記事一覧
【ブルアカ】愛への賭けをめぐって【隠されし遺産を求めて】
ブルアカで未だに腑に落ちていなかったことがありました。それは【先生が躊躇なく生徒たちを「信じる」と言い切る】ことです。今までこの行為の背後にある理屈があまり明瞭に見えず、なんとなく超法規的に「先生だから」となってしまっていました。しかし、今回のイベント『隠されし遺産を求めて』にて、ハナコが主題になったことで、その理屈がようやく見えた気がします。この【先生が躊躇なく生徒たちを「信じる」と言い切る】行
もっとみる『灰羽連盟』感想:「壁」による呪縛と「鳥」による祝福について
牧歌的な暮らしの雰囲気がありつつも、どこか穏やかに終わりに近づいているかのような終末的な雰囲気が漂う世界観。灰羽たちは廃棄された寄宿舎や工場に居を構え、街は「壁」に囲まれている。ヒトも含めてこの「壁」の外に出ることはできない。そんな閉じた世界にラッカは生まれ落ちる。右も左もわからないラッカはとても親切な――だが、煙草は手放せない――レキやオールドホームの面々に迎え入れられる。そして、ラッカはこの世
もっとみる【ぼっち・ざ・ろっく!】私の尊厳を探して
後藤ひとり(以下、ぼっちちゃん)は学校というコミュニティで友達を作れず、一人で過ごしてきた子だった。アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』は、そんなぼっちちゃんが「結束バンド」に参加することになり、そこで彼女に”朝が降る”までの過程を描いた作品になる。
この”朝が降る”というワードはアルバム『結束バンド』の最終曲に置かれた――ぼっちちゃんがカバーする――『転がる岩、君に朝が降る』にちなんでいる。またアニ
【明るい部屋】カメラ・ルシダの立ち位置に――デュシャンの《遺作》になぞらえて
『明るい部屋』という題名、バルトの同名作品の表紙を連想させるキービジュアルの色味、最終章題名がフランス語であること。これらのことから、このコミュはロラン・バルトの著作『明るい部屋―写真についての覚書』を下敷き、あるいはオマージュ等をしているコミュであることが予想される。しかし、このコミュの中で写真は一切現れてこない。代わりに最終章で「La chambre libre」と呼ばれる、時空を超えて”在る
もっとみる【麭・麭・給・給】幽谷 霧子【G.R.A.D.考察/感想】
ソシャゲには2つの契機があると思っている。1つ目は始めるきっかけで、2つ目は継続的に続ける動機をなるきっかけ。シャニマスでは、なんらかのシナリオが2つ目のきっかけになった方が多いのではないかと思う。私にとってはそのシナリオは霧子のG.R.A.D.だった。
G.R.A.D.はgradation(グラデーション)を意識した略語になっており、続くLandingPoint(着地地点)のシナリオへと至る途
「樋口円香」を見る――人に添って
円香についての人物考察記事になります。円香の人物像の考察は、コミュ(文字や演出)に添って行われることが通例ですが、ここでは現実の人間に対しての見方を補助線にして円香を見ていきます。そのため、厳密には円香の考察というより、筆者の中にいる「ひとりひとり」の円香についての考察になります。その点ご了承ください。
また最後に「アイマスMOIW2023」の【ラ♥︎ブ♥︎リ♥︎】について思うところを述べます。
【線たちの12月】見えるもの、見えないもの、聞こえるもの、聞こえないもの
ほんとじゃん?ほんとに見えたら ――――浅倉 透
初見の印象は、線は人と人の間を結ぶもの、円は人と人を含むものであり、私たちはペンを持つのは、自然とそれを求めてしまうから、という風に感じた。
『線たちの12月』は多くの線たち――人と人の間にあるもの――を描くことにより、多様な、人と人の間で起こりうること、起こっていることに言及した作品だと思う。そこには透ちゃんの言う「ほんとじゃん?ほんとに見え
【ロング・ログ・エンドロール】うたかたから上る
分かれ道にて祭囃子に導かれ、Pとアイドルたちは田舎の夏祭りに到着する。狐面を携えた参加者が異様に多く、また「とことわに」という聞きなれない挨拶が交わされる――のちに今はもう地元の人でさえほとんど知らない挨拶だと分かるのだが……。Pは異様さに気づくことなく、お祭りの出し物を食べる。この状況でのそれは、どこか黄泉竈食(ヨモツヘグイ)を連想させるものであった。やがてPとアイドルたちはそれぞれにおみくじに
もっとみる【プレゼン・フォー・ユー!】冬優子はフライトに決して間に合わない
シャニマスの越境コミュと言えば、豊潤なメタファーを用いて、文学的に心的なものを表現する類の作品――代表としては『明るい部屋』――が思い浮かぶ。その中でも、最初に実装された、その類の作品は『きよしこの夜 プレゼン・フォー・ユー!』だろう。
迷える者である天井社長。彼の苦い過去と、アイドルたちのマラソンリレーの現在が混線し、過去にプレゼントを拒絶された天井社長の元に、現在のサンタとしてアイドルたちが
ブルアカの大人と子ども【ネバーランドでつかまえて】
ブルーアーカイブの”大人”という言葉は、一般的に使われる意味での大人とはどこか異なった強い重みを持っている。イベント「ネバーランドでつかまえて」のシナリオでは、その違いが端的に表現されていて、とても印象的だった。
簡単にあらすじを。「梅花園」の教官を務めるシュン。自由気ままな園児たちの世話に若干憂鬱気味であった彼女は薬の作用で子ども姿に戻ってしまう。シュンは子ども姿の自分を「シュエリン」と名乗り