机に向かうだけが音読じゃない!?英会話の瞬発力と持続力を上げるThink aloud法とは [連載 vol.1]
こんにちは、語学の裏設定のゆうです。連載vol.1の今日は、英会話力のスピードと体力を底上げする、"ひとりでできる"学習方法についてです。
これまで机に向かって英語学習をするのが嫌だったり、英会話の練習はひとりではできないと思われていたかもしれませんが、自分ひとりだけのプライベートスペースさえ確保できれば、場所を選ばずできる練習方法があるのです。
それが、思考過程を声に出すことです。
考える時は、基本黙っていると思いますがそれをあえて声に出すという、至極単純な学習法なのです。
たったそれだけ?と思われるかもしれませんが、シンプルな方法を甘く見てはいけません。
当ブログで時々出している、レオナルド・ダ・ヴィンチの言葉「シンプルさは究極の洗練である」の通り、どんな分野であれ奥義というものは美しいほど簡潔明瞭なのです。
重要なことなので、1段落分だけ話が脱線しますが、アインシュタインが生み出した物理学最高峰の方程式は、まさに究極の洗練で、かくもシンプルなのに、激しく本質を突いているのです。それは、膨大な知恵をシンプルさに秘めているからであります。
本記事のThink aloud法や、この連載で紹介する音読の極意もこれと似ています。音読自体は非常にシンプルであるがゆえ、その奥が深いのです。それを10記事、たったの10記事で解説していこうというやや無理のある試みですが、全力で執筆して参ります。
1.Think aloudで鍛える「瞬発力」と「持続力」
Think aloudを分解すると、Think (考える) + aloud (声に出す)、となり独り言というふうに捉えることができるかもしれませんが、本記事ではThink aloudと独り言は別物として扱っていきます。
「独り言」と言ってしまうと、言語化するのは、思考過程を含めてなのか、それとも、思考の産物だけをつぶやくのかが明確ではありません。
対して、
「Think aloud」と言えば、「think」という単語が入っているように、思考の過程を含めて言語化することなのだなと明確に分かります。
本稿でオススメしたいのは、思考の過程をリアルタイムで口ずさむ「Think aloud」のほうなのです。それは、他でもなく、思考の過程を声に出すことこそに価値があるからです。
単刀直入に申し上げると、次の2つの利点が得られます。
・英会話のとき、単語がうまく文として繋がって出てこない、という瞬発力の問題を改善できます。
・英会話のとき、前の文と次の文を繋げない、とか話の運び方が分からない、という持続力の問題を改善できます。
2.瞬発力が付く理由
瞬発力の高い英語フレーズとは、最大瞬間風速で出せる手札のことです。つまり、機を逃さずパーンと出せるフレーズのことであります。
英語表現は使えば使うほど習熟していきます。ゆえに、Think aloudの時に、何度も繰り返して使った表現ほど英会話の時に実践しやすくなるわけです。
日常的にThink aloud法を取り入れ、習熟した英語表現のストックを増やしていけば、英会話のテンポが上がることになります。
卓球のボールを無意識に打ち返せるようになるのと同じで、それらのフレーズは英会話で意識せずとも使えるようになっているでしょう。
意識しなくても使える表現を増やすために、ふだん無意識の思考回路を意識して声に出す。ここにThink aloudの要があるのです。
3.持続力がつく理由
英会話では文章を繋いでは繋ぎ、会話の流れを作り出す必要があります。言い換えると、複数の文章を上手に繋げないと会話が止まってしまい、気まずい空気が流れてしまうのです。
ゆえに、即座に複数の文章をつなぎ合わせる技術は、英会話の上達に欠かせません。
特に、声に出すことで、頭の中がどうなっているかを把握することができ、筋の通った話の路線を組み立てやすくなるのです。
ポイントは、「接続詞」を意識することです。
・There was an accident. (事故があった。)
・Someone called an ambulance. (誰かが救急車を呼んだ。)
という2つの文章があったとき、どうつなぎますか?
