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建築★小説

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建築がらみの短編小説集 建築設計の仕事がわかる? #建築設計事務所 #建設業 #一級建築士 #建築士 #設計士 #技術職 #お仕事小説 #企業小説
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#短編小説

『Keiko's Kitchen』 #短編小説

『Keiko's Kitchen』 #短編小説

 今日は、高校の時の同級生、景子(けいこ)が地元に帰って来る日だ。何年ぶりかの再会になるので、萌(もえ)はとても楽しみにしている。

 東京で働いていた景子は、40歳で結婚し、軽井沢に豪邸を建てたという。インテリア雑誌にも載ったお洒落な家らしい。今日はその写真も持ってきてくれる。
  萌は10年前に結婚し、子供が3人いる。まだ下の子は保育園児だ。子供たちを義母に預け、今日は、景子とのランチ会にいく

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水平線ドライブ #短編小説

水平線ドライブ #短編小説

 右へ左へハンドルをきり、坂道を進む。視界が開け、水平線が広がった。
「気持ちいいね!」
「うん。」
父と2人でドライブなんて、何年ぶりだろう。もしかしたらはじめてかもしれない。ひさしぶりに実家に帰ってきてよかったと美紀は思う。

10年前、
「おまえ、これからどうするつもりなんだ?」
大学卒業間近になっても、就職の決まらない美紀のところに、父から毎日電話がかかってきた。
「····· ちゃんと

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中央線の朝  #短編小説

中央線の朝  #短編小説

朝7時

駅を出てすぐのコーヒーショップに入る。
年配の男性が新聞を読みながら朝食をとっている。
ミカもパンとコーヒーを注文し、窓側のカウンター席から、朝日が差し込む白いビルを眺める。

地方の会社から東京へ出向してきて1か月。地元では、仕事前にカフェで朝食なんてありえない。とても新鮮な時間だ。会社の時間を気にしながら、20分くらい本を読む。

満員電車に耐えられず、少しでも空いているほうがいいと

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森の中の丸太舟

森の中の丸太舟

 ロープが張ってある石の門を通り抜け、林の中を下って行く。
 家が現れ、女性が外で作業をしていた。
「こんにちは、竹田さん。
 急に言って、すみません。」
「浜口さん、こんにちは。
 全然かまわないですよ。」
ジーンズに赤いTシャツ、グレーのショートカットの女性が、にこにこしながらこちらをじーと見つめる。
「こちらがアイ設計所長の岩城さん。」
「はじめまして。」
「私はアイ設計の南と言います。
 

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