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🎁「好き」「いいな」「素敵だな」のお裾分け 【BOOK・とるにたらないものもの/江國香織】

とるたらないものもの
江國香織
集英社文庫

好きなもの、好きなこと、好きな人、好きな時間。

「好き」までいかなくとも、思わず「いいな」「素敵だな」って感じるものはありますか?

具体的にどれくらい挙げられるでしょうか?

そして、その理由を説明することはできますか?

私にとっても「好き」とか「いいな」「素敵だな」という気持ちは曖昧な存在でした。

江國香織さんの「とるにたらないものもの」この本を読むまでは、ずっとそういうものだと思っていました。
それでいいのだと思っていました。

「「好き」に理由なんてないのよ。好きだから好きなのさ。」なんて思っていたのです。

江國香織さんの「好き」「いいな」「素敵」は思わずふふふと笑ってしまうほどに、日々の小さな欠片のような、ほんの些細なところにあります。

輪ゴム。焼き鳥。トライアングル。駅。化粧落とし。下敷き。りぼん。大笑い。


そんな小さな物事に心を動かし、思いを馳せることのできる江國香織さんの人生はきっと豊かなものなのだと思うのです。


そして、誰にでも、目にすると微かに心が弾んでしまう、キュンとしてしまう、ウキウキしてしまう、そんなものがあると思います。

人に話すまでもないし、自分でも気づけないくらいのささやかな心の動き。

立ち止まって、向かい合って、耳を澄ませて、どうにかこうにか言葉にしてみる。

この本を読んで、理由をきちんと言葉にして伝えられるって凄く素敵だなって思いました。

さらに江國香織さんの言葉は、それまで全く気にかけなかったことがまるで魔法にかけられたかのように魅力的に見えてきてしまう力があります。

自分も思わず立ち止まってしまうのです。
輪ゴムも、
焼き鳥も、
下敷きも、
なんだか愛おしく思えてくるのです。

私もそういう文を紡げる人でありたいです。
私の文で私の「好き」「いいな」「素敵」をおすそわけしたいのです。
読んだ後で誰かの世界の見え方がほんの少しだけでも鮮やかなものに変わったら、どんな素敵なことでしょう。


“好きな色は何色ですか?
どうして沢山ある色の中でその色が好きなのですか?“

難しいけれど、言葉にできる人でありたいです。

できるだけ言葉を心に近づけてていきたいです。
ピッタリ重ねることはできなくても、なるべく近くに。


松浦弥太郎さんのエッセイ集の「さよならは小さい声で」も、松浦さんの心をそっと動かした「好き」や「いいな」や「素敵だな」が沢山詰まった本で、読んでいるこちらまでポカポカと温かい幸せに包まれるので合わせておすすめの一冊です。

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