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オンライン授業発信じたばた試行

いろいろ “初物づくし” で日々戸惑いとつまづきの連続だ.はい,エンドレスなどたばたとじたばたが先月からずーーーっと続いている.4月9日(木)に初回の「生物統計学」オンライン講義(試行回)があり,とにもかくにもネットの向こうの受講生たちと Zoom で “つながる” ことだけを念頭に置いたのだが,前記事にも書いたように,Zoom 会議室の URL をそもそもまちがうというスタート前の派手なミスのせいで,早くも暗雲がもくもくたちこめている.はたしてこのまま十数回もオンラインで授業を続けられるのだろうか.

1. オンライン講義は対面講義の代替か?

文字通り初期値ゼロの “経験値” は経験を積めば積むほどもちろん単調増加するだろう.ただし,リアル対面授業でやれたことを「100」とするなら,オンライン授業でできることはせいぜい「50」くらいではないかと想像する.要するに,オンライン授業をもって対面授業のパーフェクトな “復元” あるいは “代替” とみなすことはどう考えてもできないだろう.これまでとはまったくちがう別次元の「教える/教わる」世界に足を踏み込みつつあるという気がしてならない.

その一方で,これまでの対面授業ではできなかったけれどもオンライン授業ならば可能になる内容もきっとあるだろう.それらを盛り込むことができればオンライン授業の「50」をもっと増やすことは可能かもしれない(それが何かはまだ見えていない).とくに,ワタクシが担当する「生物統計学」は統計ソフトウェア R の “実習” が含まれているので,それをオンラインでどのように行なうかは今のところまだ手探り状態だ.

前回のオンライン講義試行日から一週間が過ぎ,昨日は二回目の試行日を迎えることになった.初回の冷や汗高座に比べればココロの平穏が戻ってきたので,備忘メモをまとめておこう.

2. Slack チャンネルの新規開設

実習を含む講義の場合,受講生との双方向インタラクションのすべを確保しておく必要がある.対面講義なら実習中に机間巡視してエラーやトラブルの個別対応ができたのだが,オンライン授業ではそれに代わる体制を用意しないといけない.今回は試しに Slack を利用してみた.Slack 利用も Zoom と同じくワタクシにとっては未体験ゾーンだが,そんなことは言ってられないので,さっそく新規チャンネルを開設した.

Slack のチャンネルには誰でも入れる「公開チャンネル」とクローズドな「シークレット・チャンネル」の二つのタイプがある.ワタクシはセキュリティーのことを考えて「シークレット・チャンネル」を開設して,ITC-LMS 経由で受講者に招待URLをアナウンスしたのだが,ひとりひとり手作業で承認しないといけないので,オンライン講義が始まってからも承認要請が届くたびに中断するはめになった.めんどうなことこの上なし.あとで聞いたら,そもそも Slack は承認制なのだから「公開チャンネル」でもよかったのではとのこと.確かにそうかも.後悔先に立たず.

3. 二回目のオンライン講義試行

前回からの一週間に受講者はさらに増えて40名を超えていた.とりあえずその全員を Slack チャンネルに招き入れて準備完了.二回目のオンライン講義は,初めて来た受講生のために前回の内容を反復したのち,R三点セット(R+R Commander+RStudio)のインストールと起動確認を進めてもらった.最後の残り時間は,来週からの本講義に向けて統計学概論のイントロについて噺をした.これまた試行として「Zoom 録画」をクラウドに保存するように設定したが,あとで内容を確認しないといけない.

総じて,先週の緊張しまくり初回に比べれば,ココロの余裕ができてきたようだ.ただし,ネットの向こうの受講生たちがリアルタイムでどんな受け取り方(聴き方)をしてくれているのかは今ひとつよくわからない(ビデオをオフにしている受講者が多いので向こう側が見えない).受講生側のマイクはデフォルトではオフになっているので,最初から最後まで沈黙が支配する.ときどき Zoom チャットや Slack に文字レスポンスが返ってくることだけがオーディエンスの存在の証だ.

あと,オンライン授業中の “時間配分” には十分に気をつけるようにした.東京大学の講義時間は「105分」と決まっている.しかし,隙間なく105分を埋めたのではセンセイは虫の息になるだろうし,受講生だって疲弊するに決まっている.そこで,ワタクシは初回から「105分=(25分講義+10分休憩)×3」という分割インターバル化をしている.これだと集中力もきっと途切れないだろうと思う.

オンライン授業は,たとえて言うなら,“無観客” のお座敷で録画カメラを前にひとり高座を務める噺家みたいなものだろう.ワタクシはもうしばらくは違和感を抱きつつ高座を務めることになるにちがいない.

4. Slack は “遠隔治療” にとても役に立つ

そんなこんなで,二回目のオンライン講義試行は(いちおう)つつがなく終了した.事前に Slack チャンネルを開設したのはあとから考えれば大正解だった.その日の夜になっても悩める受講生たちからRインストール相談が相次ぎ,そのつど “遠隔治療” を進めることができた.とくに,エラーメッセージの画像を送ってもらうことで,受講生の “患部” と “症状” を的確に確認することができたので,ワタクシからの処方がとてもラクだった.Slack は対面実習の代替ツールとして役に立ちそうだ.

5. いろいろ有用なサイトなど

とてもありがたいことに,東大ではオンライン講義のスムーズな進捗のためのさまざまなリソースを迅速に用意している.ワタクシは非常勤講師なので,先月は情報砂漠に追いやられたまま,いささかすねまくっていたのだが,今月に入ってからはさまざまな有益情報が大学全体・研究科・専攻などさまざまなレベルからふんだんに降り注ぐようになり,その恩恵を享受している.とりわけ下記のサイトには感謝感謝また感謝:オンライン授業・Web会議 ポータルサイト@ 東京大学

6. オンライン講義に向けて準備したものリスト

最後に,今回の Zoom オンライン講義の実施に向けて個人として用意したもののリストを下記にまとめる.ワタクシは非常勤講師なので,これらの物品はすべて私費購入あるいは私費契約したことを明記しておく:

ノートパソコン(MacBook Pro):macOS Catalina・Windows 10(Parallels Desktop)/Wi-Fi ルーター(2つ)/ウェブカム/リングライト/有料アプリ類.

受講生の OS 比率は macOS と Windows がほぼ半々なので,R実習環境としてはどちらも使えるようにしておく必要がある(Linux のことは考えていない).

なお,Zoom は東大が団体契約したバージョン(Zoom Pro)を使用している.今後の私費購入予定品は「iPad Pro」と「Apple Pencil」だが,全般的にいま品薄になっているみたいなので様子見中.あと,画面に弾幕を流す〈Comment Screen〉とか双方向プレゼンツール〈Mentimeter〉が便利だと伝え聞く.これらの新しいツールをどこまで導入するかはこれからの課題としておこう.

—— 来週からは高座の本番がスタートする.回が進むにつれてまた新たな問題が浮上するかもしれないが,それらはそのつど記録することにしよう.オンライン化の大波に揉まれている全国の教員のみなさん,じたばた生き延びましょう.

[2020年4月17日(金)]



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