Becauseでもいいですよね。Thenでもいいですよね。しかしButでは変ですよね。このように話のつなぎ方を覚えることが、続く会話の1つの鍵です。
目に見えないものよりも、見えるもののほうが、より意識できます。耳に聞こえないものよりも、聞こえるもののほうが、より意識できます。
思考過程を声に出すことで、自分の耳に聞こえるようになり、話のつなぎ方に敏感になれるのです。
黙って考えてしまうと、頭の中では繋がっているけど、言葉の上では繋がっていないという、見過ごされてしまったであろう問題が浮き彫りになります。
ちなみに、
英会話の時に「何を言いたいか分からない」と言われる人がいるそうですが、大体パニクっていて自分で何を言っているか分かっていない状態にあります。人前に出るとあがってしまいがちな人は、英語になるともっとあがってしまうことでしょう。
だからこそひとりで落ち着いて、Think aloudで文と文をつなぐ練習をすることに価値があるのです。特にあがりやすい人、内向的な人は得られる成果が多いことでしょう。
もう1つ、「何が言いたいかわからない」と言われる人の特徴として、文を英語のロジックではなく、日本語のロジックで繋いでしまっていることが挙げられます。過去に英語式の文のつなぎ方について書いたので、こちらの記事が参考になると思います。
4.会話の実践経験値が貯まる
水を怖がる子どもたちを指導する時に「泳げるようになるための方法は泳ぐことだ」とよく言われるそうですが、英語も然りで、「話せるようになるための方法は話すことだ」となります。
Think aloud法の良い点は、ひとりの時に「気軽」にできる点です。つまり、とっつきやすいのです。オマケに、会話の経験値も上がっていくのでやらねば損だと言えるでしょう。
・スキマ時間を活用できる
英会話には会話相手が必要ですが、Think aloudは自分の頭の中で完結するので、自分一人の時にいつもで取り組むことができます。
勉強する時に通常場所を選びますが、Think aloud法は場所を選びません。
一人で部屋の中にいる時でも、散歩をしている時でも、人目さえ気にしなければ時間や場所にとらわれずいつでも実践可能な学習方法なのです。
明かすのは恥ずかしいですが、過去に私が実践していた方法が1つあります。電車の中で、マスクを付けて、うるさい車両だったら極小の声で、静かな車両だったら口パクだけで、Think aloudをしていました。
少し変人臭がするかもしれませんが、裏を返せば、英語学習にそれだけ貪欲だったのです。
Steave jobsも言うではありませんか。
「Stay hungry, stay foolish (機会を求めよ、躊躇するな)」と。
(訳は私の拙訳です)
Think aloud法は、あなたを英語に対して前のめりにしてくれます。どんどん実践しましょう。
・恥ずかしくない
間違いを恐れずどんどん話すことが大切だと分かっていても、間違いが怖いことには変わりないと思います。
しかし、Think aloud法は自分以外だれもいない部屋でできるので、恥ずかしさは感じないはずです。何回間違えても、何回修正しても、お構いなし。
結局恥ずかしさとは他者の目線ありきの前提で感じる感情なので、他人がいなければ恥ずかしくないのです。ひとりの時間を積極的に会話経験値に変えていきましょう。
5.Think aloud法のベストなタイミング
結論から言えば新しい単語や文法を学んだあとです。
勉強には大きく分ければ、Input (入れる)とOutput (出す)の2種類があります。そしてThink aloudはOutput (出す)の部類に入ります。
至極簡単な道理ですが、頭の中に入っていないものは出せません。財布の例に置き換えると、5000円しか入っていない財布からは10000円はでないのです。
Think aloudの学習成果は事前のインプット量に左右されます。
会話で使える単語量は、常に知っている単語量を下回ります。それゆえ、知っている単語量が少ない内のアウトプットは、少ない資金で貧乏操業するのと同じですから、行き着く先は困窮と枯渇です。
会話の時に撃ち出せる弾が少ないので、英会話の時に窮することになります。したがって、インプットを前提としないThink aloud法は、ほぼ意味がありません。
それに、Think aloudの1つの目的は、瞬発力の高いフレーズを手札のストックとして増やすことでした。新しい単語や文法を学ばなければ、使える手札数は増えません。
以上のことを踏まえれば、Think aloudは諸刃の剣であると言えます。インプットありきの前提で取り組む人にとっては、恩恵をもたらしますが、インプットを面倒くさがり、アウトプットばかりしていては、せっかく磨き抜いた武器で切腹するのと同じです。
ものは使いよう、武器も使いよう、学習方法も使いようなのです。
それでは次回は、音読による学習がみるみる楽しくなる、音読の科学について扱いますのでご期待ください。勉強=つまらない、というイメージを塗り替えていきたいと思います。
本連載は「語学力を高める、声に出す週間」に含まれます。まだVol0をご覧になっていない方は是非こちらも合わせてお読みください。
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