼業で続けてきたきっかけは
高座心得 —— 噺と紙芝居について
ワタクシはこれまで数々の “お座敷” で “噺” をする機会を得てきた.参集したお客さんたちに「わざわざ来てよかった」と感じてもらえることが “噺家” としての研究者の責任だろう.この点については,1997年の「実践プレゼンテーションテクニック-講演はショータイム!-」から2016年の「国際会議学会発表ウラ心得」にいたるまで,一貫して変わらないワタクシの基本ポリシーだ.
大きな学会大会はもちろん
観音台の静かな日々 — 再雇用稼業備忘録
昨年3月に農研機構を退職して,4月に再雇用(「専門員」)の身分となり,はや一年余りが過ぎた.退職前後のことどもについては,備忘メモ書きしておかないときっとそのうち忘れてしまうだろう.以下,思いつくままに:
収入が大幅に減る —— 退職前は月給計算,退職後は日給計算になるが,月額で言えばおよそ半額弱(4割〜5割)に減る.しかし,同時に,天引きされる控除額は約1/3になるので,実質的に毎月振り込まれ