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生命の火花。
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#エッセイ

『君の名は。』

高級イタリアンレストランにて、私は待っていた。

無限に続く喧騒の中で、ミラノ風ドリアが50皿を超えて提供される。赤と白のワインボトルは机上に乗り切らない数ほどあり、それに伴って学生のノリもタチが悪くなる。まれに注文されるミラノ風ドリア以外の料理をどの卓上に載せればいいのか店員は困惑し、ベタベタになったテーブルを拭くための紙ナフキンも散乱している。以前悪酔いしてミラノ風ドリアを他の客に投げつけ

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感じる

オカルトちっくなことを言うようですけれども、私は感じるんです。人の誕生日に。数字を聞いて、ビビッとくるときとそうでないときが明確にあるのです。

誕生日を一発で覚えられる人とは、大抵縁があります。それ以前に、誕生日を聞いてみたい欲が湧き上がる相手と、別に興味がないから聞かずに済ましてしまう相手に分かれるんですね。初対面にも関わらずそういう区分けが勝手に出来上がるのです。暫く関わったクラスメート

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鳥身

松浦理英子『犬身』を読んでから、一年。

性同一性障害ならぬ〝種同一性障害〟なのだ、私は人間じゃなくて犬だ!

というのが、趣を殴り捨てた『犬身』の要約だ。(個人的には、人間関係が面白いというか、ちくちく胸に刺さって痛かったので、あらすじだけでなく読んでみてほしい本です。)

忠実な果実のようにぬくぬく育って、はち切れんばかりに膨らんだ、決心がある。

朽ちる前に成就したいけれど、一体

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Ich lebe...

Ich lebe...

男だったら、AVを観る代わりに地球の歩き方【ドイツ】でシコっているに違いない。
ただふっと好きになってしまっただけだ、好きになる始まりはいつだってそのようなものだ、わかっている。
それなのに、もはや狂わしく、巌窟王が四半世紀ぶりに日光を浴びて立ち眩むくらいには、ドイツの魅力に支配されてしまったのだ。単語を聞くだけで身体中の神経が条件反射で興奮する。

久しぶりに再開したアプリのパスワー

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魂?

生きていくのなら
5% 女
25% 男
40% 鳥
30% 風
になりたい。

でなければ魂だけになって生きていきたい。
そうでなければ生きていたくない。

ーー魂になってどうするの?

どうもしない。
死にたいというのとは違う。
実態や価値の付随しない、でも存在はしていたいような。

ーー存在して何かを見てるだけ?

感じるの。肌ではない部分で。
それで生きてるなーって。

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普通の王道にはなれない。

側にいればいるほど、終わりを感じる。肌に張り付く。

ああ、この人の近くにいることはできない。いずれ自分とこの人は決して交わることのない、覚束ない過去だけの関係になる。いつ細い糸が切れてしまうかわからない。どうかあとひと季節保ってほしい。きっとこの人は私を忘れる。私は死ぬ瞬間までこの人に囚われているだろうというのに。
ただ絶望と呼べたらいいのに、その距離感こそが徹底的な日常で。

私は自

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魂とは

「魂」というとプラトン読めば?と言われがちだけど、自分に浮かんでくる「魂」はプラトンのそれとは違うと思う。

スイッチを入れると直に豆電球がつく、導線を必要としないほど惹きつけられる力みたいなものだと思っていて。(理科は苦手なド文系なので細かいことは知らんです)

現象があって判断して感情に訴えるとか、考える、という回路がない。ぶった切られたり弱かったりするのではなくて、そもそも「ない」のだと

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『宇宙を哲学する』

『宇宙を哲学する』

フランスの詩人マラルメは、今から100年ほど前の20世紀初頭に、白い紙の上にインクで記した自分の散文詩が、天空の星座を白黒逆転させた存在となることを欲し、それによって、芸術作品創造の作業が宇宙創世の秘密に連なることを願ったと伝えられています。マラルメの考えでは、天空に散りばめられた星々が神の創造の産物であるとすれば、人間はインクの墨を使って裏返しの世界の創造作業に参加することになると思われたのです

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暴動ではなく革命

あらゆる面で真逆な友人がいる。

とはnoteで繰り返し書いたけれど、どれだけ言っても書いても足らないほど、あまりに違うので、今回もまた語らずにはいられない。

どれほど彼女と私が違うかというと、例えば私が大量出血して彼女の血を輸血するとなったとして、血液型としては問題ないのだけど、あまりに異質な存在なものだから管が血を届けた瞬間に私の神経は破裂してしまうかもしれないくらいだ。内側から爆発する

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究極の哲学

究極の哲学

就活どうするの?という、大学生活後半に向かっていくこの時期、多発する質問がある。
同期はもうインターンをしていたり、自分で会社を立ち上げている者もいる。

でも、ここで全力で反発を覚えて、うまく言葉を返せなくなる。この、違和感。
そうじゃないんだ。なぜそうやって大学入学後は就活、とキレイにパズルのピースが埋まっていくのだろう。土台を疑ってみなければ、先に進むという選択肢が生じないように、私に

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魂を探して

WHOにおいて、健康の定義が新たに提唱されている。

人の健康には、身体面・メンタル面、そしてその他にスピリチュアルな面での健康が関わっている、と。

スピリチュアル。「精神的、霊的、魂の」健康。

自己分析するとこうなる。

まず、身体面。
これは自分のセクシュアリティから考えてXジェンダーだと言うのが合うようであるし、男女二元論では大変生きにくく、不都合があるのは事実だ。
以前交通事故によって

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『春の嵐』

自分がこの世界から去るときには、ヘッセの『春の嵐』を遺書として差し出したい、と友人に伝えた。もっと自分の言葉で語れたら、と思うことは重々あるけれど、そうするには人生は足りず、言葉はすり潰されてものにならない気がする。

以下、高橋健二訳。新潮社。

外的な運命は、避けがたく神意のままに、私の上をすべての人の上と同様に通り過ぎて行ったとしても、私の内的な運命は私自身の作ったものであり、その甘さに

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